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物怪の幸い
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窓の外に見える景色は、春一色。
目を閉じれば心地の良い眠りがスグそこまでやってきて、脳裏に広がるのは満開の桜。
新年度早々にある実力テスト、そのテスト勉強をしようと思っても異国の言葉がそれを邪魔するんだ……。
「寝るな」
沈む意識を僅かに繋ぎとめているのはシロの声。
これは夢だろうか?
だって、シロにはモモという彼女がいて、今日はモモさんに勉強を見てもらうとか言ってたじゃないか。
「起きろ!」
スパァーン!
「痛……」
顔を上げて見えたのは、教科書を丸めて握っているシロの不機嫌そうな顔。
そうだ、勉強会の開催地はシロの部屋だった。
モモさんとの2人きりの勉強会をキャンセルしてまで俺達を部屋に呼んだのはどうしてなんだろう?
全く予想もしてなかったんだ。
俺はてっきりモモさんとの時間を大事にして、俺達とは少しばかりの距離が開くんだろうなって、そう思ってたんだ。
それなのに……。
「今すっごい音したけど、大丈夫?頭蓋骨へこんでへん?」
シロの隣には笑顔のモモさんがいる。しかも、何やらありえない事を言いながら。
「音は凄かったけど、そんな痛くないんで大丈夫です」
そう言って大きく伸びて眠気を誤魔化していると、本日何度目かの着信音が聞こえてきた。
鳴っているのは俺の携帯でも、セイのでもシロのでもモモさんのでもなくて、隣の部屋にいるシロのお兄さんの携帯。
ホーホケキョ☆
ホーホケキョ☆
延々と聞こえてくる囀りに、徐々に可笑しくなってくる。
何で、どうしてウグイス?
しかし、シロは何時までたっても鳴き止まないウグイスに……いや、止めないお兄さんに対してイライラを募らせ、部屋を出て行ってしまった。
ドンドン!
激しく部屋をノックする音と、ウグイスの着信音が、交互に……。
「ふふふ……」
教科書で顔を隠しながらセイが笑うと、一気に我慢の限界がやって来て、少し2人で笑ってしまった。いや、3人で。
「入るで!」
終に部屋にまで押し入ったシロにより、着信音はスグに消えると思っていたのだが、今度は「起きろ」と言うシロの声とウグイスのコラボが始まってしまった。
って言うか、お兄さんは寝てたのか。良くあんな長時間のウグイスで起きないな……眠り深過ぎない?
春眠暁を覚えずとは言うけど、もうお昼過ぎだし。
あ、お昼過ぎか。
そろそろ昼食休憩したいなぁ。どうせだから弁当買って花見も良いかも。
それにはまずお兄さんを起こさないと駄目な気がする……そうしなきゃシロも戻って来ないし。
「ちょっと様子見て来る」
立ち上がった俺を見上げるセイは、教科書で口元を隠しながら少しばかりの裏声で、
「ホケキョ☆」
と。
笑い過ぎて顔の筋肉が痛いから、ちょっと待って。
「ホーホー」
モモさん、それウグイスじゃなくてフクロウだから!
まさか、こんな違和感なく3人組から4人組になるとは思わなかったよね。
うん。
圧倒的なツッコミ要員不足!
じゃない、様子を見に行くんだった。
シロの部屋から廊下に出ると、大きく開け放たれたお兄さんの部屋のドアが目に入って、特に何の了解も得ずに中に入って、そこで始めて笑ってる場合じゃなかった事に気が付いた。
何がどう大変なのかは上手く説明が付かないけど、お兄さんの寝姿が不自然な気がする。
寝息が荒いとか、ちょっとうなされてるとか、寝汗が凄いとか。1つ1つを見れば普通なんだけど……何処が可笑しいんだろ?
「起きろって!」
シロも何か感じる事があるのか必死でお兄さんを起こそうとしているが、少しうなされているお兄さんに起きる気配はない。
これ、救急車呼んだ方が良い状況?
もしかして寝てるんじゃなくて気絶してるとか!?
えっと、えっと、確か保健の授業でサラッと習った気がする。
気道確保……荒いけど呼吸はしてるし大丈夫そうか。じゃあ脈の確認だ!
「お兄さん大丈夫ですか!?」
一応声をかけながら首に手を当ててみると、指先にドクドクとした脈を感じる。少し早いけど力強いし大丈夫かな。だったら熱は……。と、額に手を置いた所で、
「……ん?え!?あれ……?」
お兄さんが急に、いきなり、突然起きた。
元気良さそうな混乱っぷりを見る限り気絶とかではなさそうで安心した……だったら早く退散しよう。
「やっと起きたんか。ズット鳴っててうっさいねんけど」
鬱陶しそうな表情で携帯を指差すシロと、
「あー……出るわ」
鳴きっぱなしだった携帯を手に取ったお兄さんが手を振って来た事で極々自然に退室出着た俺は、前を歩き出したシロの後頭部あたりに向かって声を出した。
「気分転換に花見行かへん?」
本当なら着信音も消えた事だし、ここから勉強に励むのが良いんだろうけど、お昼だし、お腹空いたし。
返事を待っていると、廊下に飛び出してきたセイとモモさんが口々にシロを外へと誘う。
「花見しよ!」
「HANAMI行こ!」
行こう、行こう。
モモさんがいるから流石に裏山まではどうかと思うけど、近所の公園にも綺麗な桜が咲いてるし、コンビニも近いし。
「あ、そうや。私の友達も呼ぶわ。女の子2人!」
えっと?
それって、もしかして合コン!?
待って待って、今日は勉強会だからって事でかなり適当な服装……いや、オシャレな服を持ってる訳でもないんだけどさ。
「こ、心の準備が……」
あれ?セイが消極的なんて珍しい。
さては適当な服装を気にしているんだな?それとも雑誌に載っている“モテるには”的な必勝方法を復習しないと不安とか?
「何か物凄いのが芽生えたりするかもよ?」
物凄いのってなに!?
合コンをして芽生えるものは、恋のみでお願いします!
目を閉じれば心地の良い眠りがスグそこまでやってきて、脳裏に広がるのは満開の桜。
新年度早々にある実力テスト、そのテスト勉強をしようと思っても異国の言葉がそれを邪魔するんだ……。
「寝るな」
沈む意識を僅かに繋ぎとめているのはシロの声。
これは夢だろうか?
だって、シロにはモモという彼女がいて、今日はモモさんに勉強を見てもらうとか言ってたじゃないか。
「起きろ!」
スパァーン!
「痛……」
顔を上げて見えたのは、教科書を丸めて握っているシロの不機嫌そうな顔。
そうだ、勉強会の開催地はシロの部屋だった。
モモさんとの2人きりの勉強会をキャンセルしてまで俺達を部屋に呼んだのはどうしてなんだろう?
全く予想もしてなかったんだ。
俺はてっきりモモさんとの時間を大事にして、俺達とは少しばかりの距離が開くんだろうなって、そう思ってたんだ。
それなのに……。
「今すっごい音したけど、大丈夫?頭蓋骨へこんでへん?」
シロの隣には笑顔のモモさんがいる。しかも、何やらありえない事を言いながら。
「音は凄かったけど、そんな痛くないんで大丈夫です」
そう言って大きく伸びて眠気を誤魔化していると、本日何度目かの着信音が聞こえてきた。
鳴っているのは俺の携帯でも、セイのでもシロのでもモモさんのでもなくて、隣の部屋にいるシロのお兄さんの携帯。
ホーホケキョ☆
ホーホケキョ☆
延々と聞こえてくる囀りに、徐々に可笑しくなってくる。
何で、どうしてウグイス?
しかし、シロは何時までたっても鳴き止まないウグイスに……いや、止めないお兄さんに対してイライラを募らせ、部屋を出て行ってしまった。
ドンドン!
激しく部屋をノックする音と、ウグイスの着信音が、交互に……。
「ふふふ……」
教科書で顔を隠しながらセイが笑うと、一気に我慢の限界がやって来て、少し2人で笑ってしまった。いや、3人で。
「入るで!」
終に部屋にまで押し入ったシロにより、着信音はスグに消えると思っていたのだが、今度は「起きろ」と言うシロの声とウグイスのコラボが始まってしまった。
って言うか、お兄さんは寝てたのか。良くあんな長時間のウグイスで起きないな……眠り深過ぎない?
春眠暁を覚えずとは言うけど、もうお昼過ぎだし。
あ、お昼過ぎか。
そろそろ昼食休憩したいなぁ。どうせだから弁当買って花見も良いかも。
それにはまずお兄さんを起こさないと駄目な気がする……そうしなきゃシロも戻って来ないし。
「ちょっと様子見て来る」
立ち上がった俺を見上げるセイは、教科書で口元を隠しながら少しばかりの裏声で、
「ホケキョ☆」
と。
笑い過ぎて顔の筋肉が痛いから、ちょっと待って。
「ホーホー」
モモさん、それウグイスじゃなくてフクロウだから!
まさか、こんな違和感なく3人組から4人組になるとは思わなかったよね。
うん。
圧倒的なツッコミ要員不足!
じゃない、様子を見に行くんだった。
シロの部屋から廊下に出ると、大きく開け放たれたお兄さんの部屋のドアが目に入って、特に何の了解も得ずに中に入って、そこで始めて笑ってる場合じゃなかった事に気が付いた。
何がどう大変なのかは上手く説明が付かないけど、お兄さんの寝姿が不自然な気がする。
寝息が荒いとか、ちょっとうなされてるとか、寝汗が凄いとか。1つ1つを見れば普通なんだけど……何処が可笑しいんだろ?
「起きろって!」
シロも何か感じる事があるのか必死でお兄さんを起こそうとしているが、少しうなされているお兄さんに起きる気配はない。
これ、救急車呼んだ方が良い状況?
もしかして寝てるんじゃなくて気絶してるとか!?
えっと、えっと、確か保健の授業でサラッと習った気がする。
気道確保……荒いけど呼吸はしてるし大丈夫そうか。じゃあ脈の確認だ!
「お兄さん大丈夫ですか!?」
一応声をかけながら首に手を当ててみると、指先にドクドクとした脈を感じる。少し早いけど力強いし大丈夫かな。だったら熱は……。と、額に手を置いた所で、
「……ん?え!?あれ……?」
お兄さんが急に、いきなり、突然起きた。
元気良さそうな混乱っぷりを見る限り気絶とかではなさそうで安心した……だったら早く退散しよう。
「やっと起きたんか。ズット鳴っててうっさいねんけど」
鬱陶しそうな表情で携帯を指差すシロと、
「あー……出るわ」
鳴きっぱなしだった携帯を手に取ったお兄さんが手を振って来た事で極々自然に退室出着た俺は、前を歩き出したシロの後頭部あたりに向かって声を出した。
「気分転換に花見行かへん?」
本当なら着信音も消えた事だし、ここから勉強に励むのが良いんだろうけど、お昼だし、お腹空いたし。
返事を待っていると、廊下に飛び出してきたセイとモモさんが口々にシロを外へと誘う。
「花見しよ!」
「HANAMI行こ!」
行こう、行こう。
モモさんがいるから流石に裏山まではどうかと思うけど、近所の公園にも綺麗な桜が咲いてるし、コンビニも近いし。
「あ、そうや。私の友達も呼ぶわ。女の子2人!」
えっと?
それって、もしかして合コン!?
待って待って、今日は勉強会だからって事でかなり適当な服装……いや、オシャレな服を持ってる訳でもないんだけどさ。
「こ、心の準備が……」
あれ?セイが消極的なんて珍しい。
さては適当な服装を気にしているんだな?それとも雑誌に載っている“モテるには”的な必勝方法を復習しないと不安とか?
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