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15.ま、まさか加齢sy……

ま、まさか加齢sy……⑤

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「本当に仲がいいよね? あれで一時期は政略結婚なんて言われてたなんて思えない」

 ねっ?と美冬に首を傾げてくるのは、タキシードジャケットを着こなした、なかなかに顔立ちの整った男性だ。

「政略結婚?」
「そう。そんな風に言われてたよ」
 美冬に話しかけてきた男性はにこにこしている。悪い人ではなさそうだが、見知らぬ人である。

「え……っと、すみません、どちら様でしょう。ご挨拶していたらごめんなさい」
「いえ。初めましてです。でもうちの商品は取り扱って頂いていると思う。株式会社ソイエの代表をしています。国東くにさきと申します」

 そう言って彼は美冬に名刺を渡す。
 株式会社ソイエは繊維の専門商社で、確かにミルヴェイユも取引があった。

 美冬もバッグから名刺を出して渡した。
「お世話になっております」
「美冬さん! 僕、実はお祖父さんに良くして頂いているんです」

「祖父のお知り合いでしたか」
「はい。美冬さんがミルヴェイユを継がれる際に紹介してほしいとお願いしていたんですが、行いが悪かったのか、会わせるか! と笑われてしまった」

 祖父らしい。
 美冬はくすりと笑う。

「こんなに可愛い方だったのなら、紹介して欲しかったのに。ご婚約されたとニュースリリース見ました。おめでとうございます」
「ありがとうございます」
 そう言って美冬は目の前の国東に頭を下げた。

「お相手がグローバル・キャピタル・パートナーズの槙野さんではとても敵わないからな。片倉社長はまた別格ですけど、僕らみたいな若手の経営者でアクティブな人は実は限られていて、非常に狭い世界なんです。その中でも槙野さんはおモテになるし、有名ですからね」
「そうなんですね」

 そんな気はしたけど。
 一見迫力のある見た目だけれど、顔立ちも整っていなくはないのだし、押しの強い感じが好み、という人にはたまらないだろう。

「噂をすれば、だな」
 槙野が足早に会場に入ってくるのが見えたのだ。
 美冬を見つけて、槙野が大股で近づいてくる。

「国東さん」
 その声は槙野の声だ。

 美冬はあれ?と思う。
 その声を聞いて、すごくすごく安心してしまったのだ。
(私、心細かったんだな)

「ご挨拶していただけですよ。お一人でいらっしゃったし、ほら、今までは椿さんが表に出そうとなさらなかったから。ご婚約、おめでとうございます。そんな怖い顔しないでくださいよ」

「してない。悪かったな……美冬、遅くなってしまっ……」

「槙野様っ!」
 言葉が途中で止まったのは槙野の視界に大福……もとい、木崎綾奈が入ってきたからだ。周りを蹴散らしつつものすごい勢いで近寄ってくる。

「どういうことですのっ。婚約……婚約って」
「え?」

 美冬が槙野の方を見た。国東も面白そうな顔で槙野の方を見ている。

 ──ま、待て違うっ!濡れ衣だ!!



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