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ジョーと手を繋ぎ、兄さんの後をついて森の中を歩く。
途中で何度か魔物との戦闘にはなったけど、雨で士気が落ちてる魔物なんてのは、鼻歌程度の労力で倒せる。
とは言ってもそれは俺の話しであって、ジョーでは歯が立たないかも知れないから、しっかりと丁寧に退治しました。
「アイン、疲れてない?」
森に入って5回目の戦闘後、兄さんが声をかけて来た。
疲れているように見えてるのだろうか?
「元気だけど?」
特に眠くもないし、兄さんの防御魔法のお陰で雨にも濡れないから体温を奪われることもないし。
「んー……戦ってる時と今と、なにか違うなーって感じることはない?」
どんな質問?
「戦ってる時と戦ってない時じゃあ、違うのが当たり前じゃない?」
確かに今日は鼻歌程度の労力でいけるとか思ってたけど、それでも戦うんだから完全にリラックスモードじゃ流石に危ない。
「確かに、そっか……質問難しいね」
なになに?
戦ってる時と今、違うところ……魔物が目の前にいないから人相が悪くないとか?
いや、自分の人相が良いかどうかなんてのは分からないけど。
じゃあなんだろ……剣を構えてないとか、ジョーの手を握ってるとか?
そんな分かりやすいことなら、兄さんも態々訊ねてこないよな……。
「お前は、あの時の魔法使いか?第15王女は何処だ!無事なんだろうな!?」
あ。
そう言えば、ジョーに兄さんだってことを伝え忘れてた。
でもそれは多分兄さんのタイミングってのがあるんだろうから、黙ってた方が良いよな?
なら、俺にできることはジョーが飛びかかって行かないように手を離さないことかな。
決して手を握っていたい訳では……。
「あ……うん、そうだけど……いや、ビックリした……
兄さんはいきなり大声をあげられたことにかなりビックリした様子だ。
フルプレート着ただけで正体が隠せると思ってたくらいだし、魔法使いであることがバレないと本気で思っていたのだろう。
文武両道である筈の兄さんにしては、結構間抜けな勘違いだけど。
「話しを逸らそうとしても無駄だ!第15王女は……」
「しー……今案内してる所だから、少し大人しく、ね?」
静かにと注意をする兄さんから微量の魔力を感じて、慌ててジョーを見れば喉元を押さえながら口をパクパクさせていた。
呼吸はできている様子だから、多分沈黙の魔法だ。
静かに移動したい中で結構大きめの質問ってのは確かに避けたいのは当然だし、沈黙の魔法が使えるなら言い聞かせるよりも魔法にかけてしまった方が確実だし、手っ取り早い。
だとしても、こんな不安そうな顔を放置するのは嫌だ。
「質問は後にして、まずは大人しくついて行こう」
言ってすぐに頷いてくれたので、俺はゆっくり手のひらをジョーの喉に当てて兄さんの沈黙の魔法を解除した。
「ありがと……」
うん、ちゃんと小声だ。
「え……これ解除するの?」
そしてまた兄さんはビックリしたような表情をしている。
そりゃ解除するわ。
だって大人しくするよって言ってるのに沈黙魔法とか必要ないし、それにジョーは襲われたことがあって、その時に沈黙魔法にかけられたとか言ってたから、声が出ないのは怖いと思うし。
後、他の人の魔力がジョーに影響を及ぼしてるのってさ、多少なりとも気分が良くない。
だから、結構真剣に解除した。
「俺達は大人しくついて行くから、早く案内して」
溜息ひとつついた兄さんは、ハイハイといった風に2回頷いてから歩き出した。
追っ手を気にしているのか、森の中をグネグネと回りながら進んだ先には、ぽっかりと開いた洞窟が見える。
魔物の巣と言われても不自然さがない所を見ると、本当に魔物の巣なのだろう。
こんな所に第15王女が本当にいるのだろうか?
もしかしたら王女様は別の所にいて、俺達だけをここに案内しただけなのかも……。
「カインおかえり……ジョセフ?」
普通にいるのね。
しかも“おかえり”ってことは、ここで暮らしてた感じ?
途中で何度か魔物との戦闘にはなったけど、雨で士気が落ちてる魔物なんてのは、鼻歌程度の労力で倒せる。
とは言ってもそれは俺の話しであって、ジョーでは歯が立たないかも知れないから、しっかりと丁寧に退治しました。
「アイン、疲れてない?」
森に入って5回目の戦闘後、兄さんが声をかけて来た。
疲れているように見えてるのだろうか?
「元気だけど?」
特に眠くもないし、兄さんの防御魔法のお陰で雨にも濡れないから体温を奪われることもないし。
「んー……戦ってる時と今と、なにか違うなーって感じることはない?」
どんな質問?
「戦ってる時と戦ってない時じゃあ、違うのが当たり前じゃない?」
確かに今日は鼻歌程度の労力でいけるとか思ってたけど、それでも戦うんだから完全にリラックスモードじゃ流石に危ない。
「確かに、そっか……質問難しいね」
なになに?
戦ってる時と今、違うところ……魔物が目の前にいないから人相が悪くないとか?
いや、自分の人相が良いかどうかなんてのは分からないけど。
じゃあなんだろ……剣を構えてないとか、ジョーの手を握ってるとか?
そんな分かりやすいことなら、兄さんも態々訊ねてこないよな……。
「お前は、あの時の魔法使いか?第15王女は何処だ!無事なんだろうな!?」
あ。
そう言えば、ジョーに兄さんだってことを伝え忘れてた。
でもそれは多分兄さんのタイミングってのがあるんだろうから、黙ってた方が良いよな?
なら、俺にできることはジョーが飛びかかって行かないように手を離さないことかな。
決して手を握っていたい訳では……。
「あ……うん、そうだけど……いや、ビックリした……
兄さんはいきなり大声をあげられたことにかなりビックリした様子だ。
フルプレート着ただけで正体が隠せると思ってたくらいだし、魔法使いであることがバレないと本気で思っていたのだろう。
文武両道である筈の兄さんにしては、結構間抜けな勘違いだけど。
「話しを逸らそうとしても無駄だ!第15王女は……」
「しー……今案内してる所だから、少し大人しく、ね?」
静かにと注意をする兄さんから微量の魔力を感じて、慌ててジョーを見れば喉元を押さえながら口をパクパクさせていた。
呼吸はできている様子だから、多分沈黙の魔法だ。
静かに移動したい中で結構大きめの質問ってのは確かに避けたいのは当然だし、沈黙の魔法が使えるなら言い聞かせるよりも魔法にかけてしまった方が確実だし、手っ取り早い。
だとしても、こんな不安そうな顔を放置するのは嫌だ。
「質問は後にして、まずは大人しくついて行こう」
言ってすぐに頷いてくれたので、俺はゆっくり手のひらをジョーの喉に当てて兄さんの沈黙の魔法を解除した。
「ありがと……」
うん、ちゃんと小声だ。
「え……これ解除するの?」
そしてまた兄さんはビックリしたような表情をしている。
そりゃ解除するわ。
だって大人しくするよって言ってるのに沈黙魔法とか必要ないし、それにジョーは襲われたことがあって、その時に沈黙魔法にかけられたとか言ってたから、声が出ないのは怖いと思うし。
後、他の人の魔力がジョーに影響を及ぼしてるのってさ、多少なりとも気分が良くない。
だから、結構真剣に解除した。
「俺達は大人しくついて行くから、早く案内して」
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魔物の巣と言われても不自然さがない所を見ると、本当に魔物の巣なのだろう。
こんな所に第15王女が本当にいるのだろうか?
もしかしたら王女様は別の所にいて、俺達だけをここに案内しただけなのかも……。
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