とあるBARの日常茶飯事

酒本ゆき

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いつもと変わらないはずだった【コハルとの出会い】

第二話

 コハルの情報屋としての腕前は中々の物だった。
 
 俺の代わりに情報を集めてくるコハル。仕事が楽になり、最近休みが取れなかった俺は彼女に感謝しつつも、困ったこともある。

 それはコハルが組織を勝手に抜けて俺の相棒になったことにより、住む場所がないということだ。

 「トウマぁ、一緒に住もう♡」

 「絶対に嫌だ」

 断るも半ば強引に荷物を運びこまれ、俺はコハルと同棲することになったのだ。

 仕事柄、誰かが同じ部屋にいると俺は警戒して眠ることすら出来ない。ここ数日俺は寝不足になっていた。

 本当に勘弁してくれ……! いい加減熟睡したい俺は、信用できる人を頼ることにした。

 「それで私のとこに来たってわけね」

 「そういうことだ。何処か借りられる部屋ってないか?」

 俺にそう言われ、考えているのは「ルイ」。親父と居た時から世話になっている闇医者だ。

 「いい加減寝たいんだ、俺は……」

 ルイはどこか面白そうに笑う。

 「いやぁ、トウマにこんなかわいい子が惚れてくれるなんてねぇ……。私的にはそのまま一緒に住んでてほしいけどねぇ」

 「私もトウマと一緒にいたいです~」

 「そうだよねぇ~!」

 ルイはコハルの頭を撫でながら、俺をにやけた面で見る。その顔に無性に腹が立った。

 「俺は! 寝たいんだよ!」

 「じゃあ、コハルちゃんがいても眠れるようになればいいじゃないか」

 「無理だから頼んでいるんだが?」

 イライラが増して声を荒げそうになるのを必死に抑えながら、俺はルイに言う。

 しかし、ルイは俺の頼みを聞いてもくれないようだ。

 「人間と言うものは慣れる生き物だよ、トウマ。大丈夫、そのうち慣れるさ!」

 結局何の成果も得られず、俺はそのままコハルとの同棲続行になった。

 「トウマ、私寝なくても大丈夫だし夜は情報集めしておこうかぁ?」

 帰り道、ふとコハルが俺にそう言った。

 「何言ってんだよ。女性にそんな無茶させるほど俺は落ちぶれていないぞ」

 俺の言葉にコハルはキョトンとする。

 「ふへ、本当にトウマってこの世界に向いてないよねぇ~?」

 「は? 俺はこっちの世界で育ってきたんだぞ? 向いてねぇ訳ないだろ」

 「ふふ、そうだねぇ~。まぁ、いいんじゃないかなぁ」

 コハルは俺を愛おしそうな瞳で見ながら笑う。その視線がこそばゆく感じて、そっと視線を逸らした。

 彼女が向けてくる愛情のような物。信用できる物ではないのに、ふとした時に心地よく感じてしまう自分に戸惑っている。

 「トウマぁ、今日のご飯何にしよっかぁ?」

 「そうだな、今日はBARも休み取ってるし酒飲みたい気分だから……。焼き鳥かな」

 「いいねぇ~! じゃあ、私のお勧めの焼き鳥のお店案内するよぉ!」

 何気ない会話。俺が遠い昔に望んでいた普通が今ここにあるような気がした。
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