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高いところから見上げた時に言う台詞

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 ベレイとお昼寝をした次の日、重要な事に気付いてしまった。
 花畑で昼寝している時、ポムはどうやって木の上に乗ったんだ?と。

「ポム、もしかして飛べるの?」
「キュエー!」

 わたしの質問に元気よくばさばさと翼を羽ばたかせるポム。肯定と捉えられるだろう。怪我はもう治っているようだった。魔物と言うのは生命力が高いのかもしれない。

「ポム……お願いがあるんだけど…」

 ベレイに気付かれないようにポムと一緒に屋敷を抜け出す。ちょうどホールに居なかったので抜け出す事には成功したけど、見付かるのは時間の問題である。それならばさっさとやりたいことを叶えてしまおう。

「キュエ―……」
「一回でいいの!ね、おねがい!」

 ポムは嫌そうにしていたけど、わたしは引かない。縋ってでも空を飛んでお昼寝をしたいのだ、わたしは。
 ぎゅーっと抱き着いて嫌々と首を横に振れば仕方ないと思ってくれたのか、背を低くしてくれた。

「キュエ」

 乗れ、と言っているようだ。
 自分でもわかる。今のわたしはきっと瞳がきらきら輝いていることだろう。

「ポムありがとう!」

 そう言って、ポムの背中に乗り込んだ。




「ふわああああぁ~~!!」

 どれくらい高く飛んでいるんだろう。
 屋敷が、砦がずっと小さく見える。人なんて姿も見えない。

「こ、こういうときは……あれだよね」

 どうせ聞いているのはポムだけだ。大声出して叫んだって、恥ずかしさなんてない。

「ふははは!見ろ!人がごみのようだぁー!!」
「キュエ―!」

 ポムも空高く飛んでテンションが高くなっているんだろう、わたしの叫びに合わせて叫ぶ。
 某大佐、名言をありがとう!楽しいよ!ここまで来たら目がー!までやりたいところだけどそれは帰りに取っておこう。

「いかんいかん。興奮してお昼寝どころじゃないな…楽しいからまあいっか」

 安定させてはくれてるけど、寝返りしたら落ちてしまいそうなのでお昼寝の仕方を考案してからにしよう、と言い訳も付け足しておく。

「ん…?なんか向こう暗いな」

 青空が広がっているのに、一部分だけ不自然に暗雲がとどまっている。
 そのあたりに差し掛かった瞬間にポムがぴりついたのを感じた。一気に加速してバランスが不安定になる。

「キュエエエエエ!!!」
「わ、ぽ、ポム!?――――あ」

 引きこもりの腕力で激しく揺れるポムの体と風の勢いに負けて、掴んでいた手が離れてしまう。
 ――――気付いたときには、わたしは暗雲の下に広がる森へと落ちていた。
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