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高校2年生の初日
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高校2年生の初日。
新しい生活の始まりに胸を高鳴らせいつも以上に早めに教室についてしまった。
まだひとり、ふたりしかいない教室にさすがに早すぎたか~なんて思いながら自分の席を確認する。『う』から始まる苗字なんて窓際だよねと自分の席に着席し、頬杖を付きながら窓の外の登校してくる楽し気な生徒たちを眺めた。
楽しそうに友達と歩いてくる人や緊張した顔をして歩いていく人を観察していれば、後ろから『見て、詩樹くんだ。同じクラスだよ。』『ほんとだ、嬉しい~!』とこそこそと話す女の子たちの声が聞こえてきた。
しきくん、しきくんって誰だっけとなんだか聞き覚えのある名前に首をひねる。それでも何にも思い出せなくて、諦めて視線を上げた時だった。窓にかっこいい男の子が反射して見えた。
『あ、しきくんってそうだ。イケメンくんだ。』とはっと思い出す。黒髪、というには色が薄めのグレーよりな髪色で、整えているのか無造作なのかは俺にはわからないけど、いつも前髪をかき上げていておしゃれさん、それに身長もそこそこ高くて色白で細マッチョ。でもクールで少し近寄りがたい空気を醸し出している人。
これは全部誰か違う人が話しているのを聞いたことで、俺は一度も話したことがなかった。
しきくんという名前と顔しかしらないイケメンくんのことを思い出して、ふと話してみたくなった。どんな人なんだろうって。
頬杖をついたままくるりと顔だけ向きを変え、斜め後ろに座るしきくんに声をかけた。
「はじめまして」
「ども」
しきくんは少し眉間に皺を寄せながら軽く頭を下げた。
「名前なんていうんですか?」
「俺?」
「うん」
「新田」
「俺は宇田。下の名前は?」
「詩樹」
「俺は旺史」
「ん。よ、よろしく」
「うん。よろしく」
こそこそ話では詩樹くんの下の名前しか聞いたことがなくて新田って言うんだ~と初情報に嬉しくなる。
「なんて呼ばれることが多い?」
「あー、にったとか、しきだな。」
「うーん」
始めましてなのに名前呼び捨てはなんだか気恥ずかしいなと少し頭を悩ませる。
「あ、でも一人だけしっきーって呼ぶ奴はいるな」
「しっきー?じゃ俺もしっきーって呼ぼうかな」
「はい?」
「ん?」
語尾を上げた、困惑したような声が聞こえ何かだめだったかなと詩樹くんを見た。また少し眉間にしわを寄せて何か難しい顔をしている。
「あっ」
少し考えてピンときた。
「俺はね、旺史だからおうくんとか呼ばれることが多いよ」
「ん?」
「え?」
「そうじゃなくね?」
「え、違う?何が?」
「お、まえっ」
せっかく詩樹くんが呼び方教えてくれたのに俺も言わなきゃだめだよねと一人納得していると、詩樹くんが突然声を上げて笑い始めた。
いまいち笑いのポイントが分からなくてえぇ?と声を漏らせば、いや、良いわと詩樹くんは笑って垂れてきてしまった髪をかきあげた。
「じゃ、おうくんな。」
「うん。よろしくねしっきー」
「ん。」
なんだ、普通だな。それが詩樹くんに対する印象だった。
やっぱり人の噂なんかあてにならないよなと、自分の椅子をがたがたと詩樹くんの隣まで引っ張っていき連絡先交換しよ~と声をかけた。
え、と少し考えるような表情をした後にいいよとポケットからスマホを取り出しメッセージアプリのQRコードを差し出してくれた。
「やったー!ありがとう」
「ん、こちらこそ」
また新しい友達が増えたな~とメッセージアプリの詩樹くんのプロフィール画面を開いた。
トップ画面は公園で座っている詩樹くんの後ろ姿でホーム画面はボロボロのコンクリートの上に何かギター?ぽい楽器がいい感じに置かれている写真だった。わ、おしゃれ~と少し声を漏らした。
ちらっと詩樹くんを見てみたら同じように画面をじっと見つめていてあ、俺のも見られたかなと少し気恥ずかしくなった。バスケをしていた時に撮られた写真のアイコンにスノボに行ったときに撮った雪山のホーム画面。あとでおしゃれそうなやつにかえよ~なんて考えながら詩樹くんとのまっさらなトーク画面を開く。
「何、送ってやろうかな~」
そう言って初めて詩樹くんに送るスタンプを吟味していれば、詩樹くんが口元に手を当ててふっと笑った。
「なんでだよ。別に今一緒にいんだから送る必要ないだろ」
「そうか!」
その言葉にビビッと体に電流が走った。
確かに。今まで交換するたびに何気なくよろしく~なんていうかわいい兎のスタンプを送っていたが今一緒にいるなら送らなくていいのかと感動する。
クールで近寄りがたいなんて嘘だと思う。色白で俺より低いけど身長も高めだし、顔がいいからちょっとしたことでも圧があるんだと思う、イケメンはいてるだけで圧があるって妹が言ってた。
そのままだらだらと詩樹くんの隣で話続け、気づけば始業のチャイムが鳴っていた。
慌てて椅子を自分の席まで持って帰りながら、詩樹くんとは気が合いそうだなと思った。
なんでなんて聞かれても知らない、ただそう思った。
新しい生活の始まりに胸を高鳴らせいつも以上に早めに教室についてしまった。
まだひとり、ふたりしかいない教室にさすがに早すぎたか~なんて思いながら自分の席を確認する。『う』から始まる苗字なんて窓際だよねと自分の席に着席し、頬杖を付きながら窓の外の登校してくる楽し気な生徒たちを眺めた。
楽しそうに友達と歩いてくる人や緊張した顔をして歩いていく人を観察していれば、後ろから『見て、詩樹くんだ。同じクラスだよ。』『ほんとだ、嬉しい~!』とこそこそと話す女の子たちの声が聞こえてきた。
しきくん、しきくんって誰だっけとなんだか聞き覚えのある名前に首をひねる。それでも何にも思い出せなくて、諦めて視線を上げた時だった。窓にかっこいい男の子が反射して見えた。
『あ、しきくんってそうだ。イケメンくんだ。』とはっと思い出す。黒髪、というには色が薄めのグレーよりな髪色で、整えているのか無造作なのかは俺にはわからないけど、いつも前髪をかき上げていておしゃれさん、それに身長もそこそこ高くて色白で細マッチョ。でもクールで少し近寄りがたい空気を醸し出している人。
これは全部誰か違う人が話しているのを聞いたことで、俺は一度も話したことがなかった。
しきくんという名前と顔しかしらないイケメンくんのことを思い出して、ふと話してみたくなった。どんな人なんだろうって。
頬杖をついたままくるりと顔だけ向きを変え、斜め後ろに座るしきくんに声をかけた。
「はじめまして」
「ども」
しきくんは少し眉間に皺を寄せながら軽く頭を下げた。
「名前なんていうんですか?」
「俺?」
「うん」
「新田」
「俺は宇田。下の名前は?」
「詩樹」
「俺は旺史」
「ん。よ、よろしく」
「うん。よろしく」
こそこそ話では詩樹くんの下の名前しか聞いたことがなくて新田って言うんだ~と初情報に嬉しくなる。
「なんて呼ばれることが多い?」
「あー、にったとか、しきだな。」
「うーん」
始めましてなのに名前呼び捨てはなんだか気恥ずかしいなと少し頭を悩ませる。
「あ、でも一人だけしっきーって呼ぶ奴はいるな」
「しっきー?じゃ俺もしっきーって呼ぼうかな」
「はい?」
「ん?」
語尾を上げた、困惑したような声が聞こえ何かだめだったかなと詩樹くんを見た。また少し眉間にしわを寄せて何か難しい顔をしている。
「あっ」
少し考えてピンときた。
「俺はね、旺史だからおうくんとか呼ばれることが多いよ」
「ん?」
「え?」
「そうじゃなくね?」
「え、違う?何が?」
「お、まえっ」
せっかく詩樹くんが呼び方教えてくれたのに俺も言わなきゃだめだよねと一人納得していると、詩樹くんが突然声を上げて笑い始めた。
いまいち笑いのポイントが分からなくてえぇ?と声を漏らせば、いや、良いわと詩樹くんは笑って垂れてきてしまった髪をかきあげた。
「じゃ、おうくんな。」
「うん。よろしくねしっきー」
「ん。」
なんだ、普通だな。それが詩樹くんに対する印象だった。
やっぱり人の噂なんかあてにならないよなと、自分の椅子をがたがたと詩樹くんの隣まで引っ張っていき連絡先交換しよ~と声をかけた。
え、と少し考えるような表情をした後にいいよとポケットからスマホを取り出しメッセージアプリのQRコードを差し出してくれた。
「やったー!ありがとう」
「ん、こちらこそ」
また新しい友達が増えたな~とメッセージアプリの詩樹くんのプロフィール画面を開いた。
トップ画面は公園で座っている詩樹くんの後ろ姿でホーム画面はボロボロのコンクリートの上に何かギター?ぽい楽器がいい感じに置かれている写真だった。わ、おしゃれ~と少し声を漏らした。
ちらっと詩樹くんを見てみたら同じように画面をじっと見つめていてあ、俺のも見られたかなと少し気恥ずかしくなった。バスケをしていた時に撮られた写真のアイコンにスノボに行ったときに撮った雪山のホーム画面。あとでおしゃれそうなやつにかえよ~なんて考えながら詩樹くんとのまっさらなトーク画面を開く。
「何、送ってやろうかな~」
そう言って初めて詩樹くんに送るスタンプを吟味していれば、詩樹くんが口元に手を当ててふっと笑った。
「なんでだよ。別に今一緒にいんだから送る必要ないだろ」
「そうか!」
その言葉にビビッと体に電流が走った。
確かに。今まで交換するたびに何気なくよろしく~なんていうかわいい兎のスタンプを送っていたが今一緒にいるなら送らなくていいのかと感動する。
クールで近寄りがたいなんて嘘だと思う。色白で俺より低いけど身長も高めだし、顔がいいからちょっとしたことでも圧があるんだと思う、イケメンはいてるだけで圧があるって妹が言ってた。
そのままだらだらと詩樹くんの隣で話続け、気づけば始業のチャイムが鳴っていた。
慌てて椅子を自分の席まで持って帰りながら、詩樹くんとは気が合いそうだなと思った。
なんでなんて聞かれても知らない、ただそう思った。
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