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第三十三話:米子大山変態包囲網!幻術と氷の刃、そして星詠みの巫女
しおりを挟む伯耆国米子、霊峰大山の麓に佇む寂れた庵。その入り口に貼られた幾重もの呪符が不気味に揺らめく中、桃色助平太一行の前に、玉藻の前が差し向けた「変態四天王」最後の二人、からくり屋敷の幻術師・夢幻斎と、沈黙の美剣士・月影が立ちはだかった!
「ククク…星の導きか、あるいはただの偶然か…よくぞこの『夢幻の庵』へたどり着いたものよ。じゃが、お前さんたちの旅もここまでじゃ」
庵の屋根の上、翁の面をつけた夢幻斎が、しわがれた声で嘲笑う。その手が振られると同時に、周囲の木々から、ギシギシと音を立てて無数のからくり人形が現れ、一行を取り囲んだ!人形たちは、それぞれ奇妙な武器を手にしている。
「……」
夢幻斎の隣に立つ月影は、一切の言葉を発しない。ただ、その氷のように冷たい瞳で助平太たちを見据え、背負った長刀の柄にそっと手を添える。その姿は、まるで美しい氷の彫像のようだが、全身から放たれる殺気は尋常ではない。
「おおおおおっ!なんと!なんと素晴らしい『お出迎え』でござるか!夢幻斎殿の、その老獪にしてトリッキーな雰囲気!そして、月影殿の、その氷のような美しさと、そこから零れ落ちる『絶対零度のエロス』!この助平太、今、猛烈に…猛烈に…『新たな美の境地』に目覚めそうでござるぞ!」
助平太は、強敵を前にして、いつにも増して目を爛々と輝かせ、筆と墨壺を構える!
「このド変態!敵の強さが分かってんのかゾ!あいつら、お蝶や玄蕃よりもヤバそうだ!」
プルルンが助平太の頭の上で悲鳴を上げる。
「問答無用!」
夢幻斎の合図と共に、からくり人形たちが一斉に襲いかかってきた!その動きはぎこちないが、数が多く、連携も取れている。
「うおおおっ!なんだこのガラクタどもは!」
辰五郎が鳶口を振り回し、からくり人形を次々と打ち砕いていくが、人形は倒しても倒しても湧いてくる。
「キリがない!幻術か!?」カゲリが鋭く叫ぶ。
夢幻斎は、翁の面の下で不気味に笑う。
「ククク…これはほんの挨拶代わりじゃ。本当の『夢』はこれからじゃよ…」
夢幻斎が指を鳴らすと、周囲の景色がぐにゃりと歪み、一行はいつの間にか、助平太の脳内ハーレムを具現化したかのような、悩ましげな美女たちが乱舞する空間に迷い込んでいた!しかも、その美女たちの顔は、どこかお龍や白雪姫、果てはお蝶やマダムお銀にまで似ている!
「おおおおおおおおおおっ!こ、これは…!拙者の『理想の美女図鑑』が、現実世界に顕現したとでもいうのでござるか!?あの豊満なる乳房!あの引き締まったくびれ!あの潤んだ瞳!ああ、この助平太、今、幸せのあまり、卒倒しそうでござる!」
助平太は、鼻血を噴水のように吹き出し、幻影の美女たちに囲まれて恍惚の表情を浮かべている。
「このド変態、また幻術にかかってるゾ!」
「助平太殿!しっかりしろ!」
その時、幻影の美女たちを切り裂くように、一筋の氷のような剣閃が走った!月影である。彼女は、助平太の生み出した(あるいは夢幻斎が増幅した)幻影には一切惑わされず、的確にカゲリと辰五郎の急所を狙ってくる!その剣技は、無駄がなく、冷徹で、そして恐ろしいまでに美しい。
「くっ…速い!そして、この女、全く感情がないのか…!?」
カゲリは、月影の氷のような剣技に苦戦を強いられる。辰五郎も、からくり人形と月影の連携攻撃に防戦一方だ。
一方、お福は、この戦いの喧騒の中にあっても、どこ吹く風であった。
「あらあら~、なんだか賑やかですわねぇ。あのお人形さん、お背中に何か甘いものでも隠してないかしら~?」
お福は、夢幻斎の操るからくり人形の一体に近づき、その背中のゼンマイ仕掛けを、なぜか「美味しそうな渦巻き模様」と勘違いし、指でちょいちょいとつつき始めた。
「ひゃっ!?」
なんと、そのからくり人形は、ゼンマイ部分が弱点(というより、くすぐったいポイント)だったらしく、突然奇妙な音を立ててその場で回転し始め、周囲の人形たちをなぎ倒してしまったのだ!
「な、なんじゃと!?」夢幻斎が驚きの声を上げる。
「おお!お福殿!その無邪気なる指先が、まさかあのような『快感の秘孔』を突くとは!なんと!なんと素晴らしい『偶然のエロス』でござるか!」
助平太は、幻影の美女たちに囲まれながらも、お福の奇跡的な行動に感動している。
その時、固く閉ざされていた庵の扉が、ギィ…と音を立てて内側から開かれた。そして、中からか細くも凛とした声が響いた。
「…おやめなさい。その方々は…この庵の『客人』にございます…」
声と共に、庵の中から姿を現したのは、年の頃は十六、七か、白い巫女装束に身を包み、黒髪を長く垂らした、儚げながらも神秘的な雰囲気を持つ少女であった。その瞳は、まるで夜空の星々を映したかのように深く澄んでいる。彼女こそ、乙姫様が言っていた「星を読む一族の末裔」に違いなかった。
「な、何奴じゃ…?儂の結界を破ったとでも言うのか…?」夢幻斎が狼狽する。
「……」月影も、初めて少女の方に視線を向け、その動きを止めた。
少女は、静かに助平太たちと夢幻斎・月影を見比べると、再び口を開いた。
「あなた方がお求めのものは、この庵にはございません。そして、あなた方が争うべき相手も、ここにはおりませぬ…」
その声には、不思議な力があり、戦いの場の殺伐とした空気を和らげるかのようであった。
「おおおおおっ!なんと!なんと清らかで、そしてミステリアスな巫女様!その穢れを知らぬ瞳!その白い装束から覗く、ほっそりとしたうなじ!そして、その声に含まれる『聖なるお色気』!この助平太、今、猛烈に…猛烈に…『ご神託を賜りたい』という敬虔な気持ちでいっぱいでござるぞ!」
助平太は、新たな美女の登場に、幻術のことなどすっかり忘れ、巫女に向かって跪かんばかりの勢いだ。
夢幻斎と月影は、この予期せぬ「星詠みの巫女」の登場に、一瞬戸惑いの色を見せた。
「…今日のところは、これくらいにしておいてやろう。じゃが、桃色助平太、そして星詠みの小娘…お前たちの命運、いずれこの夢幻斎が終わらせてくれるわ…」
夢幻斎は、不気味な捨て台詞を残すと、月影と共に煙のように姿を消した。からくり人形たちも、糸が切れたようにその場に崩れ落ちた。
嵐が去った庵の前で、助平太は、星詠みの巫女に向き直った。
「いやはや、危ないところを助けられましたぞ、巫女様!つきましては、そのお礼に、拙者のこの『変態エネルギー』で、貴女様の『心の結界』を解きほぐして差し上げたいのでござるが…」
「お前は少し黙ってろだゾ!」
巫女は、助平太の奇行にも動じることなく、静かに微笑むと、一行を庵の中へと招き入れた。
「…ようこそおいでくださいました、星の旅人たちよ。わらわは、この地で星を読み、古の契約を守る者。あなた方が追う『天逆毎の鍵』の秘密、そして玉藻の前の真の目的について、お話しできることがあるやもしれませぬ…」
ついに「星を読む一族の末裔」と接触した助平太一行。庵の奥で語られるであろう衝撃の真実とは?そして、玉藻の前の次なる一手は?米子・大山を舞台にした変態冒険譚は、ますますその深みを増していく!
(第三十三話 了)
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