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第27話 山の悪神4
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まずい、もうすぐピザが届くんじゃないか?
そんな焦る気持ちを抑えながら、俺は栞に目配せを送る。
すると、紅茶を3人分出した栞は俺の視線に気づき、頷いた。
どうやら分かってくれたようだ。
出来ればこの親子に気づかれないようにピザを受け取ってもらいたいものだ。
そうして俺は改めて前のソファーに座る二人の親子を見た。
男性の名前は千時武人。年齢は40代くらいだろうか。無精髭が目立ち、目に隈が出来ている。眠れていないのかもしれない。
もう一人はまだ10才程度の女の子、千時愛奈だ。
確か栞から聞いていた内容によると、この娘の方が霊に狙われているらしい。
まぁ話を聞くところから始めよう。
さっぱり分からんからな。
「初めまして、勇実礼土と申します」
「千時武人です。こちらは娘の愛奈です」
「あいなです。よろしくお願いします」
なるほど、礼儀正しい子だ。
緊張しているようだし、お菓子でもやるか。
俺はスーツの内ポケットから、携帯しているチョコボールを取り出し、それを娘の前に置いた。
「難しい話になるだろうからね、よかったらそれでも食べてくれ」
「あ、ありがとうございます」
たどたどしい口調で礼を言った娘は父親の顔を見た。
父の武人も混乱している様子だが、俺がテーブルに置いた未開封のチョコボールを見て
それを娘の手の上に乗せてやっていた。
「さて、さっそくお話を聞かせてもらってもいいでしょうか」
「はい、実は――」
そうして武人から語られた内容を俺は聞き逃さないように静かに聞いた。
実家の近くにある山へ墓参りに行ったという事。そこで、猿のような化け物が居たこと。
娘を庇って武人の父がその場に残ったこと。
恐らく武人の父は既に亡くなっているという事。近くの神社の神主からそこで詳しい事情を聞かされたそうだ。
曰く、あれは山の神である。ただし、善い神ではなく、どちらかというと悪い神に分類されるらしい。その猿が土地に恵みを与えるが、時々人間を攫い、喰らうことがあるという事だ。
そのため、武人の父親はその猿の存在を知っていたらしいが、武人自身はすぐに都会に出てしまったこともあってそういう言い伝えはまったく知らなかったそうだ。
「ちょうどここに来る途中もその化け物が出たみたいなんです。どうか、助けてください。
娘を、娘をどうかッ! どうか……」
そういって武人は目に涙を浮かべ、深く頭を下げた。
「安心して下さい。俺はこういった事の専門家です。荒事には慣れている。もう大丈夫ですよ」
「あ、ありがとう。ございます」
それにしても猿の化け物ね。
ここに来る道中に出たという事だが、もしや近くにいるのか? 試してみるか。
「武人さん、愛奈ちゃん。目を瞑ってもらっていいかな」
「え? は、はい」
「わかりました」
流石にこの距離だと眩しいだろうからね。
二人が目を瞑ったのを確認し、俺は拍手する要領で手を叩いた。
パンッっと乾いた音と共に、俺の身体を中心に光の渦が巻き起こり、この周囲に飛び散る。
「ッ! こ、これは!?」
「す、すごい!」
どうやら手を叩いた拍子で目を開けてしまったらしい。
っていうか、二人とも目を瞑ってたんだから、格好つける必要なんてなかったのだが……
「先ほど周囲に俺の霊力を展開しましたが、どうやらその化け物は近くにはいないようです」
「す、すごい。貴方はやはり本物だったのですね!?」
「ははは、それはもちろんですよ」
嘘である。
ここ最近の経験で、霊は俺の魔力に反応し勝手に出現する傾向がある事を学んだだけだ。
だから適当に視覚化できるように光の魔法を放っているだけなのだ。すまんの。
それにしても漫画みたいに霊を口寄せとかマジでどうやってるんだろうか。
しかし、参ったな。
その霊の反応がない。という事は考えられるのは二通りだ。
一つはこの武人が嘘をついている可能性だ。
だが、それはないだろう。
この表情から察するに殆ど眠れていないのだろう。
嫌がらせで嘘をついているとはとても思えない。
ならば二つ目だ。
恐らく件の化け物は俺の魔力に気づき近くによってこない可能性だ。
であれば本当に厄介かもしれない。
今まで出会った霊は漫画で読む限りだと地縛霊という分類らしい。
それは土地に縛られ身動きが取れない霊たちの事を指しているそうだ。
だが、今回の霊は違う。
恐らく俺の居た世界の魔物と同じだ。
分かっているのだろう、本能的に俺に近付くとどうなるか、という事が。
という事はそれなりに知性を持っている可能性がある。
一度探知できれば、すぐに消滅させられる自信はあるが、探知できなければそれも難しい。
この池袋全土を覆うように魔力を放てば何かしら反応はあるだろうが、万が一それをやれば今回の霊以外にも多くの霊たちが反応してしまう。
そうなれば阿鼻叫喚だ。
つまり、この時点で俺の取れる手は待ちの一手という最悪の手段しか思いつかなかった。
「率直に申し上げましょう。恐らくその化け物を祓うのは容易です」
「ほ、本当ですか!?」
目を見開き、身を乗り出してくる武人。
「ただし、少々厄介なことに、その化け物が近くにいません。恐らく俺の力を感じ近寄れないのでしょう」
「おぉ、それは凄い」
「いえ、だから問題なのです。武人さんの話では愛奈ちゃんが狙われているそうですね? 恐らく俺の力の範囲内にいるため、手が出せないようなので、そこから離れてしまうと――」
俺の言葉を聞き、息を呑む武人。
そして恐る恐る質問をしてきた。
「勇実さんの元から離れると、どうなるのですか?」
「恐らく今まで以上に狙われます。かなり強引な方法で襲ってくるでしょう」
「そんな、どうすればッ!」
俺の話を聞き、絶望の表情を浮かべる武人を安心させるように、一つの提案を出す。
「だから、解決するまで、ここに泊まっていって下さい」
「と、泊まる? 愛奈を一人でここにですか!? そんな事は!」
は? なぜ一人って事になる。
子供は嫌いじゃないが、子守を押し付けないでくれ。
「いや、貴方もです。その方が愛奈ちゃんも安心するでしょう」
「あ、ああ。なるほど。でも他に方法はないのですか? 例えばお守りとかそういうものなどは……?」
お守り? 神社とかで売ってるあれだろうか。
あれで魔物とかから身を守れるのか? すげぇな日本。
後で買ってみよう。
「一応、俺の力を道具に籠めることはできますが、あまり効果は長持ちしませんね」
「そうですか……わかりました。申し訳ありません、よろしくお願いします」
「そういえばお仕事などで何か不都合は?」
武人は娘を養うためにも働いているはずだ。
仕事は大丈夫だろうか。
「ああ、それであればノートPCさえあれば大丈夫です。放送作家の仕事をしているので家でも作業できるんです。偶に会議とかに出ないといけないですが、基本的には愛奈と一緒にいる事が出来ます」
「そうですか。では、娘さんはこちらで預かりますので、武人さんは一度自宅に戻り、着替えなど必要なものを用意してください。どの程度長期戦になるか分かりませんが、必ずお守りしましょう」
俺がそういうと武人は何かを思い出したように身体をビクリとさせた。
どうした? トイレか? トイレなら玄関の近くの扉だぞ。
「あぁ、そうだ。申し訳ない、失念していました。今回の依頼料はいくらになりますか?」
どこか気まずそうにそう切り出してきた。
確かにその話をしていなかったな。
「なるほど、そうですね。あぁ愛奈ちゃん。あっちに栞っておねえちゃんがいるからそこに行っておいで、多分ピザがあるから食べているといいよ」
「――そうだな、愛奈。ピザがあるってさ。行っておいで」
流石に娘の前でお金の話はしたくないだろう。
幸い頼んだピザはLサイズ2枚だ。こうなったらみんなで食べるとしよう。
武人の話を聞き、ずっと静かにしていた娘は父親と俺の目を交互に見てからソファーから立ち上がり、そのまま栞が立っている方で歩いていった。
「賢い子ですね」
「はい、自慢の娘です。――気を使っていただきありがとうございます」
「いえ、それで依頼料ですが、お約束通り前金はなしです。成功報酬としてこれくらいで如何ですか?」
そういうと俺は指を3本立てた。
まだ戦うべき猿の化け物というのがどの程度か全然分からないのだが、まぁそれでもオークレベルだろう。まったく問題はない。
俺の指の本数を見て、武人は少し考え込んだ様子だ。
まぁ無理もないだろう。
この世界で30万円というのは決して安い金額ではないのだ。
「……わかりました。それなら何とかお支払いできると思います。では300万円でどうぞ、よろしくお願いします」
だから、ちげぇえよ!?
そんな焦る気持ちを抑えながら、俺は栞に目配せを送る。
すると、紅茶を3人分出した栞は俺の視線に気づき、頷いた。
どうやら分かってくれたようだ。
出来ればこの親子に気づかれないようにピザを受け取ってもらいたいものだ。
そうして俺は改めて前のソファーに座る二人の親子を見た。
男性の名前は千時武人。年齢は40代くらいだろうか。無精髭が目立ち、目に隈が出来ている。眠れていないのかもしれない。
もう一人はまだ10才程度の女の子、千時愛奈だ。
確か栞から聞いていた内容によると、この娘の方が霊に狙われているらしい。
まぁ話を聞くところから始めよう。
さっぱり分からんからな。
「初めまして、勇実礼土と申します」
「千時武人です。こちらは娘の愛奈です」
「あいなです。よろしくお願いします」
なるほど、礼儀正しい子だ。
緊張しているようだし、お菓子でもやるか。
俺はスーツの内ポケットから、携帯しているチョコボールを取り出し、それを娘の前に置いた。
「難しい話になるだろうからね、よかったらそれでも食べてくれ」
「あ、ありがとうございます」
たどたどしい口調で礼を言った娘は父親の顔を見た。
父の武人も混乱している様子だが、俺がテーブルに置いた未開封のチョコボールを見て
それを娘の手の上に乗せてやっていた。
「さて、さっそくお話を聞かせてもらってもいいでしょうか」
「はい、実は――」
そうして武人から語られた内容を俺は聞き逃さないように静かに聞いた。
実家の近くにある山へ墓参りに行ったという事。そこで、猿のような化け物が居たこと。
娘を庇って武人の父がその場に残ったこと。
恐らく武人の父は既に亡くなっているという事。近くの神社の神主からそこで詳しい事情を聞かされたそうだ。
曰く、あれは山の神である。ただし、善い神ではなく、どちらかというと悪い神に分類されるらしい。その猿が土地に恵みを与えるが、時々人間を攫い、喰らうことがあるという事だ。
そのため、武人の父親はその猿の存在を知っていたらしいが、武人自身はすぐに都会に出てしまったこともあってそういう言い伝えはまったく知らなかったそうだ。
「ちょうどここに来る途中もその化け物が出たみたいなんです。どうか、助けてください。
娘を、娘をどうかッ! どうか……」
そういって武人は目に涙を浮かべ、深く頭を下げた。
「安心して下さい。俺はこういった事の専門家です。荒事には慣れている。もう大丈夫ですよ」
「あ、ありがとう。ございます」
それにしても猿の化け物ね。
ここに来る道中に出たという事だが、もしや近くにいるのか? 試してみるか。
「武人さん、愛奈ちゃん。目を瞑ってもらっていいかな」
「え? は、はい」
「わかりました」
流石にこの距離だと眩しいだろうからね。
二人が目を瞑ったのを確認し、俺は拍手する要領で手を叩いた。
パンッっと乾いた音と共に、俺の身体を中心に光の渦が巻き起こり、この周囲に飛び散る。
「ッ! こ、これは!?」
「す、すごい!」
どうやら手を叩いた拍子で目を開けてしまったらしい。
っていうか、二人とも目を瞑ってたんだから、格好つける必要なんてなかったのだが……
「先ほど周囲に俺の霊力を展開しましたが、どうやらその化け物は近くにはいないようです」
「す、すごい。貴方はやはり本物だったのですね!?」
「ははは、それはもちろんですよ」
嘘である。
ここ最近の経験で、霊は俺の魔力に反応し勝手に出現する傾向がある事を学んだだけだ。
だから適当に視覚化できるように光の魔法を放っているだけなのだ。すまんの。
それにしても漫画みたいに霊を口寄せとかマジでどうやってるんだろうか。
しかし、参ったな。
その霊の反応がない。という事は考えられるのは二通りだ。
一つはこの武人が嘘をついている可能性だ。
だが、それはないだろう。
この表情から察するに殆ど眠れていないのだろう。
嫌がらせで嘘をついているとはとても思えない。
ならば二つ目だ。
恐らく件の化け物は俺の魔力に気づき近くによってこない可能性だ。
であれば本当に厄介かもしれない。
今まで出会った霊は漫画で読む限りだと地縛霊という分類らしい。
それは土地に縛られ身動きが取れない霊たちの事を指しているそうだ。
だが、今回の霊は違う。
恐らく俺の居た世界の魔物と同じだ。
分かっているのだろう、本能的に俺に近付くとどうなるか、という事が。
という事はそれなりに知性を持っている可能性がある。
一度探知できれば、すぐに消滅させられる自信はあるが、探知できなければそれも難しい。
この池袋全土を覆うように魔力を放てば何かしら反応はあるだろうが、万が一それをやれば今回の霊以外にも多くの霊たちが反応してしまう。
そうなれば阿鼻叫喚だ。
つまり、この時点で俺の取れる手は待ちの一手という最悪の手段しか思いつかなかった。
「率直に申し上げましょう。恐らくその化け物を祓うのは容易です」
「ほ、本当ですか!?」
目を見開き、身を乗り出してくる武人。
「ただし、少々厄介なことに、その化け物が近くにいません。恐らく俺の力を感じ近寄れないのでしょう」
「おぉ、それは凄い」
「いえ、だから問題なのです。武人さんの話では愛奈ちゃんが狙われているそうですね? 恐らく俺の力の範囲内にいるため、手が出せないようなので、そこから離れてしまうと――」
俺の言葉を聞き、息を呑む武人。
そして恐る恐る質問をしてきた。
「勇実さんの元から離れると、どうなるのですか?」
「恐らく今まで以上に狙われます。かなり強引な方法で襲ってくるでしょう」
「そんな、どうすればッ!」
俺の話を聞き、絶望の表情を浮かべる武人を安心させるように、一つの提案を出す。
「だから、解決するまで、ここに泊まっていって下さい」
「と、泊まる? 愛奈を一人でここにですか!? そんな事は!」
は? なぜ一人って事になる。
子供は嫌いじゃないが、子守を押し付けないでくれ。
「いや、貴方もです。その方が愛奈ちゃんも安心するでしょう」
「あ、ああ。なるほど。でも他に方法はないのですか? 例えばお守りとかそういうものなどは……?」
お守り? 神社とかで売ってるあれだろうか。
あれで魔物とかから身を守れるのか? すげぇな日本。
後で買ってみよう。
「一応、俺の力を道具に籠めることはできますが、あまり効果は長持ちしませんね」
「そうですか……わかりました。申し訳ありません、よろしくお願いします」
「そういえばお仕事などで何か不都合は?」
武人は娘を養うためにも働いているはずだ。
仕事は大丈夫だろうか。
「ああ、それであればノートPCさえあれば大丈夫です。放送作家の仕事をしているので家でも作業できるんです。偶に会議とかに出ないといけないですが、基本的には愛奈と一緒にいる事が出来ます」
「そうですか。では、娘さんはこちらで預かりますので、武人さんは一度自宅に戻り、着替えなど必要なものを用意してください。どの程度長期戦になるか分かりませんが、必ずお守りしましょう」
俺がそういうと武人は何かを思い出したように身体をビクリとさせた。
どうした? トイレか? トイレなら玄関の近くの扉だぞ。
「あぁ、そうだ。申し訳ない、失念していました。今回の依頼料はいくらになりますか?」
どこか気まずそうにそう切り出してきた。
確かにその話をしていなかったな。
「なるほど、そうですね。あぁ愛奈ちゃん。あっちに栞っておねえちゃんがいるからそこに行っておいで、多分ピザがあるから食べているといいよ」
「――そうだな、愛奈。ピザがあるってさ。行っておいで」
流石に娘の前でお金の話はしたくないだろう。
幸い頼んだピザはLサイズ2枚だ。こうなったらみんなで食べるとしよう。
武人の話を聞き、ずっと静かにしていた娘は父親と俺の目を交互に見てからソファーから立ち上がり、そのまま栞が立っている方で歩いていった。
「賢い子ですね」
「はい、自慢の娘です。――気を使っていただきありがとうございます」
「いえ、それで依頼料ですが、お約束通り前金はなしです。成功報酬としてこれくらいで如何ですか?」
そういうと俺は指を3本立てた。
まだ戦うべき猿の化け物というのがどの程度か全然分からないのだが、まぁそれでもオークレベルだろう。まったく問題はない。
俺の指の本数を見て、武人は少し考え込んだ様子だ。
まぁ無理もないだろう。
この世界で30万円というのは決して安い金額ではないのだ。
「……わかりました。それなら何とかお支払いできると思います。では300万円でどうぞ、よろしくお願いします」
だから、ちげぇえよ!?
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