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転生魔王の過去編1
しおりを挟む「おじい様は、歴代の魔王の中でも知識豊かで聡明で…賢王と呼ばれていたんだ――」
自称魔王の高いような低いような声が逆に心地いい。
…あれ。眠気が強くなってきて、視界が狭くなっていく。
自称魔王の声が遠くなって――――
――気付いた時には、まったく別の空間に居た。
(あれ?)
あんなに眠かったはずなのに妙に思考がすっきりしている。
同じ場所なのに景色が全然違う。空間が違う、となんでかわからないけどすぐに理解できた。
ていうかなんだか視線がいつもより高く感じるし。
「なんだ、ここは…」
わたしの声じゃない、低めの男性の声が出る。
うん、これはもうわかった。展開が読めるぞわたしには。
おそらく、わたしは――
「魔王…?なんじゃこりゃ!?」
魔王の過去を見ている。それも魔王自身になって。
(うわぁ、なんてベタな展開なんだ。全く)
視界に入る範囲しかわからないけど、割と長身で真っ黒な服を着ている…いや、これは真っ黒なスーツだ。首からは社員証らしき透明なケースに入ったカードが見えている。……先々代の魔王は日本人だったらしい。
それにしても…わたしは少し小さいほうに部類される身長だから地面が遠いと違和感があるな。これだけ地面と視界が離れていてよく転ばないものだと思いながらもわたしの意思とは関係なしに勝手に歩きはじめる足。
突然現れたステータス画面の称号欄にはしっかりと魔王と書かれている。
「まじかー魔王かー……」
がっくりとその場にしゃがみ込む魔王。その割には口調はなんだか嬉しそうである。
ぱっと顔を上げると片手を差し出して高らかに叫んだ。
「ファイアーボール!…なんつって…ええええ!?」
しーんと静寂が包み込んだ――かと思えば、何もない空間に炎の玉が現れて――前方に吹っ飛んで行った。地面に大きな焦げ跡を残して。
わたしはあんな魔法使えたことないけど、なんかかっこいい!強そう!
「すっげええええええ!?まじかよ最強じゃんお……れ…?」
ぐらりと視界が歪む。
ステータス画面のMPは0通り越してマイナス表記になっている。マイナス99とかあるんだ。へえー。
魔王の意識が薄くなっていくのを感じて、わたしの意識も遠くなっていく。
え?連動してるのコレ?もう日本人だってことはわかったからさっさと昼寝に戻りたいんだけど。
わたしの意思とは裏腹に、視界が真っ黒になっていった――。
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