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15.ま、まさか加齢sy……

ま、まさか加齢sy……②

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 すやすやと美冬は寝てしまっている。
 起こすのも忍びない。

 ゆっくりと身体を起こすと美冬の胸元のファスナーが開いていたので、慌てて閉める。

──寝ぼけていたとはいえ……なにを……。

「俺のことを好きになればいいのに」
 もう寝れないと思ったから、そのまま起きてジョギングに出たあと、会社に行く準備をして、食事まで作ってしまった。

 寝室に戻ると、美冬は今度は布団をきゅうっと抱いている。
「美冬……」
 そう呼ぶと美冬はハッとしたように目を開けて、ぱちぱちっと瞬きする。

「俺は今日はちょっと早めに行かなくてはいけないから会社に出るけれど大丈夫か?」
「あ……うん。起きる」

 そう返事をして美冬は身体を起こしているが、ゆらゆらしていた。
「大丈夫か?」
 もう一度大丈夫か声を掛ける。

「うん。あ、食事は?」
「食べた。気にするな。作って置いてあるから、美冬も良かったら食べていけ」
「あのっ……祐輔、私……」
 美冬はなにか言いたげだった。

 槙野は腕時計を見る。
「悪いが美冬、急いでいる。なにか伝えたいことがあるなら、メールをくれ。都合のいい時間を連絡してくれたら折り返す」

 時間がないのも本当だけれど、今は早朝のことを咎められたら、立ち直れない。
 黙って触れてしまったことは、悪かったとは思っているのだ。

「分かったわ」
 槙野は美冬の頭にぽん、と手を触れて頬を撫でた。妙に素直な真っ直ぐな表情でこちらをみてくるのに我慢ができなくて、少しだけ躊躇って美冬の額に軽くキスをした。

「いってくる」
「いってらっしゃい」
 今度は拒否されなくて、槙野は少し安心したのだった。



 槙野は仕事のスピードが早いことには自信がある。
 午前中の仕事をさっさと終わらせて、決裁ついでに片倉のいる社長室を訪れていた。

 そういうことは結構あるのだ。
 美冬の会社のアイデア出しをしていた時アッサリと、そんなに金のかかることできるわけないだろと笑顔で切って捨てられたのもこの部屋だ。

「俺は判断力には自信がある」
 槙野は片倉に向かってキッパリとそう言った。

「知っているよ。そこをとても信頼しているんだしね」
 片倉から早く仕事に戻れというオーラを感じるが、敢えてそれを無視して、槙野は社長室の椅子に座っていた。

「どう? 椿さんと一緒に暮らし始めたんだよね?」
 片倉にしてみれば、近況をさらっと聞いたつもりだったのだ。

 モテにモテていた槙野ではあったがそこは割とサッパリしていてデートをするような女性はいたようだったけれど、一緒に暮らすような人はいなかった。

 おそらく椿美冬が初めてのはずだ。
 片倉と槙野は単にCEOと副社長という間柄だけではない。

 この会社『グローバル・キャピタル・パートナーズ』を一緒に立ち上げた、高校からの付き合いのある親友でもあるのだ。
 だからお互いの交友関係もよく分かっているし、そこは詳しい。

 軽く近況を尋ねただけなのに、槙野から暗いオーラが出ている。ずん……と落ち込んでいた。
「拒否られた……」
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