Re Do 〜やり直しの祝福を授かった俺は英雄を目指す人生を歩みたい。あわよくば勇者より先に魔王を倒したい〜

アキレサンタ

文字の大きさ
49 / 92

048 炎装、金剛剣

しおりを挟む

 炎を纏った金剛剣が完成した。
 後はブリーの攻撃を受けつつ、その魔炎を断ち切るだけだ。

「リドゥー……ル……。リドゥールァァア!!!」
「さっきから言おうと思ってたけど、俺はリドゥールァじゃないからな!」

 ブリーが一直線にこちらに突っ込んでくる。先程アヅの氷に捕まったことなんて全く意に介していないようだ。狙いはずっと俺。それでいい、俺もお前を倒すことしか考えていないのだから。
 黒き大槌が俺の顔面を狙う。赤き剣がそれに触れると、魔炎が爆発するように立ち消える。――いける。
 再び魔炎が大槌に纏われる。

「何回でも、俺は斬るぞ!」

 根気で負けるつもりはない。何度もやり直すのには慣れている。
 大槌の魔炎を切り裂く。更に纏われたオーラを、すかさず俺は斬る。
 俺の剣が徐々に魔炎の速度を超えていく。剣技を更に高速化させる為、俺は軽く息を吸う。

「練術――」

 自然エネルギーを吸収、気を練り直す。俺の体の輝きが増す一方、剣の器が溢れ始めたのを感じる。……ここが今の俺の限界だ。

「――光身連撃こうしんれんげき!!」

 体が加速する。本来これは敵を同時に討つ際に使う技、練術複式複打の系統上にある。拳で戦うのを基本とするトーキさんの教えでは、剣を振るうことは想定されていない。
 故に高速化する動きの中で、刃が少しずつ限界を迎えていく音がする。

「リドゥールッ! リドゥールァア!!」
「ブリー、俺はお前のことが嫌いだ。大嫌いだ。だけど」

 ブリーの体に刃を立てる。予想通りその身に傷は付かず、魔炎のみが散っていく。アスラの時に彼を本気で殺しかねない勢いで斬った時でさえ、彼の体に傷はなかった。
 つまり、魔炎は宿主の体を守る特性がある。

「魔炎に焼かれていく姿は、大嫌いなお前でも見てられないんだよッ!!」

 大槌と炎剣が打ち合う。
 直後、大槌が弾け飛ぶ。
 そのままその巨体に剣を叩き込む。魔炎が溢れ出し、ブリーの体を守ろうとする。

「おおおおおおおおおおッ!!」

 魔炎に刃が食い込む。だが、あるところで停止してしまう。
 ダメだ、俺の力では最後の魔炎を完全に斬ることが出来ない。アスラの時はソリスがいたから斬れたんだ……!
 ブリーは体を守るように構え、俺はそれを斬ろうと刃を押し込む。二人が完全に膠着状態に入ると、黙っていた青年が呆れ顔でこちらに近付いてくる。

「やれやれ、まだ一人では対処出来ないようだ。ま、ここまででも十分っちゃ十分なんだけど」
「アヅ……! 今、俺は君に構うことは出来ないぞ……!」
「見ればわかるってーの。仕方ないから手伝ってやるゼ」

 そう言うとアヅは杖を俺たちの方へ向ける。
 杖先が輝く。色は……黄色。

「ライトニング!!」
「ぐぅ……!?」

 雷撃魔法がこちらに放たれる。すると、それは膠着状態に陥った俺の剣に纏わりつく。刃の光に黄色が追加され、輝きが増す。
 魔法を剣に纏わせる技術は、ルーンとソリスが戦いの中で編み出したものだったはず。しかしこのアヅは、一度俺がそれをやるのを見ただけで完全にこちらに合わせて魔法を放ってきた。
 ルーンでさえソリスや俺が上手く受け取ることを前提に技を放っているというのに、こいつは……!

「ほら、くだらないこと考えてないで。斬れよ」

 アヅが片目を閉じて俺に告げる。
 魔法が追加され、威力の上がった剣が魔炎にめり込む。
 そして。

「ッッッ!!」

 魔炎が散る。
 ブリーが声もなく体の力を緩め、そのまま倒れ伏せる。

「ワアアアアアアアアアアアアア!!」

 歓声が沸く。
 俺の剣がバチバチ、ごうごうと暴れまわる。
 倒れたブリーを尻目に、俺はアヅと向かい合うとお互いに武器を構える。

「来いよ、リドゥ。俺と遊ぼうゼ」
「……いくぞ!」

 アヅが氷柱を大量に放ってくる。
 俺はそれを避け、叩き斬り、どんどん距離を詰めていく。
 更に彼は巨大な炎を俺へと放つが、俺はマントを覆うだけで突破する。
 炎を突き抜けると、目の前にアヅ。彼は目を見開き、口の両端を思いきり引き上げて笑っている。彼の尖った歯が異常に目に付いた。
 俺は剣を振る。しかし。

「そこまで!!」

 彼の杖と俺の剣が交わる直前。
 審判の声が響いた。

「昇格者リドゥール・ディージュ! アヅイェ・トイラクシ!!」
「……ああ、そうだった」

 アヅがポツリと溢した。
 そうだった。ブリーを倒した時点で終わりなんだった。なんだか決着を付けなくちゃならないテンションになってしまい、つい戦ってしまった。
 交わしかけた武器がそれぞれボオ、という音と共に魔法を解除する。
 歓声と拍手が飛び交う中、俺たちは武器を仕舞って互いを見る。

「リドゥ。キミはなんだかおもしろい奴だな」
「そうかな。アヅの方こそ、恐ろしいくらい強力な魔術師に感じたけど」
「まーね」

 アヅが勝ち誇ったように笑う。
 決着はついていないはずだから俺は負けたわけではない。だからそんな表情を向けられる筋合いはないと、少しムッとする。
 ……とはいえ、続けていれば確実に俺が負けただろうが。

「オレはキミを気に入ったゼ、リドゥ。これからの活躍に期待してやるゼ」
「ありがとう。俺もアヅのことを知れて良かった。これからもギルドで会うだろうし、よろしく」

 俺は右手を差し出す。
 アヅはにこやかにしていたのを少し曇らせ、俺の手を見る。
 何をしているのだろう、握手を返してほしいだけなのだが。

「ああ、握手ね。握手握手」

 そういうと、彼は再び笑顔を見せて俺の手を握った。
 俺たちはランク4へと昇格したのだった。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

冴えない建築家いずれ巨匠へと至る

木工槍鉋
ファンタジー
「建築とは、単なる箱を作ることではない。そこに流れる『時』を設計することだ――」 かつてそう語り、伝説の巨匠と呼ばれることになる男も、かつては己の名前に怯えるだけの冴えない二級建築士だった。 安藤研吾、40代。独立したものの仕事はなく、下請けとして「情緒のない真四角な箱」の図面を引き続ける日々。そんな彼が恩師に教えられた座標の先で迷い込んだのは、昭和初期を彷彿とさせる、魔法のない異世界だった。 現代の建築知識、そして一釘一釘を大切にする頑固大工との出会い。 「便利さ」ではなく「住む人の幸せ」を求めて、研吾は廃村に時計台を建て、水路を拓き、人々の暮らしを再生していく。 異世界で「百年の計」を学んだ研吾が現実世界に戻ったとき、その設計は現代の建築界をも揺るがし始める。 これは、一人の男が仕事への誇りを取り戻し、本物の「巨匠」へと駆け上がるまでの、ひたむきな再建の記録。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

一国一城の主を目指す!〜渇望の日々を超えて。

リョウ
ファンタジー
 何者かになりたかった。  だが現世でその願いは叶わず、男は敗北感と悲嘆を胸に沈んでいた。  そんな彼の前に現れたのは、一柱の女神。  導かれるまま異世界へ転移した男は、新たにレイと名乗り、剣も魔法も身分もない底辺から成り上がることを決意する。  冒険者として生きる術を学び、魔法を覚え、剣を磨き、人と裏社会を見極めながら、レイは少しずつ力を蓄えていく。  目指すのは、ただ生き延びることではない。  一国一城の主となり、この世界で“何者か”になること。  渇望を燃料に、知恵と執念で上へ上へと這い上がる、ダークファンタジー成り上がり譚。

「お前を愛する事はない」を信じたので

あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」 お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。

スライムからパンを作ろう!〜そのパンは全てポーションだけど、絶品!!〜

櫛田こころ
ファンタジー
僕は、諏方賢斗(すわ けんと)十九歳。 パンの製造員を目指す専門学生……だったんだけど。 車に轢かれそうになった猫ちゃんを助けようとしたら、あっさり事故死。でも、その猫ちゃんが神様の御使と言うことで……復活は出来ないけど、僕を異世界に転生させることは可能だと提案されたので、もちろん承諾。 ただ、ひとつ神様にお願いされたのは……その世界の、回復アイテムを開発してほしいとのこと。パンやお菓子以外だと家庭レベルの調理技術しかない僕で、なんとか出来るのだろうか心配になったが……転生した世界で出会ったスライムのお陰で、それは実現出来ることに!! 相棒のスライムは、パン製造の出来るレアスライム! けど、出来たパンはすべて回復などを実現出来るポーションだった!! パン職人が夢だった青年の異世界のんびりスローライフが始まる!!

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

処理中です...