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高校2年1学期
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この思いは一生伝わらないのだろう。
教室でギターを片手にもてはやされている男、宇田 旺史という男には一生。
俺、新田 詩樹には不本意ながらも思いを寄せている人間がいる。そいつは俺よりも身長が高く、運動神経が抜群でスポーツ全般なんでもできて、愛想がよくて誰からも好かれる。唯一の欠点は「え、東ってどっち?左?」と意味の分からないことを聞いてくるようなバカであるというところだろうか。
――周りからすればそんなところも可愛いとか思われるんだろうが。
そんなバカこと宇田旺史には高校2年の春、新学期のクラス替えで出会った。
黒板に張り出されていた座席表を確認し自分の席に鞄をかけて着席した。まだ人がまばらな教室で旺史は窓際の自分の席で頬杖をつきながら窓の外を眺めていた。初めて見るやつだなと、やることもなくただぼんやりと旺史を見ていた時だった。突然頬杖をついたまま首だけを動かしこちらを振り返ったと思ったら、旺史はにっこりと笑った。
「はじめまして」
「ども」
気さくに話しかけてくるやつだなと思った。
「名前なんていうんですか?」
「俺?」
「うん」
「新田」
「俺は宇田。下の名前は?」
「詩樹」
「俺は旺史」
「ん。よ、よろしく」
「うん。よろしく」
馴れ馴れしいやつだと思った。
旺史は名乗った後頬杖をやめ、体も俺の方へと向けて座りなおした。
「なんて呼ばれることが多い?」
「あー、にったとか、しきだな。」
「うーん」
うーん?うーんとはなんだと少しいらっとした。
「あ、でも一人だけしっきーって呼ぶ奴はいるな」
「しっきー?じゃ俺もしっきーって呼ぼうかな」
「はい?」
「ん?」
何におどろいているのかわかりませんとでも言いたげなきょとんとしたその表情に再度、は?と声を漏らした。
さすがに距離感の詰め方バグすぎだろ。とか俺たち今日出会ったばっかだよなとか言いたいことは山ほどあったがどれから言えばいいのかわからない。
そんな俺に何を思ったのか旺史はあっと手を打ち合わせてごめんと謝った。
「俺はね、旺史だからおうくんとか呼ばれることが多いよ」
「ん?」
「え?」
「そうじゃなくね?」
「え、違う?何が?」
「お、まえっ」
こいつの思考回路が何もわからなくて、何もわからないことがわかってしまってふつふつと底の方から笑いが込み上げてきた。
我慢することなく声をあげて笑えば今度はえぇ?と旺史が困惑しているのが伝わってくる。あぁーバカ面白い。こいつは面白い。そう、心から思った。
「じゃ、おうくんな。」
「うん。よろしくねしっきー」
「ん。」
こんなにも、いとも簡単に、俺の心の中に入ってきたやつは初めてだった。
クールで寡黙な人。それが俺が他人からもらう評価だった。普通に接しているだろ、ちゃんと返答してるだろ、そう思うのに周りは勝手に俺をおもんぱかり行動する。意味が分からない。でも、別に俺もそれでよかった。関係のない人間にどう思われようと好きにすればいい。そんな人間関係を構築していれば自然と付き合いのある人間も限られていきメッセージアプリの友達欄は数えるのに片手で事足りるほどだった。
そんな希薄な俺の友達欄の中に旺史という人間が登録された。
何もしらない旺史はやったーありがとうと喜んで何、送ってやろうかな~とメッセージアプリに初めて送るスタンプを探し始めた。
なんでだよ。別に今一緒にいんだから送る必要ないだろと笑えば、そうか!次の機会にとっとこ~とへらへら笑った。
心地がいい。きっと俺はこの時からこいつのことが、旺史のことが好きなんだと思う。
教室でギターを片手にもてはやされている男、宇田 旺史という男には一生。
俺、新田 詩樹には不本意ながらも思いを寄せている人間がいる。そいつは俺よりも身長が高く、運動神経が抜群でスポーツ全般なんでもできて、愛想がよくて誰からも好かれる。唯一の欠点は「え、東ってどっち?左?」と意味の分からないことを聞いてくるようなバカであるというところだろうか。
――周りからすればそんなところも可愛いとか思われるんだろうが。
そんなバカこと宇田旺史には高校2年の春、新学期のクラス替えで出会った。
黒板に張り出されていた座席表を確認し自分の席に鞄をかけて着席した。まだ人がまばらな教室で旺史は窓際の自分の席で頬杖をつきながら窓の外を眺めていた。初めて見るやつだなと、やることもなくただぼんやりと旺史を見ていた時だった。突然頬杖をついたまま首だけを動かしこちらを振り返ったと思ったら、旺史はにっこりと笑った。
「はじめまして」
「ども」
気さくに話しかけてくるやつだなと思った。
「名前なんていうんですか?」
「俺?」
「うん」
「新田」
「俺は宇田。下の名前は?」
「詩樹」
「俺は旺史」
「ん。よ、よろしく」
「うん。よろしく」
馴れ馴れしいやつだと思った。
旺史は名乗った後頬杖をやめ、体も俺の方へと向けて座りなおした。
「なんて呼ばれることが多い?」
「あー、にったとか、しきだな。」
「うーん」
うーん?うーんとはなんだと少しいらっとした。
「あ、でも一人だけしっきーって呼ぶ奴はいるな」
「しっきー?じゃ俺もしっきーって呼ぼうかな」
「はい?」
「ん?」
何におどろいているのかわかりませんとでも言いたげなきょとんとしたその表情に再度、は?と声を漏らした。
さすがに距離感の詰め方バグすぎだろ。とか俺たち今日出会ったばっかだよなとか言いたいことは山ほどあったがどれから言えばいいのかわからない。
そんな俺に何を思ったのか旺史はあっと手を打ち合わせてごめんと謝った。
「俺はね、旺史だからおうくんとか呼ばれることが多いよ」
「ん?」
「え?」
「そうじゃなくね?」
「え、違う?何が?」
「お、まえっ」
こいつの思考回路が何もわからなくて、何もわからないことがわかってしまってふつふつと底の方から笑いが込み上げてきた。
我慢することなく声をあげて笑えば今度はえぇ?と旺史が困惑しているのが伝わってくる。あぁーバカ面白い。こいつは面白い。そう、心から思った。
「じゃ、おうくんな。」
「うん。よろしくねしっきー」
「ん。」
こんなにも、いとも簡単に、俺の心の中に入ってきたやつは初めてだった。
クールで寡黙な人。それが俺が他人からもらう評価だった。普通に接しているだろ、ちゃんと返答してるだろ、そう思うのに周りは勝手に俺をおもんぱかり行動する。意味が分からない。でも、別に俺もそれでよかった。関係のない人間にどう思われようと好きにすればいい。そんな人間関係を構築していれば自然と付き合いのある人間も限られていきメッセージアプリの友達欄は数えるのに片手で事足りるほどだった。
そんな希薄な俺の友達欄の中に旺史という人間が登録された。
何もしらない旺史はやったーありがとうと喜んで何、送ってやろうかな~とメッセージアプリに初めて送るスタンプを探し始めた。
なんでだよ。別に今一緒にいんだから送る必要ないだろと笑えば、そうか!次の機会にとっとこ~とへらへら笑った。
心地がいい。きっと俺はこの時からこいつのことが、旺史のことが好きなんだと思う。
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