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第51話 人穴墓獄1
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最近は平和だ。
たまにくる自称霊に取りつかれた人を相手にするのは疲れるが、まぁそれもいい。
なんせ、客が向こうから来てくれるのだから。
俺は思ったね。もう遠出したくないってさ。
いつものように漫画を読み、ピザを食べる。
あぁなんて贅沢な日々だろうか。
この静かなる日々がずっと続けばいいのに。あぁもう今日は寝ようかな。
「れ、礼土さんッ!!!」
無理だったか。
しかし何をそんなに騒いでいるんだ? 相変わらず残念な娘だな利奈は。
「はぁ……どうしたんだい?」
「こ、これ見てください!!」
利奈が持ってきたのは銀行の通帳だ。
っていうか、なぜおまえがそれを持っている。
それは本の形をした箱にしまっておいたはずなんだが……
あぁ、そうか。田嶋の依頼である九条家の仕事を終わらせたから報酬が今日入る日だったな。
恐らく栞辺りが通帳を渡して銀行に行かせてたのだろう。
ふッ、それにしてもたかが20万程度で驚くようでは利奈もまだまだお子様という事だな。
まぁ子供からすれば十分大金だろう。
なんせ、漫画が約400冊は買えるほどの金額なんだ。
俺だって興奮するさ。次に何の本を買おうか迷っていた程だったからな。
しかし残念なのは漫画を買っても経費で落ちないことだ。
税理士には漫画の重要性を熱く語ったのだが、理解してもらえなかった。
「ぜ、ゼロがいっぱいです。礼土さん、どんな悪いことしたんですか!?」
あぁ本当に残念な娘だな。
それは正当な報酬だというのに。
知らないだろうが、俺結構頑張ったんだぜ?
「言っておきますけど無駄遣いは許しませんからね。ただでさえ、礼土君ってピザばっかり頼むんだもん。最近は小さい依頼も増えてきたけど、まだまだ稼がないとだめですからね。ここの家賃結構高いんですから」
キッチンで昼飯の片づけをしていた栞が利奈に近づき、通帳を受け取り固まった。
「な、なによこれ!!!??」
うるさいな。
ここ一応多少の防音はあるけど、そんなに叫ぶとご近所に怒られるぞ?
「栞までどうしたんだ? あれ、もしかして結構多く貰えた?」
ありえない話ではない。
なんせ最後は結構な数の呪いを祓ったんだ。これは夢の30万円はいっているかもしれないな。
「礼土君ッ! これ本当に使っていいお金なの!? 変なところのお金じゃないでしょうね!?」
「いや、どういう意味だよ。お金に変とか普通とかあるのか?」
「だって、見てよこの金額ッ!!」
そういって栞は俺に通帳を突き出してきた。
そこに書かれている数字を見る。
うん、0がいっぱいだ。
えぇっと1,10、100……
「――は? 3千万?」
なんだ、バグってないか? 20万じゃないぞ?
「そうよッ! それにこの3千万とは別に大蓮寺って人から振り込まれてる1千万って何!?」
それこそ知らん。
なぜ俺に金を振り込んできたんだ? くそ、電話するべきか?
いや、でも連絡先知らんぞ!?
「とにかくお父さんに連絡しなきゃッ!」
「す、すごいです! 礼土さん! 大金持ちですよ!!」
「礼土君は、とりあえずこの大蓮寺って人に電話して事情を確認して下さい。いいですね!」
「わ、わかった!」
あれから少し大騒ぎだった。
まず俺は大蓮寺に連絡しようと思い、ネットで電話番号を検索する。
調べると大蓮寺が運営していると思われるホームページが出たため、そこに電話を掛けた。
『はい、大蓮寺心霊所です』
「あーすいません、実は聞きたいことがありまして。大蓮寺さんいますか?」
『……失礼ですがどちら様でしょうか。大蓮寺様は現在精神集中をするため祈祷に入られております。アポもなしに連絡をつなぐことができません。心霊相談の方でしょうか?』
え? 祈祷?
病院行かなくて大丈夫なの? すげぇなあの人。
「いや、相談って訳じゃないんですが、じゃあ牧菜さんいますか?」
『……あの、もしかして勇実さんですか?』
ん? ってことはこの電話の声の主は牧菜か?
電話越しだと意外に分からんな。
「ええ、そうです。もしかして牧菜さんですか?」
『はぁ……それなら最初に名前を言ってくださいよ。というかこの電話は外部のお客様用の電話ですよ? どうしてこちらに電話されたんですか?」
いや、ホームページに書いてあったんだけど…… え、何、ダメなの?
っていうか電話のマナーとか勉強してなかったな。
今度そういう本も買っておくとしよう。
「それは申し訳ない、不勉強なもので」
『いえ、これからは私のスマホに直接電話してください。電話番号は※※※ー※※※※ー※※※※です』
「わかりました。次はそちらにかけるようにしますね。それで質問したいことがあるんだけど」
『あぁお金の件ですか?』
なぜわかる。
っていうか確信犯か?
「随分大金が振り込まれていたんですがあれはどういう……」
『父が言っていたように、あれはただのお礼です。私たちの命を救っていただけたんです。父がいうにはあれでも足りないくらいだと言ってましたよ。ただ自分の命を救ってくれた礼を金だけで終わらせるつもりはないという事です。だから以前にも言ったように何かあれば私たちを頼ってくださいね。まぁ勇実さんほどの人が困ることってそうそうないかもしれませんけどね』
そうか。自分の命を救った礼というわけか。
随分、男前な人だ。自分の命を救ってくれた礼にそこまでの大金を出せる人なんてまずいないだろう。
「分かりました。ではありがたく頂戴しておきます。牧菜さんも何かあれば頼って下さい。霊関係なら何とでもなりますので」
『勇実さんなら本当にその通りなのでなんとも言えないですよ』
そうして少し雑談をして電話は終了した。
だが、どうやら使っていいお金のようだ。
まぁ税金とかあるからそれなりに引かれるのだろうけど、後でどれくらい使えるか具体的に確認しなくてはならないな。
「……あの、礼土君」
「どうしたの?」
どうやら和人との電話が終わったらしい栞が何やら気まずそうにこちらに来た。
「はははは、――実はね?」
やってきた山城家。
久々に来たがやはりデカい家だ。
だが、九条家の屋敷とか見たから前ほど圧倒されなくなったな。
「やあ、礼土君。栞から聞いたよ。順調らしいね」
「和人さん、お久しぶりです」
やはり緊張するな。
田嶋の友人である和人には隙を見せる事は出来ない。
っていうか、俺の事務所の社長だし、マジで油断できん。
和人に案内されリビングのソファーに座る。
軽い談笑をしつつ、本題へ入っていった。
「実はね、栞から礼土君の仕事が中々上手く行かないって聞いていてさ」
「あぁ……それでですか」
「まぁね。まさかあの九条忠則から依頼を受けていたとは驚いたよ。しかも随分気に入られたみたいだしね」
「そうなんですか?」
確かに随分依頼料を貰ってしまった。
っていうか和人、九条の事を知っているのか。やはり金持ち同士謎のネットワークがあるのかもしれないな。
というかだ。あんだけ貰って大丈夫なのか? 心配になってきたぞ。
「彰から聞いたけど、礼土君の住んでるマンションの家賃も半額になったからね」
「え?」
「どうやら九条家の所有するマンション住まいって事を彰から聞いたみたいでね。それでそういう処遇になったんだ。あ、もし別の場所に引っ越ししたかったら、九条家が所有する物件だったらどれでも家賃も半額でいいってさ」
そうか、ありがたい。このままだとピザが制限されそうだったからな。
ふふふ、これなら以前から欲しかったガラス製のチェス盤でも買ってみようかな。
サイトで見た時に一目ぼれしたんだが、すごいカッコいい置物だと思うんだよな。
「さて、話を戻すけど、桐也の件。どうする?」
そう、それが本題だ。
俺はここに来る前の栞の話を思い出す。
『ごめん、礼土君。実はね。中々お客さんもこないからさ。兄さんにちょっと動画で紹介してって頼んじゃったの』
『待ってくれ、栞のお兄さんって確かあの背信してるっていう?』
『そう。礼土君の写真も見せたらビジュアルもいいから、動画のネタに使えそうだって結構乗り気になってくれてね』
背信の動画に俺が出るのか?
俺は無神論者だぞ、何を背信しろというのか。
『なんでもね。心霊スポットに行って霊感ある同じ配信者を呼んで一緒に回るっていう企画を立ててるんだって。それに出て事務所を宣伝すればさ、礼土君カッコいいし、実力も本物だからすぐお客さん増えると思ったの……』
そう栞はあくまで善意でやってくれたのだろう。
俺はそれを無下にする事は出来なかったのだ。
そして俺は後日知ることになる。
背信って配信って事だったという事実に……
たまにくる自称霊に取りつかれた人を相手にするのは疲れるが、まぁそれもいい。
なんせ、客が向こうから来てくれるのだから。
俺は思ったね。もう遠出したくないってさ。
いつものように漫画を読み、ピザを食べる。
あぁなんて贅沢な日々だろうか。
この静かなる日々がずっと続けばいいのに。あぁもう今日は寝ようかな。
「れ、礼土さんッ!!!」
無理だったか。
しかし何をそんなに騒いでいるんだ? 相変わらず残念な娘だな利奈は。
「はぁ……どうしたんだい?」
「こ、これ見てください!!」
利奈が持ってきたのは銀行の通帳だ。
っていうか、なぜおまえがそれを持っている。
それは本の形をした箱にしまっておいたはずなんだが……
あぁ、そうか。田嶋の依頼である九条家の仕事を終わらせたから報酬が今日入る日だったな。
恐らく栞辺りが通帳を渡して銀行に行かせてたのだろう。
ふッ、それにしてもたかが20万程度で驚くようでは利奈もまだまだお子様という事だな。
まぁ子供からすれば十分大金だろう。
なんせ、漫画が約400冊は買えるほどの金額なんだ。
俺だって興奮するさ。次に何の本を買おうか迷っていた程だったからな。
しかし残念なのは漫画を買っても経費で落ちないことだ。
税理士には漫画の重要性を熱く語ったのだが、理解してもらえなかった。
「ぜ、ゼロがいっぱいです。礼土さん、どんな悪いことしたんですか!?」
あぁ本当に残念な娘だな。
それは正当な報酬だというのに。
知らないだろうが、俺結構頑張ったんだぜ?
「言っておきますけど無駄遣いは許しませんからね。ただでさえ、礼土君ってピザばっかり頼むんだもん。最近は小さい依頼も増えてきたけど、まだまだ稼がないとだめですからね。ここの家賃結構高いんですから」
キッチンで昼飯の片づけをしていた栞が利奈に近づき、通帳を受け取り固まった。
「な、なによこれ!!!??」
うるさいな。
ここ一応多少の防音はあるけど、そんなに叫ぶとご近所に怒られるぞ?
「栞までどうしたんだ? あれ、もしかして結構多く貰えた?」
ありえない話ではない。
なんせ最後は結構な数の呪いを祓ったんだ。これは夢の30万円はいっているかもしれないな。
「礼土君ッ! これ本当に使っていいお金なの!? 変なところのお金じゃないでしょうね!?」
「いや、どういう意味だよ。お金に変とか普通とかあるのか?」
「だって、見てよこの金額ッ!!」
そういって栞は俺に通帳を突き出してきた。
そこに書かれている数字を見る。
うん、0がいっぱいだ。
えぇっと1,10、100……
「――は? 3千万?」
なんだ、バグってないか? 20万じゃないぞ?
「そうよッ! それにこの3千万とは別に大蓮寺って人から振り込まれてる1千万って何!?」
それこそ知らん。
なぜ俺に金を振り込んできたんだ? くそ、電話するべきか?
いや、でも連絡先知らんぞ!?
「とにかくお父さんに連絡しなきゃッ!」
「す、すごいです! 礼土さん! 大金持ちですよ!!」
「礼土君は、とりあえずこの大蓮寺って人に電話して事情を確認して下さい。いいですね!」
「わ、わかった!」
あれから少し大騒ぎだった。
まず俺は大蓮寺に連絡しようと思い、ネットで電話番号を検索する。
調べると大蓮寺が運営していると思われるホームページが出たため、そこに電話を掛けた。
『はい、大蓮寺心霊所です』
「あーすいません、実は聞きたいことがありまして。大蓮寺さんいますか?」
『……失礼ですがどちら様でしょうか。大蓮寺様は現在精神集中をするため祈祷に入られております。アポもなしに連絡をつなぐことができません。心霊相談の方でしょうか?』
え? 祈祷?
病院行かなくて大丈夫なの? すげぇなあの人。
「いや、相談って訳じゃないんですが、じゃあ牧菜さんいますか?」
『……あの、もしかして勇実さんですか?』
ん? ってことはこの電話の声の主は牧菜か?
電話越しだと意外に分からんな。
「ええ、そうです。もしかして牧菜さんですか?」
『はぁ……それなら最初に名前を言ってくださいよ。というかこの電話は外部のお客様用の電話ですよ? どうしてこちらに電話されたんですか?」
いや、ホームページに書いてあったんだけど…… え、何、ダメなの?
っていうか電話のマナーとか勉強してなかったな。
今度そういう本も買っておくとしよう。
「それは申し訳ない、不勉強なもので」
『いえ、これからは私のスマホに直接電話してください。電話番号は※※※ー※※※※ー※※※※です』
「わかりました。次はそちらにかけるようにしますね。それで質問したいことがあるんだけど」
『あぁお金の件ですか?』
なぜわかる。
っていうか確信犯か?
「随分大金が振り込まれていたんですがあれはどういう……」
『父が言っていたように、あれはただのお礼です。私たちの命を救っていただけたんです。父がいうにはあれでも足りないくらいだと言ってましたよ。ただ自分の命を救ってくれた礼を金だけで終わらせるつもりはないという事です。だから以前にも言ったように何かあれば私たちを頼ってくださいね。まぁ勇実さんほどの人が困ることってそうそうないかもしれませんけどね』
そうか。自分の命を救った礼というわけか。
随分、男前な人だ。自分の命を救ってくれた礼にそこまでの大金を出せる人なんてまずいないだろう。
「分かりました。ではありがたく頂戴しておきます。牧菜さんも何かあれば頼って下さい。霊関係なら何とでもなりますので」
『勇実さんなら本当にその通りなのでなんとも言えないですよ』
そうして少し雑談をして電話は終了した。
だが、どうやら使っていいお金のようだ。
まぁ税金とかあるからそれなりに引かれるのだろうけど、後でどれくらい使えるか具体的に確認しなくてはならないな。
「……あの、礼土君」
「どうしたの?」
どうやら和人との電話が終わったらしい栞が何やら気まずそうにこちらに来た。
「はははは、――実はね?」
やってきた山城家。
久々に来たがやはりデカい家だ。
だが、九条家の屋敷とか見たから前ほど圧倒されなくなったな。
「やあ、礼土君。栞から聞いたよ。順調らしいね」
「和人さん、お久しぶりです」
やはり緊張するな。
田嶋の友人である和人には隙を見せる事は出来ない。
っていうか、俺の事務所の社長だし、マジで油断できん。
和人に案内されリビングのソファーに座る。
軽い談笑をしつつ、本題へ入っていった。
「実はね、栞から礼土君の仕事が中々上手く行かないって聞いていてさ」
「あぁ……それでですか」
「まぁね。まさかあの九条忠則から依頼を受けていたとは驚いたよ。しかも随分気に入られたみたいだしね」
「そうなんですか?」
確かに随分依頼料を貰ってしまった。
っていうか和人、九条の事を知っているのか。やはり金持ち同士謎のネットワークがあるのかもしれないな。
というかだ。あんだけ貰って大丈夫なのか? 心配になってきたぞ。
「彰から聞いたけど、礼土君の住んでるマンションの家賃も半額になったからね」
「え?」
「どうやら九条家の所有するマンション住まいって事を彰から聞いたみたいでね。それでそういう処遇になったんだ。あ、もし別の場所に引っ越ししたかったら、九条家が所有する物件だったらどれでも家賃も半額でいいってさ」
そうか、ありがたい。このままだとピザが制限されそうだったからな。
ふふふ、これなら以前から欲しかったガラス製のチェス盤でも買ってみようかな。
サイトで見た時に一目ぼれしたんだが、すごいカッコいい置物だと思うんだよな。
「さて、話を戻すけど、桐也の件。どうする?」
そう、それが本題だ。
俺はここに来る前の栞の話を思い出す。
『ごめん、礼土君。実はね。中々お客さんもこないからさ。兄さんにちょっと動画で紹介してって頼んじゃったの』
『待ってくれ、栞のお兄さんって確かあの背信してるっていう?』
『そう。礼土君の写真も見せたらビジュアルもいいから、動画のネタに使えそうだって結構乗り気になってくれてね』
背信の動画に俺が出るのか?
俺は無神論者だぞ、何を背信しろというのか。
『なんでもね。心霊スポットに行って霊感ある同じ配信者を呼んで一緒に回るっていう企画を立ててるんだって。それに出て事務所を宣伝すればさ、礼土君カッコいいし、実力も本物だからすぐお客さん増えると思ったの……』
そう栞はあくまで善意でやってくれたのだろう。
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背信って配信って事だったという事実に……
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