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第一章 運命がずれた瞬間
4.閉じた世界 *
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二人はほとんど言葉を交わさず、カウンター席を立った。心地よいジャズの残響が背中にまとわりつくように追いかけてくる。
エレベーターホールに向かう廊下は、絨毯が厚すぎて足音すら吸い込まれる。男が先に歩き、晴菜はその半歩後ろを歩いた。距離は近くて、けれど触れてはいけないような、奇妙な緊張が漂っている。
不意に、彼が腕にかけたジャケットのポケットからスマホを取り出した。ディスプレイの青白い光が整った横顔を妖しく照らしていた。
「悪い、ちょっと野暮用」
そう短く告げて、彼はサッと指を滑らせた。メール画面を開き、誰かに向けて短い文面を打ち込んでいる。送信音が小さく鳴った瞬間、男はすぐにディスプレイをロックし、ポケットに戻した。そうして、まるでそんなやりとりなどなかったかのように、晴菜を振り返りもせずエレベーターのボタンを押す。
エレベーターが到着するまでの間、晴菜はエレベーターの横に掲示されているフロア図をぼうっと眺めた。先ほどのバーがあるこの最上階は、結婚式が執り行われるチャペルと、披露宴として使われるバンケットが併設されているらしい。土日になるとあのバーは二次会に使用され、招待客でいっぱいになるのだろうと簡単に想像できた。
無機質な音を立てて扉が開いた。と同時に、こちらを振り返った男が短く問いかけてくる。
「? どうした?」
「……あ、いえ」
晴菜はハッと我に返り、慌ててエレベーターに乗り込んだ。一階下のボタンを押すと、男はふっと小さく息を吐いた。
扉が閉まり、静かに下降を始める。しんと静まった空間の中で機械の低い唸りと二人の呼吸だけが響く。階数を示す数字がゆっくりと移り変わるのを、晴菜は無言で眺めていた。
ポーン、という軽い音が鳴った。独特の浮遊感とともに、エレベーターが目的のフロアに到着する。ドアが開くと正面の鏡張りの壁に、二人の姿が映った。
彼が先に足を踏み出したので、晴菜もその後を追った。二人は終始無言だった。廊下は広く、天井が高い。壁には油絵だろうか、抽象的なアートが飾られている。晴菜がチェックインした階とは違う、別世界のような景色だった。
真っ白なロココ調のデザインのドアを、豪奢な金色のドアノブが彩っている。彼は躊躇いもなくそのドアをカードキーで開いていく。
ギィと音を立てて開かれた部屋の正面には、大きな一枚窓が張り出していた。ゆったりとした白いソファはその向こうに広がる海を見下ろすことができるよう配置されている。テーブルにはまだ開けていないボトルとグラスが置かれていた。
晴菜が思わず吐息を漏らすと、男がにやりと笑った気配が伝わってくる。
――ここ……スイート?
リビング然とした空間の左右には、キッチンとベッドルームがあった。明らかに通常の客室とは違う造りに、大きすぎるベッドフレーム。この客室が最も高いランクのものであることは、晴菜にもすぐにわかった。
男はバッグをソファの上に置き、上着とネクタイをソファの背にかける。その一連の動きを、晴菜はただ眺めていた。
「……ずいぶんと贅沢ですね」
掠れた声で言うと、彼は小さく笑った。
「もう一週間も出張続きなんだ。たまにはな」
そう言って、彼は晴菜に向き直った。その時、彼の瞳の奥に宿る熱が、一瞬で部屋の空気を変えたように感じた。距離は相変わらず近い。
わずかに上から見下ろす角度。逃げ道を塞ぎながらも、触れはしない。その加減が絶妙で、晴菜の喉は乾いた熱でひりついた。
彼はするりと晴菜の腰を抱き寄せ、空いた手で晴菜のおとがいを掬い上げ、口づけた。手馴れたその動きに晴菜は抵抗することも出来ずそのまま受け入れてしまう。
「んっ……」
不意の出来事に声が漏れた。自分でも驚くほど甘い声で、思わず瞼を閉じた。
こじ開けられた唇からぬるりと侵入する粘膜の感覚に晴菜は小さく身じろぎをする。彼は飢えた獣のように何度も角度を変えて舌を絡ませ、縮こまる晴菜の舌をきつく吸いあげた。
「シャワー、行くか?」
わずかに離された唇から問いかけられたその声は、完全に獲物を狙う獣のものだった。腰に回された手のひらに、ゆるりと力が入った。まるで、『否』という返答を待っているかのようだ。逃げる隙など一切与えるつもりのない、確信に満ちた抱き寄せ方だった。
「行きたいって言ったら……行かせてくれるの?」
はなから行かせる気もないだろうに、よくそんなセリフが言えたものだ。晴菜は至近距離にある彼の切れ長の瞳を挑むように見上げる。
晴菜の問いに男は一度だけ喉の奥で笑った。
「さぁ、どうだろうな」
低く落ちた声音は、答えになっていない。その曖昧さは意図的なのだろうと晴菜は察した。挑発に挑発を返したつもりが、あっさり追い詰められている――晴菜は一瞬だけ眉を寄せた。
腰に添えられた手がゆっくりと形を変え、指先が腰のラインを確かめるように滑る。
「どうせ――」
言葉の続きを口にする代わりに、男は空いた手を晴菜のうなじへ回した。わずかに指を差し入れ、晴菜の黒いボブヘアを梳くように撫で上げる。
「お互いにぐちゃぐちゃになるんだ。あとでいいだろ」
低い囁きとともに、首筋を甘噛みされた。軽い痛みと熱が同時に走り、晴菜の脚がふっと揺らぐ。
「っ……あ……」
膝がかすかに震えたのを逃さず、男の手のひらが晴菜の腰を支えた。支える、というより、捕らえるに近い。その確かな感触に、晴菜は抗おうとはしなかった。
男は軽々と晴菜の身体を横抱きにし、隣のベッドルームまで移動した。急激に全身を襲う浮遊感に、晴菜は彼の首筋に腕を回した。
――この人……手馴れてる。
男の腕に抱えられたまま、晴菜はふっと乾いた笑いを漏らす。バーでの誘い方も、口づけも、ベッドへの連れて行き方も。何もかも、手馴れている。
そう思った瞬間、自分でも予想していなかった感情が胸の奥でじわりと膨らんだ。
晴菜の身体を難なく抱える彼の腕はひどく逞しい。ぞわぞわと背筋に言いようのない快感が走る。
キングサイズの天蓋付きベッドは、上質なリネンで仕立てられたリゾートスタイルだ。
男はゆっくりと晴菜をベッドの中央に降ろした。沈み込むマットレスが、逃げ道をさらに奪う。彼がベッドに膝をつくと、ぎしりとスプリングが軋んだ。
「こういうの、慣れてるんですね」
あえて刺すように言ったつもりだった。けれど声は掠れていて、強がりにもならない。
覆い被さる男はほんの一瞬だけ、動きを止めた。その数秒が、じわりと晴菜の鼓動を速める。
「こんなふうに目を逸らさずに見てくる女は、滅多にいない」
彼のしなやかな指が頬から耳の後ろへ滑り、うなじの産毛をそっとなぞる。
その触れ方が、さっきまでの獣じみた勢いと違いすぎて、胸の奥がざわついた。
「だから気になってる……さっきからずっとな」
その言葉の響きに、晴菜の胸がかすかに震えた。彼は晴菜の顎先に触れ、上を向かせた。逃げられないまま視線が絡まる。距離が近すぎて、呼吸が混ざる。
「全部忘れさせてやるから。俺にちゃんと壊されろ」
魅惑的なバリトンが耳朶を撫でる。耳元で落とされた声は、甘さなんて一滴も含んでいなかった。その言葉は、まるで呪いのように熱く、晴菜の胸の奥に深く沈んだ。
「ん……」
小さく落とされた吐息とともに唇が塞がれた。舌先を絡め取る動きは巧みで、全てをどろどろに溶かされてしまいそうだ。思わず手を伸ばして彼のワイシャツの袖を握ると、それに応えるように口づけが深くなった。歯列をなぞり、舌先を吸い上げられ、甘噛みされ、呼吸ごと奪われる。吐息が混じり、唾液が糸を引いて、離れるたびに銀糸が繋がり艶めかしい音が響いた。
「目ぇ開けろ」
唇を合わせた状態で嗄れた声を紡ぐ彼に、晴菜はただただ翻弄されるまま。再び深く口づけられたと同時に、男の左手が、晴菜の前開きワンピースに滑り込む。その指先に迷いはなく、一つ、また一つボタンを外されていく。布地が開いていくたびに、肌が夜気に晒されて、鳥肌が立つ。
あっという間に下着が露わになった。ブラのレースの上からゆっくりと全体を包み込むように手のひらが這っていく。布越しでも伝わる熱を持った指先が、ふっくらとした膨らみの頂点を捉え、軽く円を描くように撫でる。
「っ、ふ……」
思わず身じろぎをすると、男は唇を離した。晴菜の首筋に舌を這わせながら、下へ、下へと降りていく。鎖骨の窪みを舐め、胸の谷間へと熱い息を吹きかける。
肌を甘噛みされるたび、晴菜の下腹部にじわりと熱が生まれていく。ぐっと目を閉じ、じっとりとした手つきに昂る身体をなんとか宥めようと試みる。が、ブラの縁から覗く肌を強く吸い上げられ、チリチリと軽い痛みが走った。
「んんっ……」
晴菜は必死に手の甲で口を押さえた。けれど、何かを押し殺したような、くぐもった声が漏れてしまうのを止められない。
そんな反応に気をよくしたのだろうか、彼は晴菜の背中に手を回し、器用にホックを外した。締め付けが緩み、胸元の拘束感が消えると、彼はふるりとまろびでた双丘に手を滑らせた。その膨らみを掬い上げるように直に揉みしだき、指の腹で先端を摘まんでくりくりと転がしていく。痛みと快感が混ざり合う感覚が晴菜の身体から力を奪う。
「あっ……んっ」
胸の蕾を爪の先で軽く引っ掻かれ、はふ、と晴菜は白い喉を晒して天を仰ぐ。そんな晴菜の反応を彼が見逃すはずもなく、彼の指先が晴菜のくびれをするりと撫でた。
エレベーターホールに向かう廊下は、絨毯が厚すぎて足音すら吸い込まれる。男が先に歩き、晴菜はその半歩後ろを歩いた。距離は近くて、けれど触れてはいけないような、奇妙な緊張が漂っている。
不意に、彼が腕にかけたジャケットのポケットからスマホを取り出した。ディスプレイの青白い光が整った横顔を妖しく照らしていた。
「悪い、ちょっと野暮用」
そう短く告げて、彼はサッと指を滑らせた。メール画面を開き、誰かに向けて短い文面を打ち込んでいる。送信音が小さく鳴った瞬間、男はすぐにディスプレイをロックし、ポケットに戻した。そうして、まるでそんなやりとりなどなかったかのように、晴菜を振り返りもせずエレベーターのボタンを押す。
エレベーターが到着するまでの間、晴菜はエレベーターの横に掲示されているフロア図をぼうっと眺めた。先ほどのバーがあるこの最上階は、結婚式が執り行われるチャペルと、披露宴として使われるバンケットが併設されているらしい。土日になるとあのバーは二次会に使用され、招待客でいっぱいになるのだろうと簡単に想像できた。
無機質な音を立てて扉が開いた。と同時に、こちらを振り返った男が短く問いかけてくる。
「? どうした?」
「……あ、いえ」
晴菜はハッと我に返り、慌ててエレベーターに乗り込んだ。一階下のボタンを押すと、男はふっと小さく息を吐いた。
扉が閉まり、静かに下降を始める。しんと静まった空間の中で機械の低い唸りと二人の呼吸だけが響く。階数を示す数字がゆっくりと移り変わるのを、晴菜は無言で眺めていた。
ポーン、という軽い音が鳴った。独特の浮遊感とともに、エレベーターが目的のフロアに到着する。ドアが開くと正面の鏡張りの壁に、二人の姿が映った。
彼が先に足を踏み出したので、晴菜もその後を追った。二人は終始無言だった。廊下は広く、天井が高い。壁には油絵だろうか、抽象的なアートが飾られている。晴菜がチェックインした階とは違う、別世界のような景色だった。
真っ白なロココ調のデザインのドアを、豪奢な金色のドアノブが彩っている。彼は躊躇いもなくそのドアをカードキーで開いていく。
ギィと音を立てて開かれた部屋の正面には、大きな一枚窓が張り出していた。ゆったりとした白いソファはその向こうに広がる海を見下ろすことができるよう配置されている。テーブルにはまだ開けていないボトルとグラスが置かれていた。
晴菜が思わず吐息を漏らすと、男がにやりと笑った気配が伝わってくる。
――ここ……スイート?
リビング然とした空間の左右には、キッチンとベッドルームがあった。明らかに通常の客室とは違う造りに、大きすぎるベッドフレーム。この客室が最も高いランクのものであることは、晴菜にもすぐにわかった。
男はバッグをソファの上に置き、上着とネクタイをソファの背にかける。その一連の動きを、晴菜はただ眺めていた。
「……ずいぶんと贅沢ですね」
掠れた声で言うと、彼は小さく笑った。
「もう一週間も出張続きなんだ。たまにはな」
そう言って、彼は晴菜に向き直った。その時、彼の瞳の奥に宿る熱が、一瞬で部屋の空気を変えたように感じた。距離は相変わらず近い。
わずかに上から見下ろす角度。逃げ道を塞ぎながらも、触れはしない。その加減が絶妙で、晴菜の喉は乾いた熱でひりついた。
彼はするりと晴菜の腰を抱き寄せ、空いた手で晴菜のおとがいを掬い上げ、口づけた。手馴れたその動きに晴菜は抵抗することも出来ずそのまま受け入れてしまう。
「んっ……」
不意の出来事に声が漏れた。自分でも驚くほど甘い声で、思わず瞼を閉じた。
こじ開けられた唇からぬるりと侵入する粘膜の感覚に晴菜は小さく身じろぎをする。彼は飢えた獣のように何度も角度を変えて舌を絡ませ、縮こまる晴菜の舌をきつく吸いあげた。
「シャワー、行くか?」
わずかに離された唇から問いかけられたその声は、完全に獲物を狙う獣のものだった。腰に回された手のひらに、ゆるりと力が入った。まるで、『否』という返答を待っているかのようだ。逃げる隙など一切与えるつもりのない、確信に満ちた抱き寄せ方だった。
「行きたいって言ったら……行かせてくれるの?」
はなから行かせる気もないだろうに、よくそんなセリフが言えたものだ。晴菜は至近距離にある彼の切れ長の瞳を挑むように見上げる。
晴菜の問いに男は一度だけ喉の奥で笑った。
「さぁ、どうだろうな」
低く落ちた声音は、答えになっていない。その曖昧さは意図的なのだろうと晴菜は察した。挑発に挑発を返したつもりが、あっさり追い詰められている――晴菜は一瞬だけ眉を寄せた。
腰に添えられた手がゆっくりと形を変え、指先が腰のラインを確かめるように滑る。
「どうせ――」
言葉の続きを口にする代わりに、男は空いた手を晴菜のうなじへ回した。わずかに指を差し入れ、晴菜の黒いボブヘアを梳くように撫で上げる。
「お互いにぐちゃぐちゃになるんだ。あとでいいだろ」
低い囁きとともに、首筋を甘噛みされた。軽い痛みと熱が同時に走り、晴菜の脚がふっと揺らぐ。
「っ……あ……」
膝がかすかに震えたのを逃さず、男の手のひらが晴菜の腰を支えた。支える、というより、捕らえるに近い。その確かな感触に、晴菜は抗おうとはしなかった。
男は軽々と晴菜の身体を横抱きにし、隣のベッドルームまで移動した。急激に全身を襲う浮遊感に、晴菜は彼の首筋に腕を回した。
――この人……手馴れてる。
男の腕に抱えられたまま、晴菜はふっと乾いた笑いを漏らす。バーでの誘い方も、口づけも、ベッドへの連れて行き方も。何もかも、手馴れている。
そう思った瞬間、自分でも予想していなかった感情が胸の奥でじわりと膨らんだ。
晴菜の身体を難なく抱える彼の腕はひどく逞しい。ぞわぞわと背筋に言いようのない快感が走る。
キングサイズの天蓋付きベッドは、上質なリネンで仕立てられたリゾートスタイルだ。
男はゆっくりと晴菜をベッドの中央に降ろした。沈み込むマットレスが、逃げ道をさらに奪う。彼がベッドに膝をつくと、ぎしりとスプリングが軋んだ。
「こういうの、慣れてるんですね」
あえて刺すように言ったつもりだった。けれど声は掠れていて、強がりにもならない。
覆い被さる男はほんの一瞬だけ、動きを止めた。その数秒が、じわりと晴菜の鼓動を速める。
「こんなふうに目を逸らさずに見てくる女は、滅多にいない」
彼のしなやかな指が頬から耳の後ろへ滑り、うなじの産毛をそっとなぞる。
その触れ方が、さっきまでの獣じみた勢いと違いすぎて、胸の奥がざわついた。
「だから気になってる……さっきからずっとな」
その言葉の響きに、晴菜の胸がかすかに震えた。彼は晴菜の顎先に触れ、上を向かせた。逃げられないまま視線が絡まる。距離が近すぎて、呼吸が混ざる。
「全部忘れさせてやるから。俺にちゃんと壊されろ」
魅惑的なバリトンが耳朶を撫でる。耳元で落とされた声は、甘さなんて一滴も含んでいなかった。その言葉は、まるで呪いのように熱く、晴菜の胸の奥に深く沈んだ。
「ん……」
小さく落とされた吐息とともに唇が塞がれた。舌先を絡め取る動きは巧みで、全てをどろどろに溶かされてしまいそうだ。思わず手を伸ばして彼のワイシャツの袖を握ると、それに応えるように口づけが深くなった。歯列をなぞり、舌先を吸い上げられ、甘噛みされ、呼吸ごと奪われる。吐息が混じり、唾液が糸を引いて、離れるたびに銀糸が繋がり艶めかしい音が響いた。
「目ぇ開けろ」
唇を合わせた状態で嗄れた声を紡ぐ彼に、晴菜はただただ翻弄されるまま。再び深く口づけられたと同時に、男の左手が、晴菜の前開きワンピースに滑り込む。その指先に迷いはなく、一つ、また一つボタンを外されていく。布地が開いていくたびに、肌が夜気に晒されて、鳥肌が立つ。
あっという間に下着が露わになった。ブラのレースの上からゆっくりと全体を包み込むように手のひらが這っていく。布越しでも伝わる熱を持った指先が、ふっくらとした膨らみの頂点を捉え、軽く円を描くように撫でる。
「っ、ふ……」
思わず身じろぎをすると、男は唇を離した。晴菜の首筋に舌を這わせながら、下へ、下へと降りていく。鎖骨の窪みを舐め、胸の谷間へと熱い息を吹きかける。
肌を甘噛みされるたび、晴菜の下腹部にじわりと熱が生まれていく。ぐっと目を閉じ、じっとりとした手つきに昂る身体をなんとか宥めようと試みる。が、ブラの縁から覗く肌を強く吸い上げられ、チリチリと軽い痛みが走った。
「んんっ……」
晴菜は必死に手の甲で口を押さえた。けれど、何かを押し殺したような、くぐもった声が漏れてしまうのを止められない。
そんな反応に気をよくしたのだろうか、彼は晴菜の背中に手を回し、器用にホックを外した。締め付けが緩み、胸元の拘束感が消えると、彼はふるりとまろびでた双丘に手を滑らせた。その膨らみを掬い上げるように直に揉みしだき、指の腹で先端を摘まんでくりくりと転がしていく。痛みと快感が混ざり合う感覚が晴菜の身体から力を奪う。
「あっ……んっ」
胸の蕾を爪の先で軽く引っ掻かれ、はふ、と晴菜は白い喉を晒して天を仰ぐ。そんな晴菜の反応を彼が見逃すはずもなく、彼の指先が晴菜のくびれをするりと撫でた。
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