輝く月は天の花を溺愛する

如月 そら

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第十二章 書簡

第十二章④

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「気持ち、ですか?」
「そう言われたら、桜綾が私をどう思っているかも非常に気になってしまった。それで、お互いの思いについてゆっくり話した」

 醒雪と桜綾が話した内容はとても気になるが、それについて兄は詳しく話す気はないようだ。
 また煌月も深く聞き出すつもりはなかった。それはきっと醒雪と桜綾だけが分かればいいことなのだろう。

「話したらどうなったんですか?」
「より深く桜綾のことが知れて、さらに愛おしく感じるようになったよ」

 ふわりと笑う醒雪は今まで見たことがないほどに甘やかで幸せそうだった。
「それは……よかったです」

 いずれ国の父と母になるふたりだ。仲良く幸せであってくれたらそれほど喜ばしいことはない。

 なのに煌月の胸に浮かぶのは蓮花だけなのだ。
(蓮花、蓮花……君に会いたい。ただひたすらに君に会いたい。声を聞いて、いつもみたいに自由に振る舞う君が見たい)

「いずれにせよ、蓮花は帰ってくるのだな」
 醒雪の声にハッと煌月は顔をあげる。
「はい。あの書簡には偽りはないと感じました」

「今後についても検討しないとならないだろうな。帰ってきたら、早々に結婚するといい。蓮花には後宮も合わないだろうし。桜綾が寂しくなるだろうが……」

「桜綾さまのことはきっといつまでも、尊敬申し上げていると思いますよ」
「桜綾も歳の近い同性と仲良くできる機会は少ない。今後もよく仕えてほしい」

「もちろんです。きっと蓮花もそのつもりでしょう」
 いつも芙蓉宮で姉妹のように仲睦まじくしていた姿を煌月は思い出していた。とても微笑ましい光景だ。

 煌月は表情を引き締めた。
「赫州国は丸腰とは言っていますが、かといってそれを全て信じることはできない。こちらは手勢を引き連れて受け渡しに向かうつもりです」
「うん。そのほうが良いだろう」

 これで王太子の了解はとれた。宮廷で何かあっても醒雪が対応してくれるはずだ。
「しばしの留守をお許しください」
「許す」

「失礼いたします」
 きびすを返した煌月が紅陵府に引き返すと、劉は手勢と共に出立の準備を終えていた。
「お帰りなさいませ、煌月さま! いつでも出立できます」
「分かった」
 いつも使っている鎧を身にまとって、門で合流した煌月は国境に向かったのだった。


 手に矢を受け、一瞬引いたことを後悔した。まさか、その瞬間に蓮花が攫われるとは思ってもいなかったのだから!

 カッと頭に血が上って赫州国の首長の喉首に刀を突きつけると、ものすごい力で劉に引き止められた。
 戦のどんなときでも冷静さを欠くことはないと自認していたのに、ありえないほどに動揺したのだ。

 しかし、当の首長も呆然としているのを見て、刀を収める。
(まさかこいつ、本当に何も知らないのか?)

「こんなことに……なるとは、蓮花!」
 首長も心から悔やんでいるように見える。
「首長」
 声を掛けると野性的な雰囲気の首長は、煌月の方へ嫌そうに顔を向ける。

「本当に嫌味なほどにいい男だな、あんたは。蓮花は顔で選んでいないと言ったが疑わしい。済まない、取り乱した。覇玄でいい」
 それは書簡を送ってきたものの名前だった。

「覇玄どの、一体どういうことだろうか……」
「分からない。けど、ここで蓮花を受け渡すことがどこかに漏れていた。それも蓮花を欲しがっているものに」

 漏れるはずのないことが漏れている。
 どこかで聞いた話だった。

「芙蓉宮……」
 攫われるはずのない場所から姿を消した蓮花。そして今回も漏れるはずのない場所から攫われた。

「このままには、しない」
「微力だが赫州国はこの件に関しては協力する」
 一体、蓮花は赫州国でどのような経験を積んだのだろう。
(一体どうすれば、この二国がこのようになるんだ)

「ぜひお願いしたい」
 煌月が手を差し出すと、信じられないような力で覇玄に握られた。

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