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第七章 イコク ノ ハライシ
第一話 御門の日常
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五月下旬。平日──。
その日も御門は正午を知らせる時計のアラームで目を覚まし気怠げに身体を起こす。
程良く鍛えられた身体に纏うのはボクサーパンツのみ。部屋のカーテンを開き陽の光を取り込んだ御門は、ベッド脇に置かれた小さな冷蔵庫からペットボトルの水を取り出し乾いた喉を潤した。
「う~ん。今日も視界はコンクリートジャングルだぜ。ま、俺の寝床は本のジャングルだけどさ」
寝室は整頓とは無縁の状態……。床には所狭しと大量の書籍が乱雑に積み重ねられていた。
新書、専門書、雑誌、ラノベと書籍の種類に統一感は無くまさに手当り次第といった様子だ。
「随分貯まっちまったな。読むのは楽しいんだけど場所を取るのがなぁ……。電子書籍にすっかなぁ。でも、紙の方が手に馴染むんだよなぁ……」
物祓い専門の祓い師、御門陽介──。
金髪で人当たりの軽い『不真面目そうな』印象に反し御門の趣味は読書である。
御門は十四歳の時点で天涯孤独となった。早くに両親を亡くした御門は生きることに貪欲だった。
父は生前、『知識は力である』と良く口にしていた。それが真実と理解している故に御門には本を読み知識を漁る癖が付いた。
知識を実践し糧にする為に様々なことにも手を出した。当人は口にするのを避けているが犯罪と言えることも経験している。僅か十四歳の寄る辺無き身では正論だけでは生きて行けなかった。
ホスト業界に落ち着いたのも生きる上で人を学ぶ意味合いが大きい。
当然、【怪異祓い】の力も生きる手段の一つ……。御門はあらゆる力を用い今の生活を作りあげた苦労人であることは限られた人間しか知らない。
「ふぁ~あ……。先ず眠気覚ましにシャワーを浴びて……」
と、その時……頭を掻きながら部屋を出ようとした御門の耳にベッドの枕元に置かれていた携帯端末のメロディが届く。確認してみると発信元はホスト仕事をしている店からだった。
「ハイハイ~。御門ッスけど……どしたんスか、店長?」
『あ、御門君? 悪いね、休みの日に……。実は頼みがあるんだけど今日ヘルプ入れるかな?』
「まぁ、今日は大丈夫ッスけど……」
『実は羽鳥君が半グレに絡まれて殴られたらしくてね……。病院まで行って確認したら怪我自体は軽くて済んだみたいでね。でも殴られたのが顔だから腫れが引くまで出られないんだ』
「成る程……それは大変スね……。ヘルプ、今日だけで大丈夫なんスか?」
『ああ。それは何とか皆のローテーション調整でね。でも、今日は誰も都合が付かなくて困ってたんだよ……いやぁ、助かった』
「全然OKッスよ~。店長には世話になってるし」
『いつも悪いね。報酬は色付けるから……じゃあ、また後で』
「ハイハイ~。それじゃ」
通話を切った御門は携帯電話を無造作にベッドへ放り投げた。
「……。この辺も物騒になってきたなぁ。こりゃあ、ちょっと騒動が起こるかもな」
御門の雇われているホストクラブは東京界隈では比較的良心的な店と言える。昔気質とはいえヤクザが仕切る以上それが真っ当な商売かは別として、少なくとも堅気の人間から暴利を取るようなやり方はしていなかった。
御門も店長には色々と世話になっており最低限の義理立てはしている。
一方の店長も御門を良く気遣ってくれた。歳は二十程も離れているものの偉ぶった態度を取らず何かと世話を焼いてくれる。何故この界隈に居るのか不思議な程の好人物だった。
そして店長は他にもある理由で御門を良く頼る。それが祓い師としての才能──。
夜の街に来る人間は少なからず闇を抱えている者が多い。人の情念が渦巻くホストクラブという場所は御門にとって本業である『祓い仕事』を行える都合の良い場所でもあった。
「さ~て……とにかくシャワーだ。そんでメシ食ったら、夜のお仕事の前にもう一つの副業の方を確認しないとね」
一時間後……御門はジーンズに白シャツというラフな衣装で自宅のマンションを後にした。
その日も御門は正午を知らせる時計のアラームで目を覚まし気怠げに身体を起こす。
程良く鍛えられた身体に纏うのはボクサーパンツのみ。部屋のカーテンを開き陽の光を取り込んだ御門は、ベッド脇に置かれた小さな冷蔵庫からペットボトルの水を取り出し乾いた喉を潤した。
「う~ん。今日も視界はコンクリートジャングルだぜ。ま、俺の寝床は本のジャングルだけどさ」
寝室は整頓とは無縁の状態……。床には所狭しと大量の書籍が乱雑に積み重ねられていた。
新書、専門書、雑誌、ラノベと書籍の種類に統一感は無くまさに手当り次第といった様子だ。
「随分貯まっちまったな。読むのは楽しいんだけど場所を取るのがなぁ……。電子書籍にすっかなぁ。でも、紙の方が手に馴染むんだよなぁ……」
物祓い専門の祓い師、御門陽介──。
金髪で人当たりの軽い『不真面目そうな』印象に反し御門の趣味は読書である。
御門は十四歳の時点で天涯孤独となった。早くに両親を亡くした御門は生きることに貪欲だった。
父は生前、『知識は力である』と良く口にしていた。それが真実と理解している故に御門には本を読み知識を漁る癖が付いた。
知識を実践し糧にする為に様々なことにも手を出した。当人は口にするのを避けているが犯罪と言えることも経験している。僅か十四歳の寄る辺無き身では正論だけでは生きて行けなかった。
ホスト業界に落ち着いたのも生きる上で人を学ぶ意味合いが大きい。
当然、【怪異祓い】の力も生きる手段の一つ……。御門はあらゆる力を用い今の生活を作りあげた苦労人であることは限られた人間しか知らない。
「ふぁ~あ……。先ず眠気覚ましにシャワーを浴びて……」
と、その時……頭を掻きながら部屋を出ようとした御門の耳にベッドの枕元に置かれていた携帯端末のメロディが届く。確認してみると発信元はホスト仕事をしている店からだった。
「ハイハイ~。御門ッスけど……どしたんスか、店長?」
『あ、御門君? 悪いね、休みの日に……。実は頼みがあるんだけど今日ヘルプ入れるかな?』
「まぁ、今日は大丈夫ッスけど……」
『実は羽鳥君が半グレに絡まれて殴られたらしくてね……。病院まで行って確認したら怪我自体は軽くて済んだみたいでね。でも殴られたのが顔だから腫れが引くまで出られないんだ』
「成る程……それは大変スね……。ヘルプ、今日だけで大丈夫なんスか?」
『ああ。それは何とか皆のローテーション調整でね。でも、今日は誰も都合が付かなくて困ってたんだよ……いやぁ、助かった』
「全然OKッスよ~。店長には世話になってるし」
『いつも悪いね。報酬は色付けるから……じゃあ、また後で』
「ハイハイ~。それじゃ」
通話を切った御門は携帯電話を無造作にベッドへ放り投げた。
「……。この辺も物騒になってきたなぁ。こりゃあ、ちょっと騒動が起こるかもな」
御門の雇われているホストクラブは東京界隈では比較的良心的な店と言える。昔気質とはいえヤクザが仕切る以上それが真っ当な商売かは別として、少なくとも堅気の人間から暴利を取るようなやり方はしていなかった。
御門も店長には色々と世話になっており最低限の義理立てはしている。
一方の店長も御門を良く気遣ってくれた。歳は二十程も離れているものの偉ぶった態度を取らず何かと世話を焼いてくれる。何故この界隈に居るのか不思議な程の好人物だった。
そして店長は他にもある理由で御門を良く頼る。それが祓い師としての才能──。
夜の街に来る人間は少なからず闇を抱えている者が多い。人の情念が渦巻くホストクラブという場所は御門にとって本業である『祓い仕事』を行える都合の良い場所でもあった。
「さ~て……とにかくシャワーだ。そんでメシ食ったら、夜のお仕事の前にもう一つの副業の方を確認しないとね」
一時間後……御門はジーンズに白シャツというラフな衣装で自宅のマンションを後にした。
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