26 / 66
23
しおりを挟む
街に行って、魔物を倒した戦利品を道具屋に持ち込んで換金し、その足で酒場に行き、壁にかけられている世界地図を見上げる。
島の国は侯爵領から何日もかかるーとか、森の向こう側には隣国が広がってるーとか聞いただけの知識は持っていたけど、こうして地図を見上げてみれば……世界は広いんだな……。
向こう側にある大陸って、また別の国?
島の国っていうけど、どの島のこと?
「こんにちは……国境を、超えるのですか?」
地図を見上げていると、急に肩を叩かれて話しかけられた。
振り返ってみれば、完全に顔まで隠れるフル重装備の剣士の風貌をした人が立っていた。
ここはどう答えれば良いんだろうか……そもそも、どんな感じで話しかけてきたんだろう?フル重装備なんてどこから持ってきたんだろう。
「……王子様、なにやってんの?」
「えっ!?」
え?
声色も変えずに姿を隠しただけで騙せると本気で!?
なにんせよ……またひとつ好感度が落ちてしまうのか。
「国境は超えないよ。地図を見てただけ。じゃあね」
「待て。話しがある……こっちだ」
手を引かれて酒場を出て、向かった場所はなんの変哲もない路地裏だった。
わざわざこの場所に用事があったという感じではなくて、ただただ人のいない場所を選んだ結果といった雰囲気で……。
「話しって?」
フル装備なこととか、今日はトリシュがいないこととか関係する?
後、近いから多少ドキドキするというか……。
いや、相手は男なんだけど姫様だと思ってた時期がある位、その……ね。
「6日前に街で会った時以来だな」
まずは現状確認からだな?
ん?
「6日?3日じゃなくて?」
6日前ってなにかあったっけ?
街で会ったのって花を預かったあの時だよな?それよりも前ってことになると、食堂で肉を食べて髪留めを買ったあの時まで遡ってしまう。
「6日だ。今まで何処にいた?なにをしていた」
仮面をかぶっていて顔が見えないせいか、こうして詰め寄られると普通に尋問を受けている気分になるよ。
いや、受けているのか。
「街で会った後、森に戻ってついさっきまで森の中にいた。魔物の巣をえっと……何個か潰した」
「6日も?」
「森の奥ってあんまり光入ってこないし、寝る時間も疲れたら寝るって感じだったから、正確な時間って分からないんだよ。ただ、魔物って夜になると能力が上がるんだけど、コイツ強いなって魔物が出てきたら夜だなーって」
霧とかも凄いし、魔物の巣を攻略中は洞窟とか洞穴とか崖の下とかだから余計にさ。
「……臭くないけど?汚れてもないし」
確かに普通なら6日も森の中に至ってなれば服が汚れていたり、お風呂に入ってないから多少野性的な臭いを放つことになってるんだろうけど、ほら、俺って浄化魔法使えるし。
「自分に浄化魔法かけてた」
それで、王子様はその6日間なにをしてたんですか……なんて聞いたら、気持ち悪いよな、やっぱり……あっ!
「レッドドラゴンは元気?あいつに王子様になにか聞かれたら答えといてって頼んでたんだけど、なにも聞いてない?」
なにも聞いてないからこそ今があるのか。
だとしたら、6日帰ってこないなーとは感じていたけど、気にならなかったってこと……なら今のこの状況はなんだろう?
街でたまたま見かけたから声をかけたとか?
こんなフル装備で?
「レッドドラゴンを伝言係にするのは止めてくれ……俺はレッドドラゴンと意思の疎通ができない。言葉が分からないんだ」
えっ!?
いや、確かにそうか。
「ゴメン、レッドドラゴン王子様のことご主人って呼んでるし、てっきり喋ってるんだと思ってた」
そういえば伝言を頼んだ時は“伝わるか分からない”って言ってたっけ……王子様が寝てる場合は通じないよなーとかしか考えてなかったわ。
「……で、6日間ずっと森にいたんだな?」
6日ってのにはかなりビックリだけど、街で別れてからさっきまで森にいたのは事実だ。
「うん。換金終わったし、なんなら今から森に戻るけど……」
「少し、いや……今からかなり失礼なことをいうが、実験だと思って許してくれ」
……はい?
「え?なに?失礼なことってなに?」
話しが唐突過ぎると思うけど、多分こっちの話しが本命なんだろうから付き合うよ。
なにを言われるのかは、多少……いや、かなり気にはなるけど。
「……3回その場で回ってワンと言ってくれ」
ん?
これって、俗にいう“3回回ってワン”だよな?よくは分からないけど、やって欲しいならするけど?
クルクルクル
「ワン。これで合ってる?」
「……合ってる……」
合ってるならもっと正解!みたいな雰囲気が欲しい所だよ。
「これがどうかした?」
「いや……少し待ってくれ、考えるから」
なにを!?
待つけど、待つけどさぁ……。
「よし……今ここで服を脱いでくれ」
はぁ!?
島の国は侯爵領から何日もかかるーとか、森の向こう側には隣国が広がってるーとか聞いただけの知識は持っていたけど、こうして地図を見上げてみれば……世界は広いんだな……。
向こう側にある大陸って、また別の国?
島の国っていうけど、どの島のこと?
「こんにちは……国境を、超えるのですか?」
地図を見上げていると、急に肩を叩かれて話しかけられた。
振り返ってみれば、完全に顔まで隠れるフル重装備の剣士の風貌をした人が立っていた。
ここはどう答えれば良いんだろうか……そもそも、どんな感じで話しかけてきたんだろう?フル重装備なんてどこから持ってきたんだろう。
「……王子様、なにやってんの?」
「えっ!?」
え?
声色も変えずに姿を隠しただけで騙せると本気で!?
なにんせよ……またひとつ好感度が落ちてしまうのか。
「国境は超えないよ。地図を見てただけ。じゃあね」
「待て。話しがある……こっちだ」
手を引かれて酒場を出て、向かった場所はなんの変哲もない路地裏だった。
わざわざこの場所に用事があったという感じではなくて、ただただ人のいない場所を選んだ結果といった雰囲気で……。
「話しって?」
フル装備なこととか、今日はトリシュがいないこととか関係する?
後、近いから多少ドキドキするというか……。
いや、相手は男なんだけど姫様だと思ってた時期がある位、その……ね。
「6日前に街で会った時以来だな」
まずは現状確認からだな?
ん?
「6日?3日じゃなくて?」
6日前ってなにかあったっけ?
街で会ったのって花を預かったあの時だよな?それよりも前ってことになると、食堂で肉を食べて髪留めを買ったあの時まで遡ってしまう。
「6日だ。今まで何処にいた?なにをしていた」
仮面をかぶっていて顔が見えないせいか、こうして詰め寄られると普通に尋問を受けている気分になるよ。
いや、受けているのか。
「街で会った後、森に戻ってついさっきまで森の中にいた。魔物の巣をえっと……何個か潰した」
「6日も?」
「森の奥ってあんまり光入ってこないし、寝る時間も疲れたら寝るって感じだったから、正確な時間って分からないんだよ。ただ、魔物って夜になると能力が上がるんだけど、コイツ強いなって魔物が出てきたら夜だなーって」
霧とかも凄いし、魔物の巣を攻略中は洞窟とか洞穴とか崖の下とかだから余計にさ。
「……臭くないけど?汚れてもないし」
確かに普通なら6日も森の中に至ってなれば服が汚れていたり、お風呂に入ってないから多少野性的な臭いを放つことになってるんだろうけど、ほら、俺って浄化魔法使えるし。
「自分に浄化魔法かけてた」
それで、王子様はその6日間なにをしてたんですか……なんて聞いたら、気持ち悪いよな、やっぱり……あっ!
「レッドドラゴンは元気?あいつに王子様になにか聞かれたら答えといてって頼んでたんだけど、なにも聞いてない?」
なにも聞いてないからこそ今があるのか。
だとしたら、6日帰ってこないなーとは感じていたけど、気にならなかったってこと……なら今のこの状況はなんだろう?
街でたまたま見かけたから声をかけたとか?
こんなフル装備で?
「レッドドラゴンを伝言係にするのは止めてくれ……俺はレッドドラゴンと意思の疎通ができない。言葉が分からないんだ」
えっ!?
いや、確かにそうか。
「ゴメン、レッドドラゴン王子様のことご主人って呼んでるし、てっきり喋ってるんだと思ってた」
そういえば伝言を頼んだ時は“伝わるか分からない”って言ってたっけ……王子様が寝てる場合は通じないよなーとかしか考えてなかったわ。
「……で、6日間ずっと森にいたんだな?」
6日ってのにはかなりビックリだけど、街で別れてからさっきまで森にいたのは事実だ。
「うん。換金終わったし、なんなら今から森に戻るけど……」
「少し、いや……今からかなり失礼なことをいうが、実験だと思って許してくれ」
……はい?
「え?なに?失礼なことってなに?」
話しが唐突過ぎると思うけど、多分こっちの話しが本命なんだろうから付き合うよ。
なにを言われるのかは、多少……いや、かなり気にはなるけど。
「……3回その場で回ってワンと言ってくれ」
ん?
これって、俗にいう“3回回ってワン”だよな?よくは分からないけど、やって欲しいならするけど?
クルクルクル
「ワン。これで合ってる?」
「……合ってる……」
合ってるならもっと正解!みたいな雰囲気が欲しい所だよ。
「これがどうかした?」
「いや……少し待ってくれ、考えるから」
なにを!?
待つけど、待つけどさぁ……。
「よし……今ここで服を脱いでくれ」
はぁ!?
10
あなたにおすすめの小説
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
できるかぎり毎日? お話の予告と皆の裏話? のあがるインスタとYouTube
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜
COCO
BL
「ミミルがいないの……?」
涙目でそうつぶやいた僕を見て、
騎士団も、魔法団も、王宮も──全員が本気を出した。
前世は政治家の家に生まれたけど、
愛されるどころか、身体目当ての大人ばかり。
最後はストーカーの担任に殺された。
でも今世では……
「ルカは、僕らの宝物だよ」
目を覚ました僕は、
最強の父と美しい母に全力で愛されていた。
全員190cm超えの“男しかいない世界”で、
小柄で可愛い僕(とウサギのぬいぐるみ)は、今日も溺愛されてます。
魔法全属性持ち? 知識チート? でも一番すごいのは──
「ルカ様、可愛すぎて息ができません……!!」
これは、世界一ちんまい天使が、世界一愛されるお話。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
* ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。
BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)
本編完結、恋愛ルート、トマといっしょに里帰り編、完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
きーちゃんと皆の動画をつくりました!
もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
Youtube @BL小説動画
プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら!
本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
魔王の息子を育てることになった俺の話
お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。
「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」
現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません?
魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL
BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。
BL大賞エントリー中です。
過労死転生した公務員、魔力がないだけで辺境に追放されたので、忠犬騎士と知識チートでざまぁしながら領地経営はじめます
水凪しおん
BL
過労死した元公務員の俺が転生したのは、魔法と剣が存在する異世界の、どうしようもない貧乏貴族の三男だった。
家族からは能無しと蔑まれ、与えられたのは「ゴミ捨て場」と揶揄される荒れ果てた辺境の領地。これは、事実上の追放だ。
絶望的な状況の中、俺に付き従ったのは、無口で無骨だが、その瞳に確かな忠誠を宿す一人の護衛騎士だけだった。
「大丈夫だ。俺がいる」
彼の言葉を胸に、俺は決意する。公務員として培った知識と経験、そして持ち前のしぶとさで、この最悪な領地を最高の楽園に変えてみせると。
これは、不遇な貴族と忠実な騎士が織りなす、絶望の淵から始まる領地改革ファンタジー。そして、固い絆で結ばれた二人が、やがて王国を揺るがす運命に立ち向かう物語。
無能と罵った家族に、見て見ぬふりをした者たちに、最高の「ざまぁ」をお見舞いしてやろうじゃないか!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる