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第三十五話:大山の知恵問答!変態の真髄と米子に響く鈴の音
しおりを挟む霊峰大山の麓、苔むした鳥居が並ぶ神聖な場所で、桃色助平太一行は、「知恵」を司る白き精霊と対峙していた。精霊の問い、「真の『美』とは、一体何じゃ?」が、静かに一行の心に響く。
助平太は、黄金の瞳を持つ精霊の神々しさと、その問いの深さに、珍しく言葉を詰まらせていた。いつものような軽薄な言葉は、この神聖な空間では不釣り合いだと感じたのだろうか。
「真の…美、でござるか…」
助平太は、しばし沈黙した後、ゆっくりと口を開いた。
「拙者は、これまで数多の『美』を追い求めてまいりました。若き娘の肌の滑らかさ、花魁の妖艶な姿、自然の雄大さ、そして、時には人の醜さの中にさえ、心を惹かれる『何か』を感じてきたように思います」
精霊は、静かに助平太の言葉に耳を傾けている。
「それらは全て、拙者にとって紛れもない『美』でございました。しかし…今、貴殿のその清らかなお姿を前にして、思うのでございます。真の美とは、表面的で、一時的なものではなく…その奥底に宿る、普遍的で、そして調和のとれた『何か』なのではないかと」
助平太は、少し照れたように頬を掻きながら続けた。
「それは、優しさであったり、強さであったり、時には悲しみであったり…そういった、目には見えないけれど、人の心を深く揺さぶる『何か』…そして、それらが互いに尊重し合い、共存している状態…それが、本当の『美』なのではないかと、愚考する次第でございます」
精霊の黄金の瞳が、助平太を深く見つめる。長い沈黙の後、精霊は静かに頷いた。
「…騒がしい魂の奥底にも、わずかながら清らかな光が宿っておるようじゃな。お前の言葉、全てが真実とは言えぬが…その心に、真の美へと近づこうとする萌芽(ほうが)があることは認めてつかわす」
精霊は、次にカゲリに向き直った。「そなたは、忍びの者よな。汝にとっての『美』とは?」
カゲリは、一瞬躊躇したが、静かに答えた。「任務を遂行するための、無駄のない動き。そして、守るべきものを守り抜く強さ…それが、私にとっての美しさです」
精霊は頷き、「辰五郎、火消しの男よ。お前が美しいと思うものは?」
辰五郎は、力強く答えた。「燃え盛る炎を鎮火させた後の、静けさ。そして、助けた人々の笑顔…それが一番美しいもんだと思ってます」
最後に、精霊はプルルンとお福を見た。「小さき者よ、そして、食いしん坊の娘よ。汝らにとっての美とは?」
プルルンは元気に答えた。「みんなが笑ってる顔!美味しいものをみんなで分け合うこと!それと…きれいな景色だゾ!」
お福は、少し考えてから言った。「わたくしにとっての美しさは…やっぱり、美味しいものをたくさん食べられること、かしら?それに、みんなで楽しくおしゃべりしたり、笑ったりする時間も、とっても綺麗だと思いますわ!」
精霊は、それぞれの答えに静かに耳を傾け、再びゆっくりと頷いた。
「汝らの心、それぞれに異なる輝きを持っておるようじゃ。最初の試練は、汝らが共に旅をする資格があるかどうかを試すものであった。それぞれの『美』を理解し、尊重し合う心…それこそが、次の試練へと進むための鍵となるであろう」
精霊は、一行の足元に光の粒子を落とした。すると、霧が晴れ、彼らの目の前に、険しい山道が姿を現した。「次の試練は、『力』を試すもの。大山の険しい道のりを登り、山頂を目指すがよい」
かくして、一行は大山の山頂を目指すことになった。険しい岩場をよじ登り、鬱蒼とした森をかき分け進む中、助平太は相変わらず周囲の自然や、汗を流す仲間たちの姿に「美」を見出し、時折奇妙なスケッチを試みていた。
「おお!カゲリ殿の、岩肌を掴む指先の力強さ!辰五郎殿の、汗に濡れて光る背筋!プルルン殿の、小さな体で険しい道を進む健気さ!そして、お福殿の、息を切らしながらも美味しそうな山菜を見つける時の笑顔!ああ、なんと美しい光景であろうか!」
その時、一行の耳に、遠くから微かに鈴の音が聞こえてきた。それは、どこか懐かしく、そして寂しげな音色だった。
「ん?何の音だ?」辰五郎が足を止める。
「鈴の音…どこかで聞いたことがあるような…」カゲリも耳を澄ませる。
「鈴の音ですか…なんだか、少し寂しい音がしますわねぇ」お福が、首を傾げる。
助平太は、その音色に、なぜか胸騒ぎのようなものを感じていた。「この鈴の音…もしや…」
その鈴の音は、次第に近づいてくる。そして、山道の先に、白い装束を身につけ、杖をついた老いた女性の姿が現れた。その杖には、小さな鈴がいくつも取り付けられており、歩くたびに、寂しげな音を奏でている。老女の顔は深く皺が刻まれ、目はほとんど見えないようだったが、その表情は穏やかで、どこか慈悲深さに満ちていた。
「もしや…あなたが、星を読む一族の…?」カゲリが声をかける。
老女は、鈴の音を小さく響かせながら、ゆっくりと首を横に振った。「わしはただの山姥じゃ。この山に長く住み、道に迷った者を導くのが役目じゃ。お前さんたちは、どこへ向かうのかね?」
助平太は、老女の持つ杖の鈴に、見覚えがあることに気づいた。それは、以前、夢幻斎のからくり人形が持っていた鈴と、どこか似た音色だったのだ。
「老婆…もしかして、お前は…夢幻斎の操る人形なのか!?」助平太が警戒の色を露わにした瞬間、老女の表情が不気味に歪み、その体から黒い妖気が立ち昇った!
「ククク…よくぞ気づいたな、変態侍よ!わしは夢幻斎が遣わした『幻惑の鈴婆(げんわくのすずばば)』!お前たちを幻の道へと誘い込み、永遠にこの山で彷徨わせてくれるわ!」
鈴の音は、不気味な笑い声に変わり、老婆の姿はみるみるうちに、巨大な蜘蛛のような妖怪へと変貌した!大山の二番目の試練は、「力」だけでなく、「幻惑」との戦いでもあったのだ!そして、米子の町では、静かに、しかし確実に、月影が一行の影を追い始めていた…。
(第三十五話 了)
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