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SIN

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類を以って集まる

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 口癖が「暇」である俺は、同じく「暇」と言う口癖を持っている友達がいる。
  しかも2人。
  3人集まっても1番最初に交わされる会話は当然、
  「暇~」
  である。
  そんな似たような3人が集まった所で特に面白い会話も出ないし、楽しい事をしようと企画する奴もいない。
  それぞれがダルそうに肩肘を付きながら携帯画面を見ていたりする。
  3人で固まって座る必要があるのか?
  「あー……」
  それを突っ込もうとして開けた口。しかし2人共視線すらこちらに向けないので「まぁいいか」と口を閉じた。
  これで良いのか?貴重な高校生活!
  頭では分かっているんだ、こんな時間の無駄遣いしていたら、将来きっと後悔するんだろうって。現に中学時代の事を後悔しているんだから、それは間違いない。
  これでは「クラスの思い出」とか言う卒業写真や、卒業文集に自分だけ忘れ去られる。寄せ書きの色紙すら回ってこなかった中学時代の経験があるので、本当に危ないぞ!?
  「なぁ」
  肩肘付いていた姿勢を改め、俺の右隣に座っていたセイが自分の携帯画面を見せてきた。そしてそれを左隣に座っているシロが身を乗り出して眺め、
  「雪男?」
  と、首を傾げた。
  携帯画面には、ゴリラのような物体が小さく映し出されている。
  何度かテレビでも見た事のあるそれは、雪男ではなく足が大きなタイプの類人猿だと紹介されていた気がする。
  また別の番組では着ぐるみだという説もあるし、この写真が撮られた時代ではこのような着ぐるみを作る技術はないだの、背中にチャックが見えているだの、論争が繰り広げられていた。
  そしてコレはこの現代と言う時代において、まだ「伝説の生き物」なのだ。
  調査している人は沢山いるのだろうが、朗報が流れて来ないのだから調査は進んでいないのだろう。
  で、その伝説の生き物がどうしたと言うんだ?
  「今日の夜、雪降るらしいし探しに行こうや」
  今夜雪が降るのか。どうりで冷えると思……ん?
  探しに行くって言わなかったか?
  「何処にやねん」
  シロが軽くツッコミを入れたが、笑顔のセイは、
  「裏山まで」
  と。
  「そんな近場におる訳ないんやん」
  間髪いれずに再びシロのツッコミ。
  そうじゃない、そうじゃないだろ……。
  そもそも「雪男」なんて伝説上の代物だから!そんなのが現実にいる訳ないじゃないか!しかも裏山?多少雪が降った所で積もりもしない比較的暖かなここに「雪男」がいる訳ないだろ!?もし裏山に大きな何かがいるとしたら、それはもう「不審者」だ。
  「どーやって捕まえる?」
  「餌で誘き寄せよっか」
  話が進んでいるだとぅ!?
  なに、なに?一体どうしたんだよ2人共……いつものやる気なさげな態度をどこに忘れて来たんだよ。そんな楽しそうに作戦会議なんか始められるとさ、疎外感が物凄いんだけど……。
  俺を挟んで喋る2人から意識を遠ざける為、再び携帯画面に視線を落とす。そして頭に浮かんでくる「暇」の文字。
  このままじゃ駄目だって焦ってるのに、どうして良いのか分からない。ズット同じだと思っていた2人も、今となってはキラキラと目を輝かせている。例え「雪男」の捕獲と言う有り得ない目的でも、それに対して前向きに取り組んでいる2人は眩しい。
  一緒に行ったら何かが変わるだろうか?
  漠然とした絶望感に焦る日々が終わる?
  長年何も出来なかったんだ、ここまでブッ飛んだお題でなければ過去を清算出来ないのかも知れない。
  今日、いや。今から「暇」な自分とはお別れだ!
  「身近にあるとは言え、山は山。寒さ対策と食料は充分に準備しよ!」
  放課後、急いで家に帰った俺は、鞄の中に上着と食料を突っ込んで待ち合わせ場所に向かった。
  かなり急いだのは、何も待ち合わせ時間に間に合わなくなるからとかじゃなくて、馬鹿馬鹿しいと考える時間を自分に与えない為の対策だ。
  裏山にいるかも知れない不審者……いや、「雪男」を本気で捜索してやろうじゃないか!
  「お、早いやん」
  待ち合わせ時間まではまだ30分近くもあると言うのに、シロが向こうから物凄い厚着をして走って来た。
  見る限り特に何も持ってないようだけど……。
  「食料は?」
  フフフと得意げに笑ったシロは、上着の内ポケットから七味唐辛子の瓶を取り出した。
  「雪山と言えば、唐辛子やろ」
  遭難する事を視野に入れるな!
  そもそも裏山ってそんなに高い山じゃないし!1時間もあれば登頂できる位の難易度の低さだから!それと、ここ重要だから良く聞いて!1ミリも雪なんか積もってないからね!?
  待て、そんな山に登るのに食料とか言っている俺も大袈裟?
  「皆ぁ~早いな」
  セイの声に振り返ると、かなりの荷物を背負ったセイがヨロヨロと歩いてきていた。
  あの巨大なリュックは何だ?肩からかけている如何にも調査隊!と言わんばかりのロープは……。
  まずは形から入るタイプだったのか、知らなかったぞ。
  待ち合わせ時間から凡そ30分も早くに集まった俺達、きっとこの2人も我に返る時間を自分に与えない為に急いで来たんだろうと思う。なら、もうこのまま山に向かってしまおう!
  その前に、セイの荷物を整理するか。
  「鞄、めっさデカイけど、何入ってるん?」
  え?と既に息切れ気味のセイは、よいしょと鞄を地面に降ろすと、その場で中身を広げ始めた。
  荷物の半分は食料で、後の半分は寝袋。それと……セイの中では「雪男」はドックフードを食べる事になっているらしい。
  「こんだけで足りるか?」
  そう言いながらシロはドックフードの袋をつつく。
  俺が知らないだけで「雪男」の生態ってかなり一般的に知られている……訳があってたまるか!
  雪山に住んでいる「雪男」だぞ?何でドックフードなんだよ!木の皮とか、冬眠中の動物とかその辺を食べてるんじゃないのか?
  って事は……肉食!?
  餌の心配よりもまずは武器を……。
  だ、駄目だ!我に返っては駄目だ!熱を!もっと「雪男」熱を上げなければ!
  「セイ!シロ!行くで!」
  手ぶらだったシロがいちいち3人分用意されていた寝袋を持ち、俺はドックフードの入った袋を担当。随分と軽くなった鞄をセイが背負い、裏山に入った。
  車止めポールの間を通り過ぎ、なだらかな坂を真っ直ぐ進んでいくと、階段が見えてくる。
  ちゃんとした階段って訳ではないので段差も幅も結構バラバラ、中腹を過ぎた辺りからは所々階段が崩壊しているし、段差は激しいしで、結構しんどい。
  しかし、そんな階段であろうともちゃんと頂上まで続いているので、いくら物凄い方向音痴だろうとも迷いすらせずに登頂する事が出来る。
  今回は「雪男」の捜索が目的なので、階段は使わずに獣道を使う事にした。
  階段からでは行く事が出来ない小川周辺で一旦荷物を下ろし、ドックフードのトラップを仕掛けて様子を見る事に。
  トラップと言っても、ただ紙コップの中にドックフードを入れて置いただけの代物だ。もしこれで本当に「雪男」が出てきたとして、どう捕まえるのだろうか?
  「何箇所かに置いてみよか」
  セイが紙コップを追加で出すと、その中にシロがドックフードを入れて徐に立ち上がり1個目のトラップの横に並べて置いた。
  同じ場所に仕掛けてどーする!
  けど、まぁ……うん。別に良いけどさ……。
  「腹減ってへん?飯にしよーや」
  やりきった後の清々しい表情で鞄から1つの瓶を取り出したセイは、それをカパッと開けた。するとたちまち辺りに広がるなんとも言えないシソの香り。
  え?これだけ大きな鞄に、その瓶1つ?
  「うわぁ……なにそれ」
  セイの食料を見て顔をしかめるシロだが、俺は知っている、その上着の内ポケットには七味唐辛子しか入っていない事を。
  「なにって、梅干やけど?いる?ウマイで」
  梅干のおにぎりとかなら分かるが、なんで梅干のみなんだよ!
  「酸っぱいのキライやし、えぇわ」
  好き嫌いの問題を超越しとるわ!
  「日持ちする食料は基本中の基本やろ」
  それは、確かにその通りかも知れない。でも、どうして遭難する事を視野に入れてんだよ!それに寝袋なんか必要ないだろ?え?もしかして泊りがけで捜索する気で?
  「はぁ。コウは?なんか食うもんある?」
  シロに言われて鞄を開け、寒くなった時の為の上着と板チョコを取り出す。
  「カロリー高い物は大事……」
  あ……うん。ここ裏山だわ。往復1時間程度の散歩コースでカロリー気にしてどーすんだよって。
  「なんか、俺ら初日にしていきなり食料難?」
  とか言いながら、自分は美味しそうに梅干を食っているセイ。なのに心底羨ましくないのは俺も梅干は苦手だからだ。
  「なぁ、雪山におるから「雪男」なんやろ?」
  その場に腰を下ろしたシロは空を仰ぎ見ながら溜息を吐く。
  雪山かどうかは別にしても、雪深い場所にいるから「雪男」なのだと思う。
  しかし、それを今思うのか?
  「名前に雪って付くねんから、雪がある所に出るんやん」
  「じゃあ、雪がない所に出たらなんて名前になるん?」
  知るか!
  「雪がないなら……山男?」
  「山男ってさ、山に登る男って意味やん」
  いや、確かそんな名前の妖怪がいたと思うけど……なんにしたって都市伝説級の未確認生物か。
  「山におる男って、俺らやん」
  何個目かの梅干を口に放りこみ、楽しそうなセイの声を聞いたシロは無言で空を指差してきた。
  「え?」
  まさか空を飛んでいる何かがいるとか?
  な、訳ないか。
  見上げた空には何もない。しいて言うならば空一面に広がる星位だ。
  「ハハッ。天気予報大ハズレ~」
  笑い事か!そして梅干をしまえ!
  「雪降らんかったら「雪男」捜索無理やな」
  内ポケットから七味唐辛子の瓶を取り出し、何故か熱心に眺めたシロは、また空を見上げる。
  何か思う事でもあるのだろうか?でも、雪が降った所で「雪男」は出ないと思う。それでもこうして何かに向けて行動した事は……
 「楽しかったな」
  いつもいつも「暇」だとか言って、何もしてなかっただけなんだと気が付いて。
  良かった。この2人と友達になれて、本当に良かったよ。でなきゃ俺はきっと変われなかっただろう。
  「俺も楽しかった。この星空は高校生活1番の思い出になると思うわ」
  ん?
  「俺もそう、かな」
  え?
  ちょっと、なに2人して言ってんの?
  今日は本当に楽しかったし、この星空も思い出としていつまでも心に残る出来事になると思うけど、今日のココが高校生活1番なの?
  なんで?
  だって俺達、まだ高校1年生だよ!?
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