7 / 13
高校2年生の1学期中ごろ
しおりを挟む
1学期の中ごろ。朝、椅子に座りぼんやり座っている詩樹を見つけた。
この2か月間一緒に過ごしてわかったことの1つは『詩樹くん難しい顔してる~』『何考えてるんだろうね』と遠巻きに噂されているこの時間は、本当に詩樹は何も考えてなくてただぼんやりしているだけだってこと。今日も何も考えてないんだろうな~と思いながら詩樹の隣に座る。
「しっきー、おはよう」
「はよ」
目線だけ俺の方を向いて返事をする。頭回ってなさそうだな~と詩樹を眺めた。
「何、にやにやしてんの」
「ん?頭回ってなさそうだなって思って」
「回ってないよ」
改めて詩樹の口から言われてふっと笑いがこぼれた。いつだったか『俺は朝くそ苦手』って言っていた。『俺は大の得意だけど』と答えたら『だろうな。見ててわかる』とさらっと返された記憶がある。
「じゃぁ、その髪型は適当に後ろに流してるだけ?」
「は?」
「いつも気になってたんだよね」
「なわけないだろ。おうくんはもっとおしゃれについて勉強しろ」
「う、うるさいなぁ。」
「俺のはきっちり整えてるんだよ、毎朝」
そう言って詩樹は髪の毛をちょいちょいと触った。それにならい俺も詩樹の髪の毛に触る。
「なるほど?確かに湿ってるかも」
「湿ってるやめろバカ」
「えぇじゃあこれは何?」
「なんかもっとこう、ウェット感とか言い方あるだろ」
「ウェット感……」
「はいはい、こういうのは早かったですね。おこちゃま」
詩樹はにやっと口角を上げるといつまでも髪に触ったままの俺の手を撥ね退けた。
朝ごはん後に歯を磨きながら鏡で寝癖がついていないか確認するだけの俺にはわからない世界だと感心した。
「しっきーの髪の毛は何?」
「何ってなんだよ」
「こう、ほら何系~とかあるじゃん」
「何系……?」
「伝わらない?ほら俺の髪型はこれとか言うでしょ?」
難しい顔をして俺を眺めている詩樹になんとか身振り手振りで伝える。髪をぐしゃぐしゃにして、これならこれ~とか、逆に整えて俺は七三~とか!そう頑張って伝えているとふっと詩樹が笑った。
「はいはいそういうね。俺はセンターパートのウルフ」
「はい?」
「はい?じゃないから。聞いたのお前だろ」
そう言って机を叩きながら詩樹が笑っている。わかんないんだって~と声を上げて言われた言葉を考えてみる。
でも結局は、センターパートって何。ウルフって狼じゃない?わからない。俺何も知らないわとの答えに行きつくしかなかった。
「おうくんはいつもその髪なんて言って切ってもらってんの」
「え、いつものおばちゃんにお任せでって」
「は、え待って。髪どこで切ってんの?」
「近所のおばちゃんのとこ」
「それ絶対理髪店とかだろ」
「なのかな?しんない」
「お前はさ~」
だって安いんだってと続けて伝えれば詩樹が少しうなだれた。うなだれてから俺の髪に手を伸ばし髪をいじり始める。
されるがまま頭を差し出し、時折首をひねったり、うなずいたりして真剣な顔で俺の髪を整える詩樹を眺めた。
少ししてからよしと声がしてスマホを内カメにして渡してくれる。
「ほらこうすればもっといい感じになるだろ」
「え、すご。イケメンじゃね?」
「うるさ、こいつ」
「ごめんごめん」
「でも絶対こっちの方がいい」
「え、どうすればいいのこれ。絶対に俺はできないよ」
「だろうな。」
「だろうなやめてよ」
「とりあえずお前は美容院予約してシースルーマッシュにしてくださいって言え」
「え、え、待って。メモるからもっかい言って?」
はいはいと少しめんどくさそうに返事をしてから、教えてやるからちょっと待てともう一回説明しながらメッセージアプリでも同じ内容を送ってくれる。
その他にも詩樹が行っている美容院やおすすめのワックスなんかのリンクも送ってくれて『もっとおしゃれに気を遣えよ』なんて笑った。
送られてくる知らない言葉の数々にびっくりしながら嬉しくなった。俺は詩樹に出会って物知りになったと思う。
この2か月間一緒に過ごしてわかったことの1つは『詩樹くん難しい顔してる~』『何考えてるんだろうね』と遠巻きに噂されているこの時間は、本当に詩樹は何も考えてなくてただぼんやりしているだけだってこと。今日も何も考えてないんだろうな~と思いながら詩樹の隣に座る。
「しっきー、おはよう」
「はよ」
目線だけ俺の方を向いて返事をする。頭回ってなさそうだな~と詩樹を眺めた。
「何、にやにやしてんの」
「ん?頭回ってなさそうだなって思って」
「回ってないよ」
改めて詩樹の口から言われてふっと笑いがこぼれた。いつだったか『俺は朝くそ苦手』って言っていた。『俺は大の得意だけど』と答えたら『だろうな。見ててわかる』とさらっと返された記憶がある。
「じゃぁ、その髪型は適当に後ろに流してるだけ?」
「は?」
「いつも気になってたんだよね」
「なわけないだろ。おうくんはもっとおしゃれについて勉強しろ」
「う、うるさいなぁ。」
「俺のはきっちり整えてるんだよ、毎朝」
そう言って詩樹は髪の毛をちょいちょいと触った。それにならい俺も詩樹の髪の毛に触る。
「なるほど?確かに湿ってるかも」
「湿ってるやめろバカ」
「えぇじゃあこれは何?」
「なんかもっとこう、ウェット感とか言い方あるだろ」
「ウェット感……」
「はいはい、こういうのは早かったですね。おこちゃま」
詩樹はにやっと口角を上げるといつまでも髪に触ったままの俺の手を撥ね退けた。
朝ごはん後に歯を磨きながら鏡で寝癖がついていないか確認するだけの俺にはわからない世界だと感心した。
「しっきーの髪の毛は何?」
「何ってなんだよ」
「こう、ほら何系~とかあるじゃん」
「何系……?」
「伝わらない?ほら俺の髪型はこれとか言うでしょ?」
難しい顔をして俺を眺めている詩樹になんとか身振り手振りで伝える。髪をぐしゃぐしゃにして、これならこれ~とか、逆に整えて俺は七三~とか!そう頑張って伝えているとふっと詩樹が笑った。
「はいはいそういうね。俺はセンターパートのウルフ」
「はい?」
「はい?じゃないから。聞いたのお前だろ」
そう言って机を叩きながら詩樹が笑っている。わかんないんだって~と声を上げて言われた言葉を考えてみる。
でも結局は、センターパートって何。ウルフって狼じゃない?わからない。俺何も知らないわとの答えに行きつくしかなかった。
「おうくんはいつもその髪なんて言って切ってもらってんの」
「え、いつものおばちゃんにお任せでって」
「は、え待って。髪どこで切ってんの?」
「近所のおばちゃんのとこ」
「それ絶対理髪店とかだろ」
「なのかな?しんない」
「お前はさ~」
だって安いんだってと続けて伝えれば詩樹が少しうなだれた。うなだれてから俺の髪に手を伸ばし髪をいじり始める。
されるがまま頭を差し出し、時折首をひねったり、うなずいたりして真剣な顔で俺の髪を整える詩樹を眺めた。
少ししてからよしと声がしてスマホを内カメにして渡してくれる。
「ほらこうすればもっといい感じになるだろ」
「え、すご。イケメンじゃね?」
「うるさ、こいつ」
「ごめんごめん」
「でも絶対こっちの方がいい」
「え、どうすればいいのこれ。絶対に俺はできないよ」
「だろうな。」
「だろうなやめてよ」
「とりあえずお前は美容院予約してシースルーマッシュにしてくださいって言え」
「え、え、待って。メモるからもっかい言って?」
はいはいと少しめんどくさそうに返事をしてから、教えてやるからちょっと待てともう一回説明しながらメッセージアプリでも同じ内容を送ってくれる。
その他にも詩樹が行っている美容院やおすすめのワックスなんかのリンクも送ってくれて『もっとおしゃれに気を遣えよ』なんて笑った。
送られてくる知らない言葉の数々にびっくりしながら嬉しくなった。俺は詩樹に出会って物知りになったと思う。
3
あなたにおすすめの小説
ずっと好きだった幼馴染の結婚式に出席する話
子犬一 はぁて
BL
幼馴染の君は、7歳のとき
「大人になったら結婚してね」と僕に言って笑った。
そして──今日、君は僕じゃない別の人と結婚する。
背の低い、寝る時は親指しゃぶりが癖だった君は、いつの間にか皆に好かれて、彼女もできた。
結婚式で花束を渡す時に胸が痛いんだ。
「こいつ、幼馴染なんだ。センスいいだろ?」
誇らしげに笑う君と、その隣で微笑む綺麗な奥さん。
叶わない恋だってわかってる。
それでも、氷砂糖みたいに君との甘い思い出を、僕だけの宝箱にしまって生きていく。
君の幸せを願うことだけが、僕にできる最後の恋だから。
かわいい美形の後輩が、俺にだけメロい
日向汐
BL
過保護なかわいい系美形の後輩。
たまに見せる甘い言動が受けの心を揺する♡
そんなお話。
【攻め】
雨宮千冬(あめみや・ちふゆ)
大学1年。法学部。
淡いピンク髪、甘い顔立ちの砂糖系イケメン。
甘く切ないラブソングが人気の、歌い手「フユ」として匿名活動中。
【受け】
睦月伊織(むつき・いおり)
大学2年。工学部。
黒髪黒目の平凡大学生。ぶっきらぼうな口調と態度で、ちょっとずぼら。恋愛は初心。
幼馴染は吸血鬼
ユーリ
BL
「お前の血を飲ませてくれ。ずーっとな」
幼馴染は吸血鬼である。しかも食事用の血液パックがなくなると首元に噛みついてきてーー
「俺の保存食としての自覚を持て」吸血鬼な攻×ごはん扱いの受「僕だけ、だよね?」幼馴染のふたりは文化祭をきっかけに急接近するーー??
バイト先に元カレがいるんだが、どうすりゃいい?
cheeery
BL
サークルに一人暮らしと、完璧なキャンパスライフが始まった俺……広瀬 陽(ひろせ あき)
ひとつ問題があるとすれば金欠であるということだけ。
「そうだ、バイトをしよう!」
一人暮らしをしている近くのカフェでバイトをすることが決まり、初めてのバイトの日。
教育係として現れたのは……なんと高二の冬に俺を振った元カレ、三上 隼人(みかみ はやと)だった!
なんで元カレがここにいるんだよ!
俺の気持ちを弄んでフッた最低な元カレだったのに……。
「あんまり隙見せない方がいいよ。遠慮なくつけこむから」
「ねぇ、今どっちにドキドキしてる?」
なんか、俺……ずっと心臓が落ち着かねぇ!
もう一度期待したら、また傷つく?
あの時、俺たちが別れた本当の理由は──?
「そろそろ我慢の限界かも」
あなたに捧ぐ愛の花
とうこ
BL
余命宣告を受けた青年はある日、風変わりな花屋に迷い込む。
そこにあったのは「心残りの種」から芽吹き咲いたという見たこともない花々。店主は言う。
「心残りの種を育てて下さい」
遺していく恋人への、彼の最後の希いとは。
Sランク冒険者クロードは吸血鬼に愛される
あさざきゆずき
BL
ダンジョンで僕は死にかけていた。傷口から大量に出血していて、もう助かりそうにない。そんなとき、人間とは思えないほど美しくて強い男性が現れた。
義兄が溺愛してきます
ゆう
BL
桜木恋(16)は交通事故に遭う。
その翌日からだ。
義兄である桜木翔(17)が過保護になったのは。
翔は恋に好意を寄せているのだった。
本人はその事を知るよしもない。
その様子を見ていた友人の凛から告白され、戸惑う恋。
成り行きで惚れさせる宣言をした凛と一週間付き合う(仮)になった。
翔は色々と思う所があり、距離を置こうと彼女(偽)をつくる。
すれ違う思いは交わるのか─────。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる