12 / 54
第12話 初めての依頼1
しおりを挟む
「本当に20万でいいの?」
「十分、それでも高いくらいなんだけどね」
「そんなことないわ。私も仕事で霊能力者と会った事あるけど、インチキ臭いし、しかも値段も最低でも100万はするって言ってたから、安いくらいよ」
マジかよ。ぼったくりもいるのか。
とりあえず、値下げ交渉を行い何とか20万に落ち着いた。
もちろん、成功報酬だ。
いきなり分厚い封筒を渡された時は焦ったね。
「とりあえず、その友達に会ってみたいな。どうすれば会える?」
「多分場所わかります。明菜って、放課後になるといつもどこかに行ってるんです。気になって後を付けたら以前行った廃墟でした」
「もう利奈ってば、霊感あるんだからそういう所は行かない方がいいっていつも言ってるのに」
俺と利奈の話を聞いている栞は紅茶を飲みながら可愛らしく怒っていた。
というかスマホを見ている。何をしているのだろうか。
「ふーん。とりあえず場所教えて。どこかな」
スマホを立ち上げ、地図アプリを表示する。
中々便利なアプリだ。これは向こうの世界でも欲しかった。
「案内します!」
「いや、危険かもしれないでしょ。場所だけ教えてくれれば大丈夫さ」
いや間違いなく危険はない。
あの程度の霊が10000体居ようと1秒以内に消滅させる自信はある。
だが、それは建物ごと破壊していいなら、という話だ。
流石にそういう訳にも行かないので、中に入り地道にサーチ&デストロイするしかないと思う。
それよりちゃんと霊は見えるだろうか。あの時見えたから平気だといいんだが……
「なら、利奈の変わりに私が同行するわ。こう見えて利奈より霊感あるから自分の身は自分で守れるのよ?」
「お姉ちゃん!?」
「大丈夫よ、昨日怖い目にあったんだから、安心して家で待ってて」
そういうと栞は利奈を優しく抱きしめた。
「ね、分かった?」
「でも、私の友達だから私が――」
「ね、分かった?」
「い、いや。礼土さんとは私が――」
「ね、分かった?」
「いや、でもお姉ちゃん。外は――」
「ね、分かった?」
「……はい」
本当に優しく抱きしめているよな?
妙な念を感じる。
はッ、これがハント×ハントのオーラって奴か!?
紆余曲折あったが、栞が同行する事になった。
いや、必要ないって言ったんだが、妙にしつこい。
山城家を出ると外はもうすぐ夜になりそうだった。
時間は20時。十分遅い時間だ。
とはいえ、夏場のために日が落ちても夜は比較的暖かい。
以前いた世界は年中寒かったので厚着をしていた。
だから熱い気温っていうのはそれだけで新鮮で、今来ている半袖という服も同様だ。
この世界は夜でも外出する人はそれなりに多く。
理由は一目瞭然。
夜でも明るいのだ。
街灯もそうだが、何よりこの辺りのビルから漏れる明かりや車の光。
そして未だ営業している店の明かりなど、いたるところに明かりがある。
これだけ明るければ外出も比較的しやすいだろう。
「ねぇ礼土さん」
「なんだい?」
その廃墟へ行く道すがら、栞と話しているのだが、
何故か妙に距離が近い。
っていうか、歩き難いわ!!
少しずつ右にそれればまるで磁石のようにぴったりと付いてくる。
お陰でこれ以上は道路があるため右にいけず、しかし左は抑えられているという状況になってしまった。
「利奈とどういう関係なの?」
「利奈と?」
どういう意味だ?
「どうって言われてもね、一度ストーカーを追い払うのに彼氏役になったってだけだから」
「え? 利奈ってストーカーの被害にあってたの?」
「ああ。確か同級生に、って言ってたかな。金髪の子なんだけど、付き纏われているみたいだった」
あの少年はちゃんと改心しただろうか。
……無理かな。
「そう。ちゃんと私に相談してくれればいいのに」
「心配掛けたくなかったんだろう。でも色々疲れてるだろうから、優しくしてやってくれ」
そう、間違っても抱きしめながら絞め落とそうとしないで欲しい。
「東京には最近来たの?」
「ああ、ずっと北海道の田舎にいてね、ここには最近来たんだ」
「そうなんだ。テレビとか見る?」
「いや、全然だね。実家にはテレビなくて……」
この世界に来てから欲しいものは多くある。
だが、如何せん家がないからなぁ。
「今どこに住んでるの?」
「ホテルに泊まってるんだ」
「ホテル!? それかなり割高じゃない?」
「まあね。本当はマンションとかアパートとか借りたいけど保証人がいるみたいでさ」
「ご両親は?」
「もう……ね」
「そっか……ねぇだったらさ、提案が――」
栞がそういいかけたときだ。
目線がこちらに向いていたために気付かなかったんだろう。
誰かと肩がぶつかってしまったようだ。
「ってぇな」
「あッ。ごめんなさい」
「あ? ごめんさいじゃねぇよ。見ろ、飲みもん零しちまっただろうが」
二人組みの男だ。
一人は髪の短い茶髪。金色のネックレスをしており、背は小さいがガタイはよい。
もう一人は短髪の坊主頭でデカイサングラスをかけている。こちらは、背は高いがあまり筋肉質ではないようだ。
そして、栞はこの小さい方の男とぶつかってしまい、彼が持っている飲み物を零してしまったようだ。よく見ると服に染みが出来ている。
「どうしてくれんだ? あぁ?」
「これクリーニング代だ。十分だろう」
俺は間に入り、財布から諭吉を一人生贄にした。
多分一万もあれば十分足りるだろう。
「は? 何言ってんだ。この服いくらしたと思って――」
「十分だろう?」
「――ッ」
彼の肩にゆっくりと手を置く。
この手のやからの対処は実に簡単だ。
今回の場合だとこのネックレスをしているチビの方をターゲットにする。
歩き方や視線なんかを考えると間違いなく戦える方の人間だ。
であれば、分かるだろう。
俺との力の差って奴が。
「あぁ? てめぇ何調子に乗ってんだ。カズヤさんの服はブランド物で――」
「おい」
「外人だからって舐めてんじゃ――」
「おいッ! やめろ」
茶髪の方から唸るような声でもう一人の方を制止させた。
それに驚いたもう一人の男は口を空けて驚愕している。
「どうしたんすか、カズヤさん」
「やめろ。どうせスポドリだ。ほっときゃ乾く」
「いいんすか? いつものカズヤさんだったら――」
「いい。悪かったな。ちょっとイライラしててよ」
「いえ。それでは」
「ああ」
そうして驚いている栞の肩を抱きながらそのまま道を進んだ。
暗い路地を二人の男が急ぎ足で歩いている。
近くを通る通行人は二人を見ると目を逸らし、道を譲ったり、別の道を行く者もいる。
それほどまでに近寄り難い雰囲気を放っていた。
この後の予定に間に合わせるため、少し急ぎ足になっている二人だが、
どうしても先ほどのことが気になり、シンジはカズヤに声を掛けた。
「どうしたんすか? いつもならすぐ裏路地連れて行くのに」
「馬鹿野郎。――もう少し相手をみろ、あれ俺よりつえぇよ」
「は? マジっすか? だってカズヤさん総合やってますよね?」
「肩を触られるまで、あいつが動くのが分からなかった。ありゃバケモンだ。シンジも気をつけろ。ありゃただの外人じゃねぇよ」
そういわれ、シンジはあの二人の方にもう一度視線を投げた。
だが、既にその姿は視界から消えている。
「とりあえず、急ぐぞ。レンの奴が呼んでんだろ?」
「はい」
「十分、それでも高いくらいなんだけどね」
「そんなことないわ。私も仕事で霊能力者と会った事あるけど、インチキ臭いし、しかも値段も最低でも100万はするって言ってたから、安いくらいよ」
マジかよ。ぼったくりもいるのか。
とりあえず、値下げ交渉を行い何とか20万に落ち着いた。
もちろん、成功報酬だ。
いきなり分厚い封筒を渡された時は焦ったね。
「とりあえず、その友達に会ってみたいな。どうすれば会える?」
「多分場所わかります。明菜って、放課後になるといつもどこかに行ってるんです。気になって後を付けたら以前行った廃墟でした」
「もう利奈ってば、霊感あるんだからそういう所は行かない方がいいっていつも言ってるのに」
俺と利奈の話を聞いている栞は紅茶を飲みながら可愛らしく怒っていた。
というかスマホを見ている。何をしているのだろうか。
「ふーん。とりあえず場所教えて。どこかな」
スマホを立ち上げ、地図アプリを表示する。
中々便利なアプリだ。これは向こうの世界でも欲しかった。
「案内します!」
「いや、危険かもしれないでしょ。場所だけ教えてくれれば大丈夫さ」
いや間違いなく危険はない。
あの程度の霊が10000体居ようと1秒以内に消滅させる自信はある。
だが、それは建物ごと破壊していいなら、という話だ。
流石にそういう訳にも行かないので、中に入り地道にサーチ&デストロイするしかないと思う。
それよりちゃんと霊は見えるだろうか。あの時見えたから平気だといいんだが……
「なら、利奈の変わりに私が同行するわ。こう見えて利奈より霊感あるから自分の身は自分で守れるのよ?」
「お姉ちゃん!?」
「大丈夫よ、昨日怖い目にあったんだから、安心して家で待ってて」
そういうと栞は利奈を優しく抱きしめた。
「ね、分かった?」
「でも、私の友達だから私が――」
「ね、分かった?」
「い、いや。礼土さんとは私が――」
「ね、分かった?」
「いや、でもお姉ちゃん。外は――」
「ね、分かった?」
「……はい」
本当に優しく抱きしめているよな?
妙な念を感じる。
はッ、これがハント×ハントのオーラって奴か!?
紆余曲折あったが、栞が同行する事になった。
いや、必要ないって言ったんだが、妙にしつこい。
山城家を出ると外はもうすぐ夜になりそうだった。
時間は20時。十分遅い時間だ。
とはいえ、夏場のために日が落ちても夜は比較的暖かい。
以前いた世界は年中寒かったので厚着をしていた。
だから熱い気温っていうのはそれだけで新鮮で、今来ている半袖という服も同様だ。
この世界は夜でも外出する人はそれなりに多く。
理由は一目瞭然。
夜でも明るいのだ。
街灯もそうだが、何よりこの辺りのビルから漏れる明かりや車の光。
そして未だ営業している店の明かりなど、いたるところに明かりがある。
これだけ明るければ外出も比較的しやすいだろう。
「ねぇ礼土さん」
「なんだい?」
その廃墟へ行く道すがら、栞と話しているのだが、
何故か妙に距離が近い。
っていうか、歩き難いわ!!
少しずつ右にそれればまるで磁石のようにぴったりと付いてくる。
お陰でこれ以上は道路があるため右にいけず、しかし左は抑えられているという状況になってしまった。
「利奈とどういう関係なの?」
「利奈と?」
どういう意味だ?
「どうって言われてもね、一度ストーカーを追い払うのに彼氏役になったってだけだから」
「え? 利奈ってストーカーの被害にあってたの?」
「ああ。確か同級生に、って言ってたかな。金髪の子なんだけど、付き纏われているみたいだった」
あの少年はちゃんと改心しただろうか。
……無理かな。
「そう。ちゃんと私に相談してくれればいいのに」
「心配掛けたくなかったんだろう。でも色々疲れてるだろうから、優しくしてやってくれ」
そう、間違っても抱きしめながら絞め落とそうとしないで欲しい。
「東京には最近来たの?」
「ああ、ずっと北海道の田舎にいてね、ここには最近来たんだ」
「そうなんだ。テレビとか見る?」
「いや、全然だね。実家にはテレビなくて……」
この世界に来てから欲しいものは多くある。
だが、如何せん家がないからなぁ。
「今どこに住んでるの?」
「ホテルに泊まってるんだ」
「ホテル!? それかなり割高じゃない?」
「まあね。本当はマンションとかアパートとか借りたいけど保証人がいるみたいでさ」
「ご両親は?」
「もう……ね」
「そっか……ねぇだったらさ、提案が――」
栞がそういいかけたときだ。
目線がこちらに向いていたために気付かなかったんだろう。
誰かと肩がぶつかってしまったようだ。
「ってぇな」
「あッ。ごめんなさい」
「あ? ごめんさいじゃねぇよ。見ろ、飲みもん零しちまっただろうが」
二人組みの男だ。
一人は髪の短い茶髪。金色のネックレスをしており、背は小さいがガタイはよい。
もう一人は短髪の坊主頭でデカイサングラスをかけている。こちらは、背は高いがあまり筋肉質ではないようだ。
そして、栞はこの小さい方の男とぶつかってしまい、彼が持っている飲み物を零してしまったようだ。よく見ると服に染みが出来ている。
「どうしてくれんだ? あぁ?」
「これクリーニング代だ。十分だろう」
俺は間に入り、財布から諭吉を一人生贄にした。
多分一万もあれば十分足りるだろう。
「は? 何言ってんだ。この服いくらしたと思って――」
「十分だろう?」
「――ッ」
彼の肩にゆっくりと手を置く。
この手のやからの対処は実に簡単だ。
今回の場合だとこのネックレスをしているチビの方をターゲットにする。
歩き方や視線なんかを考えると間違いなく戦える方の人間だ。
であれば、分かるだろう。
俺との力の差って奴が。
「あぁ? てめぇ何調子に乗ってんだ。カズヤさんの服はブランド物で――」
「おい」
「外人だからって舐めてんじゃ――」
「おいッ! やめろ」
茶髪の方から唸るような声でもう一人の方を制止させた。
それに驚いたもう一人の男は口を空けて驚愕している。
「どうしたんすか、カズヤさん」
「やめろ。どうせスポドリだ。ほっときゃ乾く」
「いいんすか? いつものカズヤさんだったら――」
「いい。悪かったな。ちょっとイライラしててよ」
「いえ。それでは」
「ああ」
そうして驚いている栞の肩を抱きながらそのまま道を進んだ。
暗い路地を二人の男が急ぎ足で歩いている。
近くを通る通行人は二人を見ると目を逸らし、道を譲ったり、別の道を行く者もいる。
それほどまでに近寄り難い雰囲気を放っていた。
この後の予定に間に合わせるため、少し急ぎ足になっている二人だが、
どうしても先ほどのことが気になり、シンジはカズヤに声を掛けた。
「どうしたんすか? いつもならすぐ裏路地連れて行くのに」
「馬鹿野郎。――もう少し相手をみろ、あれ俺よりつえぇよ」
「は? マジっすか? だってカズヤさん総合やってますよね?」
「肩を触られるまで、あいつが動くのが分からなかった。ありゃバケモンだ。シンジも気をつけろ。ありゃただの外人じゃねぇよ」
そういわれ、シンジはあの二人の方にもう一度視線を投げた。
だが、既にその姿は視界から消えている。
「とりあえず、急ぐぞ。レンの奴が呼んでんだろ?」
「はい」
0
あなたにおすすめの小説
神は激怒した
まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。
めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。
ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m
世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
あっ、追放されちゃった…。
satomi
恋愛
ガイダール侯爵家の長女であるパールは精霊の話を聞くことができる。がそのことは誰にも話してはいない。亡き母との約束。
母が亡くなって喪も明けないうちに義母を父は連れてきた。義妹付きで。義妹はパールのものをなんでも欲しがった。事前に精霊の話を聞いていたパールは対処なりをできていたけれど、これは…。
ついにウラルはパールの婚約者である王太子を横取りした。
そのことについては王太子は特に魅力のある人ではないし、なんにも感じなかったのですが、王宮内でも噂になり、家の恥だと、家まで追い出されてしまったのです。
精霊さんのアドバイスによりブルハング帝国へと行ったパールですが…。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる