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09:キザな台詞も少女漫画らしいです?

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 主人公…アリスの初恋は幼馴染であり騎士になった五つ上の男の子だ。
 恋したタイミングはこんな風に悪い人に捕まって助けに来てくれたんだっけ……。

「兄さんたち、女の子をこんな薄暗いとこに連れ込んで何するつもりなんだ?」

 そうそう。こんな風に――――……って、ここまで再現するつもりなの!?
 助けに来てくれたのはアリスの幼馴染である騎士…今は騎士見習いだっけ?ともかく、初恋の相手であるシキが男たちの後ろから現れた。

「なんだおめぇは」
「やっちまおうぜあんちゃん!」

 どうしてこういう悪党たちって単細胞なんだろうか。わたしを人質にすればいいのに二人掛かりでシキに向かっていく。シキが剣を抜くと――わたしには何があったのか見えなかったが、一瞬で斬られたようで、男たちの服が地面に落ちる。

「こ、こいつやべーよあんちゃん!」
「くそっ覚えてろー!」

 お約束な捨て台詞を吐いて逃げていく悪党たち。
 シキがわたしに寄ってくると片手を差し出して、人当り良さそうな笑みを浮かべる。

「大丈夫か、お姫様」

 ――――ドキ……なんて思うわけなく、差し出された手を握り締めると立ち上がる。泥だらけだったドレスがもっと汚れていることに気付いて、お母様の雷を想像すると気分が沈む。
 わたしの様子に何を勘違いしたのか目線を合わせて、頭を撫でてきた。

「ああ、怖かったよな。もう大丈夫だ」
「は、はい…?あ、助けて頂きましてありがとうございました」

 確かにナイフを突きつけられた時は怖かったが、シキが圧倒するのは知っていたので特に恐怖とかはなかったんだけど……とりあえず助けてくれたことにお礼を言うと握り締めた手を握り返されて引っ張られる。

「表通りまで送ってやるよ、ほら」

 思っていた以上に奥まで行っていなかったらしい。すぐに明るい通りに出た。いきなり明るいところに出るものだから眩しくて目を細めてしまう。

「あの、助けてくれてありが――…あら?」

 ようやく明るさに慣れてきたところで振り返ってみるがシキの後ろ頭は離れてしまっていた。…ここまで漫画通りだ。相手がわたしではなく、アリスだったらだけど……。
 わたしが余計なことをしているせいでアリスの邪魔をしているんじゃ!?入れ替わりたいと思っててもこのままじゃアリスが見付からない可能性が大きい。どうしたらいいんだろう……。

「フィアーナ」

 …………この声は上兄様の声だ。いつも通りの爽やかそうな声をしているがいつも通り過ぎるのが怖い。
 ゆっくりと振り向けば、笑顔の上兄様と怒っている顔の下兄様がいらっしゃいました。

「言いたいことはわかってるね?」

 上兄様が馬車の扉を開ける。
 ……お説教のダブルコースですね。わかります。
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