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28:城下町視察兄妹です!
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「う、上兄様…どうしてここに?」
「フィアーナがこそこそしているのが見えたから後をついてきただけだけど?」
城を抜け出そうとしたところを、よりにもよって上兄様に見付かるなんて……!連れ戻された挙句お説教されてしまう…。
「ところで、そんなところに穴なんて開いてしまっていたんだね。庭の様子もかなりひどいみたいだし、補修を頼んでおくよ」
「ままま、待ってください上兄様!」
踵を返して、城に戻ろうとする上兄様の裾を掴んで制止する。
テンパってしまっていた。本当についうっかり、普段なら言わないようなことを口走ってしまったのだ。
「街に一緒にお出かけしてください!お兄ちゃん!!」
***
勢いで思わず「お兄ちゃん」なんて呼んでしまったから、もっと怒られるかと思ったけど……上兄様は少し考えた後、「ここで待ってて」とだけ言って城に戻って行ってしまった。
きっと無礼な言葉遣いをしてしまったことと合わせてお説教されてしまうんだわ!
どうしよう不敬な呼び名で王子を呼んだから死刑!なんてことになったら……。
考え始めたら悪いことばかり浮かんでしまう。
ああ、もう街に逃げ出した方がいいんじゃないだろうか…!
うずうずしているわたしの元に、上兄様の声が聞こえる。
「フィアーナ、お待たせ。ちゃんと待ってていい子だね」
「上兄さ……ま?どうされたんですか、その格好…」
街に居そうな少年の格好をしている。上兄様の雰囲気があるから、みずぼらしくはなくて、ちょっといいところのお坊ちゃんみたいな感じだ。
でも、なんでそんな格好に…?
「えーーーっと…??」
「一人で行ったらまた人攫いにあうかもしれないからね」
誘拐未遂のことはまだ覚えているらしい。
つまり…着いてきてくれるってことなのかな?上兄様が一緒ってことは、合法的に街を出歩けるってことね!
「ありがとうございます、上兄様!では早速行きましょう」
「あ、待って」
穴を潜ろうとしたときに上兄様から呼び止められる。人気のない裏庭とはいえ、誰かに見付かる前にさっさと行ってしまいたいんだけどな。
「今からは僕の事を”お兄ちゃん”と呼ぶように」
「…はい?」
「お兄ちゃん」
……嬉しそうな顔をしている上兄様。もしかして、さっきお兄ちゃんって呼んだこと、喜んでる?
「…えっと」
「お兄ちゃんと呼ぶように」
「は、はい、お兄ちゃん…」
言いよどんでしまっているわたしに上兄様が追い打ちをかけるようにまた言ってくる。渋々呼んでみれば、どこか誇らしげに瞳を細めて「良い子だね」と頭を撫でてくれた。
お兄ちゃんと呼ばれて喜ぶなんて意外だった。上兄様は腹黒いけど、厳しくて言葉遣いや礼節を大切にする人だったし。
「それじゃあ行こうか、フィア」
「はい、お兄ちゃん」
穴を抜けると少しだけ肌寒くなった風が吹いて髪が揺れる。出たところで先に出ていた上兄様が片手を差し出してきて、手のひらを重ね合わせるとぎゅっと握り締められる。
こうしてわたしの城下町視察は上兄様…もとい、お兄ちゃんと一緒に行くことになるのでした――。
「フィアーナがこそこそしているのが見えたから後をついてきただけだけど?」
城を抜け出そうとしたところを、よりにもよって上兄様に見付かるなんて……!連れ戻された挙句お説教されてしまう…。
「ところで、そんなところに穴なんて開いてしまっていたんだね。庭の様子もかなりひどいみたいだし、補修を頼んでおくよ」
「ままま、待ってください上兄様!」
踵を返して、城に戻ろうとする上兄様の裾を掴んで制止する。
テンパってしまっていた。本当についうっかり、普段なら言わないようなことを口走ってしまったのだ。
「街に一緒にお出かけしてください!お兄ちゃん!!」
***
勢いで思わず「お兄ちゃん」なんて呼んでしまったから、もっと怒られるかと思ったけど……上兄様は少し考えた後、「ここで待ってて」とだけ言って城に戻って行ってしまった。
きっと無礼な言葉遣いをしてしまったことと合わせてお説教されてしまうんだわ!
どうしよう不敬な呼び名で王子を呼んだから死刑!なんてことになったら……。
考え始めたら悪いことばかり浮かんでしまう。
ああ、もう街に逃げ出した方がいいんじゃないだろうか…!
うずうずしているわたしの元に、上兄様の声が聞こえる。
「フィアーナ、お待たせ。ちゃんと待ってていい子だね」
「上兄さ……ま?どうされたんですか、その格好…」
街に居そうな少年の格好をしている。上兄様の雰囲気があるから、みずぼらしくはなくて、ちょっといいところのお坊ちゃんみたいな感じだ。
でも、なんでそんな格好に…?
「えーーーっと…??」
「一人で行ったらまた人攫いにあうかもしれないからね」
誘拐未遂のことはまだ覚えているらしい。
つまり…着いてきてくれるってことなのかな?上兄様が一緒ってことは、合法的に街を出歩けるってことね!
「ありがとうございます、上兄様!では早速行きましょう」
「あ、待って」
穴を潜ろうとしたときに上兄様から呼び止められる。人気のない裏庭とはいえ、誰かに見付かる前にさっさと行ってしまいたいんだけどな。
「今からは僕の事を”お兄ちゃん”と呼ぶように」
「…はい?」
「お兄ちゃん」
……嬉しそうな顔をしている上兄様。もしかして、さっきお兄ちゃんって呼んだこと、喜んでる?
「…えっと」
「お兄ちゃんと呼ぶように」
「は、はい、お兄ちゃん…」
言いよどんでしまっているわたしに上兄様が追い打ちをかけるようにまた言ってくる。渋々呼んでみれば、どこか誇らしげに瞳を細めて「良い子だね」と頭を撫でてくれた。
お兄ちゃんと呼ばれて喜ぶなんて意外だった。上兄様は腹黒いけど、厳しくて言葉遣いや礼節を大切にする人だったし。
「それじゃあ行こうか、フィア」
「はい、お兄ちゃん」
穴を抜けると少しだけ肌寒くなった風が吹いて髪が揺れる。出たところで先に出ていた上兄様が片手を差し出してきて、手のひらを重ね合わせるとぎゅっと握り締められる。
こうしてわたしの城下町視察は上兄様…もとい、お兄ちゃんと一緒に行くことになるのでした――。
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