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第七章 イコク ノ ハライシ
第五話 君嶋との取引
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そうは言われても君嶋浩司には心当たりが無い。一介のロック好きの大学生が犯罪に関わることはそうそうないのが普通である。
だが、御門は念を押す様に問い掛ける。
「例えばそのギターだ。それってお前のか?」
『あ、ああ……。俺ので間違いない』
「勝っちゃんからの情報じゃ両親は元気なんだろ? じゃあ疑問はあるぜ……何で大事な息子のギターがウチみたいなリサイクルショップに売られてきたんだ?」
『……。そ、そういえば確かに……』
意識不明の息子が大切にしていたギターならば両親が手放す筈はない。つまり、ギターは君嶋が倒れた際に誰かが手に入れ売り飛ばした可能性が高い。
しかし、ギターそのものは奪って売ったとしても精々四万円足らずの代物……足が付く危険を犯して利益に変えるには少々対価として釣り合わない。ならば犯人の狙いは強盗以外ということになる。
「つぅ訳で、ちゃんと思い出せ。お前、何に巻き込まれた?」
『そ、そうは言っても俺は犯罪なんて……』
「原因はお前とは限らないぜ。最近、お前の周りに急に行動が変わった奴とか居なかったか? 挙動不審だったりやたら何か儲け話したり……」
『う~ん……。あ、そう言えば……』
「何だ?」
『バンド仲間の白井って奴がやたら羽振りが良かったかな……。ただ、ソイツ女癖悪くて、金遣いも派手でさ。その癖ライブチケットとか売ろうとしなくて仲間内でも問題になり始まってて……』
「ソイツは昔からのダチか?」
『いや……。一年くらい前にライブハウスで知り合った。俺とは違う大学に通ってるとか聞いた』
「ふ~ん……」
椅子に背中を預けた御門は三度情報屋の宇喜多へ連絡を取った。
「ソイツのフルネームは?」
「白井……確か白井幸久だったかな」
宇喜多から送られてきた情報を確認した御門は、至極面倒そうに溜息を吐いた。
「原因はわかったぜ。知りたいか?」
『それは勿論……』
エレキギターへと手を伸ばす御門。ちょっとだけ弾く素振りを見せるも指が痛かったらしく苦笑いで机の上に戻した。
「……勝っちゃんの情報じゃ違法薬物をバンドやってる奴の荷物に隠して売買に利用している奴が居るらしいんだわ。その男の名前が白井幸久──。あ、因みに白井って奴は大学生じゃないぜ。三十路のオッサンだ」
『はぁ!? マ、マジで!?』
「しかも半グレと繋がりがあるヤバイ奴だ。多分、お前は白井の薬物取引を見ちまったんじゃないか?」
『………。お、思い出した……』
バイト帰りのある日、君嶋は白井を見掛け声を掛けようとした。その時、白井と共に居た半グレ連中に違和感を覚え隠れて会話を聞くことにした。
それが薬物売買の打ち合わせで、白井はライブハウスの楽器に薬物を一時的に隠していることが分かった。
『でも、俺は誰にも見られなかった筈だけど……』
「白井がライブハウスに薬物を隠してたならバンド仲間の楽器にも隠してたのかもな。それに誰かが気付いたのか騒ぎにならなかったか?」
『確かに……そんなことがあった』
「んで、お前が白井に問い質したんじゃないのか?」
『そうだ……! 畜生、あの野郎! 逆に俺に因縁付けてきて……その帰り道に俺は車に轢かれた……!』
君嶋の霊体は赤く変化し陽炎のようにユラリと揺れる。
「お~い、落ち着け~。どのみち相手は半グレだぜ? 下手すりゃお前の家族にまで被害が飛び火する」
『クソッ! だからってこのままじゃ……』
「俺が全部解決してやる……つったら信じるか?」
『はぁ?』
椅子の背もたれに身体を預け脚を組んだ御門は不敵な笑みを浮かべた。
「お前、運が良いぜ? 俺のトコに来たことでちゃんと道筋ができてる。薬物事件も白井も意識不明の現状もキレイに片付けてやるよ。但し、対価は貰うけどな?」
『……。アンタ、何者なんだ?』
「俺は御門陽介。祓い師だ」
『祓い師……?』
「簡単に言やぁ霊能者ってヤツだよ。ま、その辺りは今は置いといて……俺は裏社会にもちっとは顔が利く。だから後腐れなく片付けてやるぞ?」
しばらく迷った君嶋は恐る恐る口を開く。
『……。人殺しとかならゴメンだぜ』
「安心しろ。俺もゴメンだ」
『……対価ってのは何だ?』
「お前、依頼料代わりとしてここでバイトしろ。週二で良いからさ?」
『それが対価? 軽すぎないか?』
御門は人差し指を立て“チッチッチ”と舌を鳴らす。
「対価ってのはな? 程良い負担で払えるから成り立つんだよ。対価に振り回されるような取り引き持ち掛けるのは御法度だ。で、この店は人手が足りない。だから半年くらい手伝え。ちゃんと給料も出す」
『……。それは構わないけど、アンタ本当に頼りになるのか? 何かチャラいんだけど……』
「お~。ハッキリ言うじゃねぇか。だけと、人は見掛けによらないって言うだろ? ま、安心しろ。失敗してもお前には被害が出ないようにする。問題発生した時は対価も無しで良いし」
『………』
「どのみちこの後にお前が視える奴と会えるとは限らないぜ? 長く身体から離れてるのもオススメはしないしな」
確かに御門の言う通り今の君嶋の姿が見える者は居なかった。ならば選択肢は決まっている。
『……分かった。頼む』
「了解だ。取引成立な」
だが、御門は念を押す様に問い掛ける。
「例えばそのギターだ。それってお前のか?」
『あ、ああ……。俺ので間違いない』
「勝っちゃんからの情報じゃ両親は元気なんだろ? じゃあ疑問はあるぜ……何で大事な息子のギターがウチみたいなリサイクルショップに売られてきたんだ?」
『……。そ、そういえば確かに……』
意識不明の息子が大切にしていたギターならば両親が手放す筈はない。つまり、ギターは君嶋が倒れた際に誰かが手に入れ売り飛ばした可能性が高い。
しかし、ギターそのものは奪って売ったとしても精々四万円足らずの代物……足が付く危険を犯して利益に変えるには少々対価として釣り合わない。ならば犯人の狙いは強盗以外ということになる。
「つぅ訳で、ちゃんと思い出せ。お前、何に巻き込まれた?」
『そ、そうは言っても俺は犯罪なんて……』
「原因はお前とは限らないぜ。最近、お前の周りに急に行動が変わった奴とか居なかったか? 挙動不審だったりやたら何か儲け話したり……」
『う~ん……。あ、そう言えば……』
「何だ?」
『バンド仲間の白井って奴がやたら羽振りが良かったかな……。ただ、ソイツ女癖悪くて、金遣いも派手でさ。その癖ライブチケットとか売ろうとしなくて仲間内でも問題になり始まってて……』
「ソイツは昔からのダチか?」
『いや……。一年くらい前にライブハウスで知り合った。俺とは違う大学に通ってるとか聞いた』
「ふ~ん……」
椅子に背中を預けた御門は三度情報屋の宇喜多へ連絡を取った。
「ソイツのフルネームは?」
「白井……確か白井幸久だったかな」
宇喜多から送られてきた情報を確認した御門は、至極面倒そうに溜息を吐いた。
「原因はわかったぜ。知りたいか?」
『それは勿論……』
エレキギターへと手を伸ばす御門。ちょっとだけ弾く素振りを見せるも指が痛かったらしく苦笑いで机の上に戻した。
「……勝っちゃんの情報じゃ違法薬物をバンドやってる奴の荷物に隠して売買に利用している奴が居るらしいんだわ。その男の名前が白井幸久──。あ、因みに白井って奴は大学生じゃないぜ。三十路のオッサンだ」
『はぁ!? マ、マジで!?』
「しかも半グレと繋がりがあるヤバイ奴だ。多分、お前は白井の薬物取引を見ちまったんじゃないか?」
『………。お、思い出した……』
バイト帰りのある日、君嶋は白井を見掛け声を掛けようとした。その時、白井と共に居た半グレ連中に違和感を覚え隠れて会話を聞くことにした。
それが薬物売買の打ち合わせで、白井はライブハウスの楽器に薬物を一時的に隠していることが分かった。
『でも、俺は誰にも見られなかった筈だけど……』
「白井がライブハウスに薬物を隠してたならバンド仲間の楽器にも隠してたのかもな。それに誰かが気付いたのか騒ぎにならなかったか?」
『確かに……そんなことがあった』
「んで、お前が白井に問い質したんじゃないのか?」
『そうだ……! 畜生、あの野郎! 逆に俺に因縁付けてきて……その帰り道に俺は車に轢かれた……!』
君嶋の霊体は赤く変化し陽炎のようにユラリと揺れる。
「お~い、落ち着け~。どのみち相手は半グレだぜ? 下手すりゃお前の家族にまで被害が飛び火する」
『クソッ! だからってこのままじゃ……』
「俺が全部解決してやる……つったら信じるか?」
『はぁ?』
椅子の背もたれに身体を預け脚を組んだ御門は不敵な笑みを浮かべた。
「お前、運が良いぜ? 俺のトコに来たことでちゃんと道筋ができてる。薬物事件も白井も意識不明の現状もキレイに片付けてやるよ。但し、対価は貰うけどな?」
『……。アンタ、何者なんだ?』
「俺は御門陽介。祓い師だ」
『祓い師……?』
「簡単に言やぁ霊能者ってヤツだよ。ま、その辺りは今は置いといて……俺は裏社会にもちっとは顔が利く。だから後腐れなく片付けてやるぞ?」
しばらく迷った君嶋は恐る恐る口を開く。
『……。人殺しとかならゴメンだぜ』
「安心しろ。俺もゴメンだ」
『……対価ってのは何だ?』
「お前、依頼料代わりとしてここでバイトしろ。週二で良いからさ?」
『それが対価? 軽すぎないか?』
御門は人差し指を立て“チッチッチ”と舌を鳴らす。
「対価ってのはな? 程良い負担で払えるから成り立つんだよ。対価に振り回されるような取り引き持ち掛けるのは御法度だ。で、この店は人手が足りない。だから半年くらい手伝え。ちゃんと給料も出す」
『……。それは構わないけど、アンタ本当に頼りになるのか? 何かチャラいんだけど……』
「お~。ハッキリ言うじゃねぇか。だけと、人は見掛けによらないって言うだろ? ま、安心しろ。失敗してもお前には被害が出ないようにする。問題発生した時は対価も無しで良いし」
『………』
「どのみちこの後にお前が視える奴と会えるとは限らないぜ? 長く身体から離れてるのもオススメはしないしな」
確かに御門の言う通り今の君嶋の姿が見える者は居なかった。ならば選択肢は決まっている。
『……分かった。頼む』
「了解だ。取引成立な」
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