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06:恋を応援し隊です
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「おい、お前。そう、お前だよお前」
人のことをお前呼ばわりして超上から目線で自分の目の前を指で指し示してそこまで寄ってこいと言っているのは婚約者(偽)であり、一つ年上のレオ・クライス公爵子息だ。
わたしは平民なので上から目線なのも納得できるけど、本当の王女である主人公にもこういう態度なので今から矯正させておかないと!王女にそんな上から目線しちゃダメよ!
「はい、どうしたんですか、レオ様」
「……」
「レオ様?」
心の中で注意をしてからレオに歩み寄る。
人のことを呼びつけておいて無言。全くもって俺様系は謎の行動をする人間である。
レオはまだ幼い顔立ちだが、漫画通り美形に育つであろう整った目鼻立ち、オレンジ色のさらさらの髪をしている。美少年という言葉がぴったりの彼の顔を覗きこめば、思い切り顔を逸らされてしまった。
「あ、あのー……レオ様?」
「それだよ」
「はい?」
「その様っていうの。なんなんだよ、突然」
……ああ。そういえばフィアーナはレオのことを呼び捨てにしていたっけ。それが突然様付けになったのだから怪しまれるのも無理はない。だが平民に戻った時、公爵の子息を呼び捨てにしていたなんて知れたら無礼罪で処刑待ったなしなんだもの。
うーん。なんて言おうか。
「いきなりよそよそしくなりやがって…それに、婚約を破棄したいって言い出してるとか聞いたし…なんだよパン屋って。公爵夫人がそんなに嫌なのかよ」
「いえ、嫌というよりも…わたくし達、本当の婚約者ではないんですもの」
「はあ?」
頭のおかしい人でも見るような目でわたしを見るレオ。
ちなみに、本当に平民だからというのもあるが、婚約破棄をしたい理由はもうひとつある。
「レオ様、お茶です」
レオとわたしの前に紅茶を置くのはレオの侍女であるクラレット。もうひとつの理由が、彼女だ。
レオの十個上で、産まれたときから傍に居る侍女。レオの初恋が彼女なのだ。漫画でそのシーンがあったことははっきりと覚えているので、確かな情報である。
……そう。わたしはレオの初恋を応援したいのである!
人の恋路を邪魔するものは馬に蹴られて死んじゃうって諺があったような気もするし、好きな人とは結ばれるべきという少女漫画脳なわたしは二人のことを応援したい。身分差なんて関係ないよね!
「レオ様、わたくしは応援しているんですのよ!」
「な、なんだよ突然」
「ふふふ、わかっていますのよ。わたくしはあなたが想いを寄せている方がいらっしゃることを!」
ぼんっと顔が真っ赤になるレオ。どうやら図星だったようだ。
さすがに本人の居る前で、お前あいつのこと好きなんだろ~とか小学生みたいなことはしないが。レオの反応からしてこれは確実にクラレットのことが好きなはずだ。
「なので、わたくし達婚約破棄をした方がいいと思いますの!」
「……」
レオの赤くなった顔がスッと真顔になった。え?なに?おかしなこと言った?
婚約に関しては親同士が決めたとはいえ、当人たちの意思もある程度は融通してくれるはずだから、婚約破棄をしても飲んでくれるとは思うけど……。
「大丈夫ですわ、お父様からはわたくしが言っておきますので!」
「お前…なんもわかってねーじゃねえか!」
「え?え??」
何故か怒られてしまって、きょとんとしてしまう。あ、そうか…思っているよりも身分差の恋について気にしているんだろうか。何とかなる!で済む世界ではないことをわかっていないのはわたしか……。
「俺が好きなのは……!…いい、また来る!」
お、ここで告白か?と思ったらはっきり言わないまま踵を返して言ってしまった。
その耳は真っ赤に染まっていて、年相応の少年らしさを感じたのであった。
うーん。確か令嬢たちの間ではメイドと貴族の恋模様を描いた話が流行っていたはず。一冊買っておすすめしてあげよう。
人のことをお前呼ばわりして超上から目線で自分の目の前を指で指し示してそこまで寄ってこいと言っているのは婚約者(偽)であり、一つ年上のレオ・クライス公爵子息だ。
わたしは平民なので上から目線なのも納得できるけど、本当の王女である主人公にもこういう態度なので今から矯正させておかないと!王女にそんな上から目線しちゃダメよ!
「はい、どうしたんですか、レオ様」
「……」
「レオ様?」
心の中で注意をしてからレオに歩み寄る。
人のことを呼びつけておいて無言。全くもって俺様系は謎の行動をする人間である。
レオはまだ幼い顔立ちだが、漫画通り美形に育つであろう整った目鼻立ち、オレンジ色のさらさらの髪をしている。美少年という言葉がぴったりの彼の顔を覗きこめば、思い切り顔を逸らされてしまった。
「あ、あのー……レオ様?」
「それだよ」
「はい?」
「その様っていうの。なんなんだよ、突然」
……ああ。そういえばフィアーナはレオのことを呼び捨てにしていたっけ。それが突然様付けになったのだから怪しまれるのも無理はない。だが平民に戻った時、公爵の子息を呼び捨てにしていたなんて知れたら無礼罪で処刑待ったなしなんだもの。
うーん。なんて言おうか。
「いきなりよそよそしくなりやがって…それに、婚約を破棄したいって言い出してるとか聞いたし…なんだよパン屋って。公爵夫人がそんなに嫌なのかよ」
「いえ、嫌というよりも…わたくし達、本当の婚約者ではないんですもの」
「はあ?」
頭のおかしい人でも見るような目でわたしを見るレオ。
ちなみに、本当に平民だからというのもあるが、婚約破棄をしたい理由はもうひとつある。
「レオ様、お茶です」
レオとわたしの前に紅茶を置くのはレオの侍女であるクラレット。もうひとつの理由が、彼女だ。
レオの十個上で、産まれたときから傍に居る侍女。レオの初恋が彼女なのだ。漫画でそのシーンがあったことははっきりと覚えているので、確かな情報である。
……そう。わたしはレオの初恋を応援したいのである!
人の恋路を邪魔するものは馬に蹴られて死んじゃうって諺があったような気もするし、好きな人とは結ばれるべきという少女漫画脳なわたしは二人のことを応援したい。身分差なんて関係ないよね!
「レオ様、わたくしは応援しているんですのよ!」
「な、なんだよ突然」
「ふふふ、わかっていますのよ。わたくしはあなたが想いを寄せている方がいらっしゃることを!」
ぼんっと顔が真っ赤になるレオ。どうやら図星だったようだ。
さすがに本人の居る前で、お前あいつのこと好きなんだろ~とか小学生みたいなことはしないが。レオの反応からしてこれは確実にクラレットのことが好きなはずだ。
「なので、わたくし達婚約破棄をした方がいいと思いますの!」
「……」
レオの赤くなった顔がスッと真顔になった。え?なに?おかしなこと言った?
婚約に関しては親同士が決めたとはいえ、当人たちの意思もある程度は融通してくれるはずだから、婚約破棄をしても飲んでくれるとは思うけど……。
「大丈夫ですわ、お父様からはわたくしが言っておきますので!」
「お前…なんもわかってねーじゃねえか!」
「え?え??」
何故か怒られてしまって、きょとんとしてしまう。あ、そうか…思っているよりも身分差の恋について気にしているんだろうか。何とかなる!で済む世界ではないことをわかっていないのはわたしか……。
「俺が好きなのは……!…いい、また来る!」
お、ここで告白か?と思ったらはっきり言わないまま踵を返して言ってしまった。
その耳は真っ赤に染まっていて、年相応の少年らしさを感じたのであった。
うーん。確か令嬢たちの間ではメイドと貴族の恋模様を描いた話が流行っていたはず。一冊買っておすすめしてあげよう。
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