1 / 58
序章
序章①
しおりを挟む
はぁ……はぁ……という自分の呼吸の音がずっと聞こえていた。
息も苦しくて、高熱で頭は朦朧としていて、うっすらとお祖母様の『蓮花、負けてはいけない』という声を聞いたような気がして、その手が触れた時、私は身体が急に軽くなって楽になったのを感じたのだった。
夢を見ていた。
ふわりと軽くなった蓮花は鳥になっていた。自分でその姿を見ることはできなかったが、鳥だと言うことは分かった。生えている羽を大きく羽ばたかせると、ふわりと空に舞い上がることができる。
さっきまでの苦しさはまるで嘘のようだった。
鳥となった蓮花は風に乗ってくるりと村を回ると、そのまま外を見る。
見たこともないような山や川がずっと先まで連なっていた。わくわくとその胸が高鳴る。
──これならば、どこにでも羽ばたいて行けるのかも……! 出たことのない村の外へでも!
蓮花の村は田舎にあるのだけれど、ある程度成長すると、村に残る人と村を出てゆく人がいる。村を出ていった人はもう二度と村に帰ってくることはない。
だから蓮花は村の外がどうなっているのか知らない。けれど外がどうなっているのかは、とても興味がある。
一歩でも村を出たものは二度と足を踏み入れることは出来ないという厳しい掟があるから、蓮花は興味があっても村を出ることはできなかった。
一度村を出てしまうと、村を見つけることは出来ないらしい。
とても不思議なことだけれど。でも、帰ってきた人はいないから、本当のことなんだろう。
けれどこの鳥の姿ならば、村の外を見ることができる!
好奇心旺盛な蓮花は翼を大きく動かした。
ふわりと風が吹いてくる。風はまるで蓮花に「行きなさい」というように村の外へと導いているように感じた。
蓮花はその風に乗って、生まれて初めて村の外を目指して羽ばたいていくのだった。
村の外は大きな森もあったし、大きな建物もあった。
村と同じような集落もあり、そして焼けた野原も……。焼けた野原を過ぎると、たくさんの人が折り重なって倒れているのが見えた。どれも動かない。
そっと近寄ってみたら、それは息をしていなくて、びっくりして蓮花はまた飛び立った。
蓮花は生きていない人……死んだ人をあんなに近くで見たのは初めてで、胸がドキドキとした。
焼けた野原も死んだ人も、お祖母様が言った通り、外の世界はとても怖い。
──もう帰ろう。
そう思った時、ピイッ! と強い鳴き声がした。鳥の姿のまま、蓮花はその鳴き声の方を振り返る。
五色の美しい羽、黄金の長い尾を持つその鳥は、もう一度蓮花を呼ぶようにピイッ! と強く鳴いて力強く羽ばたく。
──鳳だわ……。
それは鳳凰の雄である鳳だった。
蓮花は惹かれるようにして、その美しい鳥を追う。気づいたら幾重にも連なる屋根の上を飛んでいた。だいぶ街の方まで来てしまったようだ。鳳はその建物の一つの上にふわりと降りる。
導かれるように蓮花もその建物の屋根に降り立った。
鳳はちらりと蓮花を見て、建物の中にすうっと吸い込まれる。
それと同時に蓮花がいるのは建物の屋根のはずなのに不思議なことだが、建物の中を見ることができた。
部屋の中は端に寝台があり、その上には男性が一人寝ていて苦しそうな呼吸を繰り返していた。先ほどの鳳は男性の枕元で心配そうに首を傾げている。
中に数人の人がいて、一人の高貴そうな人の枕元で先ほどの鳳が心配げに首を傾げている。
鳥の蓮花はその鳳の隣に降り立ち、そっと見上げた。
息も苦しくて、高熱で頭は朦朧としていて、うっすらとお祖母様の『蓮花、負けてはいけない』という声を聞いたような気がして、その手が触れた時、私は身体が急に軽くなって楽になったのを感じたのだった。
夢を見ていた。
ふわりと軽くなった蓮花は鳥になっていた。自分でその姿を見ることはできなかったが、鳥だと言うことは分かった。生えている羽を大きく羽ばたかせると、ふわりと空に舞い上がることができる。
さっきまでの苦しさはまるで嘘のようだった。
鳥となった蓮花は風に乗ってくるりと村を回ると、そのまま外を見る。
見たこともないような山や川がずっと先まで連なっていた。わくわくとその胸が高鳴る。
──これならば、どこにでも羽ばたいて行けるのかも……! 出たことのない村の外へでも!
蓮花の村は田舎にあるのだけれど、ある程度成長すると、村に残る人と村を出てゆく人がいる。村を出ていった人はもう二度と村に帰ってくることはない。
だから蓮花は村の外がどうなっているのか知らない。けれど外がどうなっているのかは、とても興味がある。
一歩でも村を出たものは二度と足を踏み入れることは出来ないという厳しい掟があるから、蓮花は興味があっても村を出ることはできなかった。
一度村を出てしまうと、村を見つけることは出来ないらしい。
とても不思議なことだけれど。でも、帰ってきた人はいないから、本当のことなんだろう。
けれどこの鳥の姿ならば、村の外を見ることができる!
好奇心旺盛な蓮花は翼を大きく動かした。
ふわりと風が吹いてくる。風はまるで蓮花に「行きなさい」というように村の外へと導いているように感じた。
蓮花はその風に乗って、生まれて初めて村の外を目指して羽ばたいていくのだった。
村の外は大きな森もあったし、大きな建物もあった。
村と同じような集落もあり、そして焼けた野原も……。焼けた野原を過ぎると、たくさんの人が折り重なって倒れているのが見えた。どれも動かない。
そっと近寄ってみたら、それは息をしていなくて、びっくりして蓮花はまた飛び立った。
蓮花は生きていない人……死んだ人をあんなに近くで見たのは初めてで、胸がドキドキとした。
焼けた野原も死んだ人も、お祖母様が言った通り、外の世界はとても怖い。
──もう帰ろう。
そう思った時、ピイッ! と強い鳴き声がした。鳥の姿のまま、蓮花はその鳴き声の方を振り返る。
五色の美しい羽、黄金の長い尾を持つその鳥は、もう一度蓮花を呼ぶようにピイッ! と強く鳴いて力強く羽ばたく。
──鳳だわ……。
それは鳳凰の雄である鳳だった。
蓮花は惹かれるようにして、その美しい鳥を追う。気づいたら幾重にも連なる屋根の上を飛んでいた。だいぶ街の方まで来てしまったようだ。鳳はその建物の一つの上にふわりと降りる。
導かれるように蓮花もその建物の屋根に降り立った。
鳳はちらりと蓮花を見て、建物の中にすうっと吸い込まれる。
それと同時に蓮花がいるのは建物の屋根のはずなのに不思議なことだが、建物の中を見ることができた。
部屋の中は端に寝台があり、その上には男性が一人寝ていて苦しそうな呼吸を繰り返していた。先ほどの鳳は男性の枕元で心配そうに首を傾げている。
中に数人の人がいて、一人の高貴そうな人の枕元で先ほどの鳳が心配げに首を傾げている。
鳥の蓮花はその鳳の隣に降り立ち、そっと見上げた。
159
あなたにおすすめの小説
嫌われたと思って離れたのに
ラム猫
恋愛
私は、婚約者のカイルに嫌われたと思った。冷たくそっけなく、近づくたびに避けられる日々。
距離を置くことを選び、留学の準備も進めて心を落ち着かせようとするけれど——。
結婚したけど夫の不倫が発覚して兄に相談した。相手は親友で2児の母に慰謝料を請求した。
佐藤 美奈
恋愛
伯爵令嬢のアメリアは幼馴染のジェームズと結婚して公爵夫人になった。
結婚して半年が経過したよく晴れたある日、アメリアはジェームズとのすれ違いの生活に悩んでいた。そんな時、机の脇に置き忘れたような手紙を発見して中身を確かめた。
アメリアは手紙を読んで衝撃を受けた。夫のジェームズは不倫をしていた。しかも相手はアメリアの親しい友人のエリー。彼女は既婚者で2児の母でもある。ジェームズの不倫相手は他にもいました。
アメリアは信頼する兄のニコラスの元を訪ね相談して意見を求めた。
異世界転移した私と極光竜(オーロラドラゴン)の秘宝
饕餮
恋愛
その日、体調を崩して会社を早退した私は、病院から帰ってくると自宅マンションで父と兄に遭遇した。
話があるというので中へと通し、彼らの話を聞いていた時だった。建物が揺れ、室内が突然光ったのだ。
混乱しているうちに身体が浮かびあがり、気づいたときには森の中にいて……。
そこで出会った人たちに保護されたけれど、彼が大事にしていた髪飾りが飛んできて私の髪にくっつくとなぜかそれが溶けて髪の色が変わっちゃったからさあ大変!
どうなっちゃうの?!
異世界トリップしたヒロインと彼女を拾ったヒーローの恋愛と、彼女の父と兄との家族再生のお話。
★掲載しているファンアートは黒杉くろん様からいただいたもので、くろんさんの許可を得て掲載しています。
★サブタイトルの後ろに★がついているものは、いただいたファンアートをページの最後に載せています。
★カクヨム、ツギクルにも掲載しています。
三年の想いは小瓶の中に
月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。
※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。
【完結】甘やかな聖獣たちは、聖女様がとろけるようにキスをする
楠結衣
恋愛
女子大生の花恋は、いつものように大学に向かう途中、季節外れの鯉のぼりと共に異世界に聖女として召喚される。
ところが花恋を召喚した王様や黒ローブの集団に偽聖女と言われて知らない森に放り出されてしまう。
涙がこぼれてしまうと鯉のぼりがなぜか執事の格好をした三人組みの聖獣に変わり、元の世界に戻るために、一日三回のキスが必要だと言いだして……。
女子大生の花恋と甘やかな聖獣たちが、いちゃいちゃほのぼの逆ハーレムをしながら元の世界に戻るためにちょこっと冒険するおはなし。
◇表紙イラスト/知さま
◇鯉のぼりについては諸説あります。
◇小説家になろうさまでも連載しています。
婚約者の幼馴染って、つまりは赤の他人でしょう?そんなにその人が大切なら、自分のお金で養えよ。貴方との婚約、破棄してあげるから、他
猿喰 森繁
恋愛
完結した短編まとめました。
大体1万文字以内なので、空いた時間に気楽に読んでもらえると嬉しいです。
あっ、追放されちゃった…。
satomi
恋愛
ガイダール侯爵家の長女であるパールは精霊の話を聞くことができる。がそのことは誰にも話してはいない。亡き母との約束。
母が亡くなって喪も明けないうちに義母を父は連れてきた。義妹付きで。義妹はパールのものをなんでも欲しがった。事前に精霊の話を聞いていたパールは対処なりをできていたけれど、これは…。
ついにウラルはパールの婚約者である王太子を横取りした。
そのことについては王太子は特に魅力のある人ではないし、なんにも感じなかったのですが、王宮内でも噂になり、家の恥だと、家まで追い出されてしまったのです。
精霊さんのアドバイスによりブルハング帝国へと行ったパールですが…。
森に捨てられた令嬢、本当の幸せを見つけました。
玖保ひかる
恋愛
[完結]
北の大国ナバランドの貴族、ヴァンダーウォール伯爵家の令嬢アリステルは、継母に冷遇され一人別棟で生活していた。
ある日、継母から仲直りをしたいとお茶会に誘われ、勧められたお茶を口にしたところ意識を失ってしまう。
アリステルが目を覚ましたのは、魔の森と人々が恐れる深い森の中。
森に捨てられてしまったのだ。
南の隣国を目指して歩き出したアリステル。腕利きの冒険者レオンと出会い、新天地での新しい人生を始めるのだが…。
苦難を乗り越えて、愛する人と本当の幸せを見つける物語。
※小説家になろうで公開した作品を改編した物です。
※完結しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる