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22.狼の番(つがい)とは
狼の番(つがい)とは②
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挨拶を済ませると祖父がどうぞと勧めてくれたので、外の庭が見える席に座らせてもらった。
「ホント。素敵ね」
「この部屋はなかなか使えないからな」
そんな風に会話を交わしている槙野と美冬を祖父はにこにこしながら見ている。
美冬は祖父に笑顔を向けて首を傾げた。
「お祖父ちゃん、なかなか行けなくてごめんなさい。体調はどう?」
「もう完全だな。先週はゴルフもラウンドしてきたし」
美冬はそれを聞いて呆れた顔を向ける。
一体何が原因で入院をしたと思っているのか。
「ケガしないでよ」
「懲りたからな。それにゴルフをやるのには完全とはいかなくて、OBが出るほどの飛距離は出てないからなぁ」
「もー、なに言ってんのよ」
このまま美冬と話していても怒られるだけだと思ったのか、祖父は槙野に話の水を向ける。
「祐輔くんも今度行こう。君は凄そうだな」
そう言って祖父はゴルフの名門コースの名前を出した。
そのコースの名前を聞いて、槙野も嬉しそうな表情を浮かべている。
「ああ、いいですね。ご招待がある時くらいしか行けないコースだ」
「よし。招待してやろう。いつがいい?」
祖父が槙野から聞いた日にちを楽しそうにメモしているのを見て、うるさく言うのは止め、目の前の食事に集中することにした美冬なのだった。
食事が落ち着いてきた頃合である。
「で、何かあったらしいな?」
祖父の口元は微笑んではいたけれどその表情は鋭い。
「あ……うん。社内で……」
「うん。顧問弁護士からも話を聞いてはいる。叱ってやるなよ? 昔からの付き合いなんだ。それに美冬が頑張っていた企画が危うかったこともあって、経営に関わる可能性があると連絡してきたんだ」
「そんな、叱るだなんてしないわ」
ふむ、と祖父は腕を組んでいる。
「まあ、祐輔くんがいるから心配はしていなかったがな」
美冬は隣に座っている槙野を見た。
槙野は普通に澄ました顔で、お猪口を口元に運んでいた。
到着してお勧めの酒があるからと祖父がすすめるので飲んでいるのだ。
美冬は止めようとしたが、大丈夫だと笑顔を返された経緯がある。
槙野の事なので、任せておけばいいか……と何も言わなかった美冬だ。
槙野とは時折こういうことがある。
特に何も言わなくても何となく伝わっているような感じだ。
もしかしたら、ちょっとは気が合うのかもしれない。
(いやもう、すっごく合う! とかじゃなくて、ちょっとは! 他の人よりは!)
「美冬? どうした?」
「な、なんでもないっ!」
祖父はそんな槙野と美冬の様子をじっと見ていた。
「私も実のところは今回は祐輔に助けられたって思ってるわ」
「なんにもしてない。するべきことをしただけだ」
「そーゆーの自然に言えちゃうところが祐輔のすごいところだと思ってるんだけど」
「それは褒めてる? だとしたら、普通に嬉しいな」
「褒めてます。いいところはいいところだもん」
「結婚については……」
「ホント。素敵ね」
「この部屋はなかなか使えないからな」
そんな風に会話を交わしている槙野と美冬を祖父はにこにこしながら見ている。
美冬は祖父に笑顔を向けて首を傾げた。
「お祖父ちゃん、なかなか行けなくてごめんなさい。体調はどう?」
「もう完全だな。先週はゴルフもラウンドしてきたし」
美冬はそれを聞いて呆れた顔を向ける。
一体何が原因で入院をしたと思っているのか。
「ケガしないでよ」
「懲りたからな。それにゴルフをやるのには完全とはいかなくて、OBが出るほどの飛距離は出てないからなぁ」
「もー、なに言ってんのよ」
このまま美冬と話していても怒られるだけだと思ったのか、祖父は槙野に話の水を向ける。
「祐輔くんも今度行こう。君は凄そうだな」
そう言って祖父はゴルフの名門コースの名前を出した。
そのコースの名前を聞いて、槙野も嬉しそうな表情を浮かべている。
「ああ、いいですね。ご招待がある時くらいしか行けないコースだ」
「よし。招待してやろう。いつがいい?」
祖父が槙野から聞いた日にちを楽しそうにメモしているのを見て、うるさく言うのは止め、目の前の食事に集中することにした美冬なのだった。
食事が落ち着いてきた頃合である。
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「あ……うん。社内で……」
「うん。顧問弁護士からも話を聞いてはいる。叱ってやるなよ? 昔からの付き合いなんだ。それに美冬が頑張っていた企画が危うかったこともあって、経営に関わる可能性があると連絡してきたんだ」
「そんな、叱るだなんてしないわ」
ふむ、と祖父は腕を組んでいる。
「まあ、祐輔くんがいるから心配はしていなかったがな」
美冬は隣に座っている槙野を見た。
槙野は普通に澄ました顔で、お猪口を口元に運んでいた。
到着してお勧めの酒があるからと祖父がすすめるので飲んでいるのだ。
美冬は止めようとしたが、大丈夫だと笑顔を返された経緯がある。
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特に何も言わなくても何となく伝わっているような感じだ。
もしかしたら、ちょっとは気が合うのかもしれない。
(いやもう、すっごく合う! とかじゃなくて、ちょっとは! 他の人よりは!)
「美冬? どうした?」
「な、なんでもないっ!」
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「私も実のところは今回は祐輔に助けられたって思ってるわ」
「なんにもしてない。するべきことをしただけだ」
「そーゆーの自然に言えちゃうところが祐輔のすごいところだと思ってるんだけど」
「それは褒めてる? だとしたら、普通に嬉しいな」
「褒めてます。いいところはいいところだもん」
「結婚については……」
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