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07:ばれないようにするときは堂々とです
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「お兄様、お願いです。街に行きたいのです」
「理由は」
「えっと……市場調査、的な…?」
七歳になった春。
わたしはそろそろ城下町におりてもいいんじゃないかと下兄様を説得しに来ている。
お母様とお父様に言ってみたけど上兄様と下兄様がいいと言えばオッケーだと言っていたので、まずは下兄様から崩しに来たのだ。
上兄様が爽やか系だとしたら、下兄様はすこしきつめの顔をしている。まあツンデレキャラだしね。ちょっと吊り上った目はツンデレ顔だ。
「適当な理由を付けるな」
「適当じゃありませんわ!」
市場調査というのは本当だ。
街で何が流行っていて、どんな職業があるのかこの目で確かめたいのだ。調査は自分の足で。就職活動していた先輩がそんなことを言っていたような気がするし、インターネットが無いこの世界じゃ直接見て回った方がわかる。
「ツィンデお兄様お願いですーーーーっ」
「ええいまとわりつくな!私を懐柔できると思うなよ!」
下兄様の腰に抱き着いていやいやと駄々を捏ねてみたけど、あっさり剥がされた上に逃げられてしまった。
……こうなったら仕方ない。
許してくれなかった下兄様が悪いのよ。一緒に上兄様にお願いしに行ってくれれば……。
と、いうことでお城から脱走を図ろうと思います。
前世の知識があって良かったわ。まずは人払いをしてから、シーツとカーテンをいくつもつなぎ合わせて…………ちょっと短いかしら。二階だしちょっとくらい足りなくて飛んでも死にはしない…よね?
それをテラスの柵に結び付けて……降りるだけ、なんだけど。
思っていた以上に高い上に紐が心許ない。よくある脱走のあれってすごい勇気が必要なのね!?でもここで立ち止まっているわけにもいかないし…ええい、ままよ!
しっかり紐を握り締めて、ゆっくり降りていく。
――ギ。
「ん?」
――ギリリ。
固く結んだはずだったけど、わたしが下に降りるたびに結んだところが緩んでいって――――やばい、と思った時には解けていた。
ドサッと地面に落ちる。
思ってたよりも土が柔らかかったのでそんなに痛みはないけどドレスが汚れてしまった。お母様が見たらまた卒倒しそうだ。
「何の物音だ?」
「向こうだな」
見回りの兵士がこちら側へ来ようとしている。
――やばい、逃げなくちゃ!
慌てて城門の方へと走る。……しまった。どうやって出ればいいのかな。
焦った顔をしていた方が怪しまれるかもしれない。ここは堂々と……堂々と。
「皆さまごきげんよう」
「ご、ごきげんよう……」
わたしがにこりと笑い掛けて城門を抜けていく。ばくばくと心臓の音が早くなったけど、あっさり抜けてしまった。なんだ、顔パスでいけるじゃない。
……さあ、憧れの城下町へ!
「今のって王女様じゃないか?」
「ばかいえ、王女様があんな泥まみれになるわけないだろ」
「じゃあ別人か…?王女様に似てると思ったけどなぁどこの令嬢なんだろうないったい…」
そしてわたしの知らないところで、泥だらけの令嬢の噂がひっそりと広まるのだった。
「理由は」
「えっと……市場調査、的な…?」
七歳になった春。
わたしはそろそろ城下町におりてもいいんじゃないかと下兄様を説得しに来ている。
お母様とお父様に言ってみたけど上兄様と下兄様がいいと言えばオッケーだと言っていたので、まずは下兄様から崩しに来たのだ。
上兄様が爽やか系だとしたら、下兄様はすこしきつめの顔をしている。まあツンデレキャラだしね。ちょっと吊り上った目はツンデレ顔だ。
「適当な理由を付けるな」
「適当じゃありませんわ!」
市場調査というのは本当だ。
街で何が流行っていて、どんな職業があるのかこの目で確かめたいのだ。調査は自分の足で。就職活動していた先輩がそんなことを言っていたような気がするし、インターネットが無いこの世界じゃ直接見て回った方がわかる。
「ツィンデお兄様お願いですーーーーっ」
「ええいまとわりつくな!私を懐柔できると思うなよ!」
下兄様の腰に抱き着いていやいやと駄々を捏ねてみたけど、あっさり剥がされた上に逃げられてしまった。
……こうなったら仕方ない。
許してくれなかった下兄様が悪いのよ。一緒に上兄様にお願いしに行ってくれれば……。
と、いうことでお城から脱走を図ろうと思います。
前世の知識があって良かったわ。まずは人払いをしてから、シーツとカーテンをいくつもつなぎ合わせて…………ちょっと短いかしら。二階だしちょっとくらい足りなくて飛んでも死にはしない…よね?
それをテラスの柵に結び付けて……降りるだけ、なんだけど。
思っていた以上に高い上に紐が心許ない。よくある脱走のあれってすごい勇気が必要なのね!?でもここで立ち止まっているわけにもいかないし…ええい、ままよ!
しっかり紐を握り締めて、ゆっくり降りていく。
――ギ。
「ん?」
――ギリリ。
固く結んだはずだったけど、わたしが下に降りるたびに結んだところが緩んでいって――――やばい、と思った時には解けていた。
ドサッと地面に落ちる。
思ってたよりも土が柔らかかったのでそんなに痛みはないけどドレスが汚れてしまった。お母様が見たらまた卒倒しそうだ。
「何の物音だ?」
「向こうだな」
見回りの兵士がこちら側へ来ようとしている。
――やばい、逃げなくちゃ!
慌てて城門の方へと走る。……しまった。どうやって出ればいいのかな。
焦った顔をしていた方が怪しまれるかもしれない。ここは堂々と……堂々と。
「皆さまごきげんよう」
「ご、ごきげんよう……」
わたしがにこりと笑い掛けて城門を抜けていく。ばくばくと心臓の音が早くなったけど、あっさり抜けてしまった。なんだ、顔パスでいけるじゃない。
……さあ、憧れの城下町へ!
「今のって王女様じゃないか?」
「ばかいえ、王女様があんな泥まみれになるわけないだろ」
「じゃあ別人か…?王女様に似てると思ったけどなぁどこの令嬢なんだろうないったい…」
そしてわたしの知らないところで、泥だらけの令嬢の噂がひっそりと広まるのだった。
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