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「俺は空気になっちまったようだ。旦那」
お腹の羽で隠していた立派な脚3本をあらわにして、八咫烏は体が痛いというように、大きな翼をはためかせた。
「俺はりんが無事に帰れるかどうか偵察に行ってくるけど、旦那はどうする?」
「そうだな。俺も久々に鳥居の外に出てみようかと思う」
その言葉を合図に、八咫烏はコクリと頷いて天高く羽ばたいた。
同時に数枚の綺麗な羽がふわふわと落ちてくる。それをセイは掌で受け止めた。
(生え変わりの時期か)
そう思っていれば、いつの間にか八咫烏は赤く色づいた空へ消えてしまっていた。
(もうすぐ冬になる。そうしたらりんと会えなくなるんだろうな)
哀愁 |《あいしゅう》漂う風景にこみ上げてくる虚しさ。
人と会話をした後に訪れるこの寂しさは、今まで感じた事が無かった。
(前よりも………寂しくなるんだな)
セイは薄暗くなった空を見上げて、鳥居の外へ出ようと柱に手をついた時だった
バチッ!!
「!?」
赤い鳥居の柱に触れた途端。指先から体中に電気が流れたみたいに痛みが走った。
「…なんだこれ」
恐れながらも再び触れてみると、同じ痛みがズキッと土地神を襲った。
ジクジクと痛む指先。痛む指先を見つめてみても特に変わりはない。
だが触れた事が原因なのか、指先から胸の中に嫌な空気が流れ込んできた。
この鳥居の内側とは明らかに違う感覚に戸惑いながら眉をひそめる
そういえば八咫烏が前に言っていた。
”まぁ、今の所はそれ程強大ではないからいいものの、後10日もこの状態が続けば、魔物が生まれるぞ”
と
もしかしたらもう、魔物が生まれ始めているのかもしれない。
鈴の音は邪気を払うといわれているが、りんの付けていた鈴の音は濁って聞こえたのだ。
もしかしたら……
頭では理解していたはずだ。けれど本当に起こってしまったら。
そう考えたとき、胸がヒヤリと冷たくなった気がした。
込みあげる思いに、思わず自分の口を手で押さえた。
実感させられた。
”今の俺では誰も救えない”
無力
これほど辛いことはないと思った。
お腹の羽で隠していた立派な脚3本をあらわにして、八咫烏は体が痛いというように、大きな翼をはためかせた。
「俺はりんが無事に帰れるかどうか偵察に行ってくるけど、旦那はどうする?」
「そうだな。俺も久々に鳥居の外に出てみようかと思う」
その言葉を合図に、八咫烏はコクリと頷いて天高く羽ばたいた。
同時に数枚の綺麗な羽がふわふわと落ちてくる。それをセイは掌で受け止めた。
(生え変わりの時期か)
そう思っていれば、いつの間にか八咫烏は赤く色づいた空へ消えてしまっていた。
(もうすぐ冬になる。そうしたらりんと会えなくなるんだろうな)
哀愁 |《あいしゅう》漂う風景にこみ上げてくる虚しさ。
人と会話をした後に訪れるこの寂しさは、今まで感じた事が無かった。
(前よりも………寂しくなるんだな)
セイは薄暗くなった空を見上げて、鳥居の外へ出ようと柱に手をついた時だった
バチッ!!
「!?」
赤い鳥居の柱に触れた途端。指先から体中に電気が流れたみたいに痛みが走った。
「…なんだこれ」
恐れながらも再び触れてみると、同じ痛みがズキッと土地神を襲った。
ジクジクと痛む指先。痛む指先を見つめてみても特に変わりはない。
だが触れた事が原因なのか、指先から胸の中に嫌な空気が流れ込んできた。
この鳥居の内側とは明らかに違う感覚に戸惑いながら眉をひそめる
そういえば八咫烏が前に言っていた。
”まぁ、今の所はそれ程強大ではないからいいものの、後10日もこの状態が続けば、魔物が生まれるぞ”
と
もしかしたらもう、魔物が生まれ始めているのかもしれない。
鈴の音は邪気を払うといわれているが、りんの付けていた鈴の音は濁って聞こえたのだ。
もしかしたら……
頭では理解していたはずだ。けれど本当に起こってしまったら。
そう考えたとき、胸がヒヤリと冷たくなった気がした。
込みあげる思いに、思わず自分の口を手で押さえた。
実感させられた。
”今の俺では誰も救えない”
無力
これほど辛いことはないと思った。
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