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14:少しだけわだかまりが溶けまして
しおりを挟む「おはよー」
「今日は実技がありますわね」
「宿題やった?」
ざわざわ、人が一人、また一人と教室に入ってくる。その度にわたしを見て気まずそうに慌てて視線を逸らす。
何とも居心地の悪い……。
「よく来れたものですわね」
「あれだけしたくせに」
「シャルさま可哀想ですわ、ねえ?」
「いや、私は……」
ひそひそしているつもり、なんだろう。睨み付けながら話しているのは元々わたしの取り巻き達だ。少し前からシャーリィに陥落していたとはいえ、その愛し子が実は男とわかった途端にべたべたしだしたりなんかして女子ってこわい…。
困った顔をしているシャルトリューズを見て、小さく溜息を洩らす。自分がしたことだ。開き直ったり怒ったりするなんてお門違いよね。大人しく彼女たちの言葉を聞き入れよう。
――ざわっ
教室がざわめく。入ってきたのは、ルシアンだ。
「……」
「………」
ルシアンと目が合って、そのわたし達の様子を教室のみんなが見守る。
静かに、ルシアンがわたしの目の前へと歩いてきて、頭を深く下げる。びっくりして一瞬固まってしまったけれど、慌てて肩を掴めば逆に手首を掴まれてしまった。
視界の端でシャルトリューズが立ち上がったのが見えて、困ったようにルシアンを見れば
「ちょ、ルシアン様!?頭を上げてください!」
「いや、これは僕の誠意だ。君も彼女…いや、彼に誠意を見せたように、僕もきちんと君に謝らなければと思っていたんだ」
真っ直ぐで、優しい声にまた、驚いてしまう。こんなシャーリィに向けていたような優しい声は、いつぶりに聞いたんだろうか。わたしが、覚えている限りではルシアンの冷たくなってしまった態度しか思い出せないから。
「ルシアン様が誤られることはありませんわ。わたくしは、みなさんにも、シャルトリューズ殿下にもお叱りを受けて当然の立場ですもの。死刑でもおかしくない立場。生きているだけで、喜ばしいのですよ」
「だからと言って婚約者に剣を向けるのは紳士的ではない。怖い思いをさせて――」
「いいえ、紳士的でしたわ。愛する女性のために守ろうとするお姿は、とても」
確かに婚約者に剣を向けるなんてことは良くない。でも、それ以上にわたしがしてしまったことは悪いことだもの。シャルトリューズが心の広い人だったから良かった。よくある悪役令嬢モノみたいにヒロインの性格が少しだけねじ曲がっていたりなんかしたら……。
しゃがみ込んで、ルシアンと目を合わせる。そういえば昔は怪我して泣いているルシアンとよくこうして視線を合わせたものだ。
「…ありがとう。カシス嬢。君の寛大な心に感謝を」
「いいえ、こちらこそ、ですわ。ルシアン様」
……どうしてルシアンが一番に謝りに来たのかはわからないけど……どうやら仲直りができたようだ。瞳を細めて、子供のように笑う姿が懐かしい。
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