Re Do 〜やり直しの祝福を授かった俺は英雄を目指す人生を歩みたい。あわよくば勇者より先に魔王を倒したい〜

アキレサンタ

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089 メーネの体調不良の原因

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「こほ、こほ」

 誰かの咳の声で俺は目を覚ました。
 夕日の差した、橙色の見知らぬ天井に一瞬だけ驚くが、すぐに意識が覚醒する。今はソリスたちの実家で眠っていたんだった。

「あ、リドゥさん。起こしちゃいました?」

 俺の右側。部屋の入り口側のベッドを見ると、メーネが俺と同じように寝間着姿でベッドの上に座っていた。
 彼女の頬は上気しており、それが夕焼けのせいではないことは俺にもわかった。

「メーネ、どうしたの?」
「あは。えっとわたし昔から体が弱くて……よく体調を崩しちゃうんです」
「……そうなんだ」

 未来のソリスとルーンが言っていた。昔から彼女の体は強くない。パンク寸前に見えていた、と。
 メーネが体調不良でベッドに寝ていたことは今の状態でも十分にわかる。そして死して尚溢れていた強力な魔力が彼女の体にはある。
 俺は寝転んだまま、じっと目を凝らして少女を観察する。人には多かれ少なかれ魔力が流れている。その流れに違和感がないか……。

「……リドゥさんのえっち」
「へ!?」

 俺は驚いてベッドから飛び起きた、
 メーネは俺の視線に耐えきれなくなったらしく、なんの膨らみもない胸元を腕で隠す。俺の方へ背を向けて、少し開けていたらしいボタンを閉め始めた。

「いや、そういうつもりで見てないよ! というかボタンが開いていたことも気付いてなかった!」
「ほんとですかぁ? なんかじ~とわたしの方見てるから、なにかなぁと思ったらボタン開いてて。リドゥさんがそれを見るんだ~と思いましたよぉ」
「違う違う! 魔力の流れを見て――おっと」

 ふらりと頭が揺れ、俺は額に手をおいてそれを支えた。

「大丈夫ですか?」
「ああ、大丈夫。ただの風邪らしいし、ちょっと驚いちゃって」
「あは、からかってごめんなさい」
「……いいよ。でもソリスとルーンの前ではそういう冗談やめてくださいね!? マジで!」
「あはは」

 メーネに邪な気持ちを抱いているなんて勘違いされたら、本気で二人が俺を殺しに来そうだ。

「それで、魔力を見てたって言いました?」
「そうそう。メーネが昔から体調が悪いっていうから、その辺りに原因がないかなと思って」
「うーん……でもそういうのはお兄ちゃんがすぐに気付きそうですけどね」
「まあね」

 俺は再度メーネの体を見る。魔力の流れに異常はない。
 ルーンは俺よりも魔力について詳しいんだ。この程度の検査はきっと既に行っている。
 だが俺は知っている。彼女の体のどこかに膨大な魔力があって、それが確実に存在することを。
 知っていると知らないとでは見付けるにあたってかなりの差が生じることだろう。ルーンはあらゆる可能性から探っているだろうが、俺は魔力の一点に集中して彼女の体を調べる。

「……見すぎです、リドゥさん」
「あ、あはは。ごめんごめん」

 再びメーネが自身の体を腕で隠した。友達の妹の体を凝視する男。……うん、これはヤバい奴だ、
 俺はアプローチを変えてみる。目を瞑り、気を集中する。

「練術――!? これは」
「?」

 メーネが首を傾げている。
 俺はすぐに膨大な魔力を感知する。練術を使わないと気付けない程小さな範囲に、確かに存在する。

「何かわかりました?」
「ああ。やっぱり魔力が奔流してる。だけどどこにあるかわからない……」

 見た目ではわからない。
 触れてみればきっと見付けられるんだろうが、彼女の体に無作為に触れるのはあらゆる意味で憚られる。

「手くらいならいいですよ? はい」

 俺の心を読んだのか、メーネは告げた。
 こういうところルーンとめちゃくちゃ似てるな、と俺は内心ビビっていた。
 俺は差し出された左手を握る。目を瞑り、練術を彼女の体に流していく。これは散々未来で練習してきたので、ある程度限界値を理解している節があった。
 彼女の体を壊さない加減で、練術が彼女の体を満たしていく。
 そして見つける。魔力を秘めた一点。

「……口?」

 正確にはその舌と唇。
 内臓系でないことは実はわかっていた。何故なら彼女が死体だった時、その部位は完全に腐りきっていたから。
 そうだ、口だ。よく考えれば操られたメーネの口は開き切っていた。そこから魔力を放出していたのか。

「メーネ。もしかして君はたくさん話すと体調がよくなったりするんじゃないか」
「え……なんで知ってるんですか? お母さんには寝るように言われるんですけど、昔からお兄ちゃんやお姉ちゃんと話した方が楽になってたんです」

 魔力の溜まった部位が動く度に、少しずつ魔力が放出されていく。それは僅かな量で更に言うとすぐに空気に霧散していくので、恐らくルーンには気付けない程だ。
 それこそ、ルーンが彼女の唇に触れ続けていれば気付けるだろうが、人と話すのに相手の口を塞ぐような行為は普通しない。
 俺が練術で全身を感知していたから、やっと気付けた。

「君の魔力が口の周りに溜められている。恐らくそれが悪く作用して君の体に負担を強いるんだ。たくさん話したり、物をたくさん食べる時にそれが少しだけ消費されるから今までは楽になれたんだ」
「口に……?」
「メーネの魔力量を考えれば、全身に流れる量がもっと多くないとおかしいんだ。それが今は普通の人と同じレベルか、少ないくらいだった。イメージでいうと全身がうっ血しているような。そんな風に見えた」
「わたしはどうすれば……?」
「誰かに魔力を預けることが出来るならそれが一番即効性があるかもしれない。だけど一番いいのは、君自身で魔力の流れを大きく強くすることだ」

 それをするにはどうすればいいか俺にはわからない。だけどルーンにならわかるかもしれない。
 この発見はデカいはずだ。早く彼に知らせないと。
 そう思い、俺は立ち上がる。ふら、と立ち眩みが襲った。

「リドゥさん!」

 俺がそのまま床に倒れ込みそうになったところに、繋いだままだったメーネの手が俺を引いた。
 彼女のベッドの方へ倒れてしまう。

「わ、わわ」

 メーネの顔が眼前に広がる。自分で俺を引き込んだのに、彼女は顔を真っ赤にしていた。
 俺はその様子にくすりと笑うと、すぐに彼女から離れようとベッドに手を付いた。
 だが、その時。

「メーネー、リドゥ起きてる? お母さんが晩御飯作ってくれたんだ……けど……」
「お、お姉ちゃん!?」

 ソリスが俺たちの部屋へ入ってきた。
 その表情が固まるのを感じた俺は、練術で体を防御した。

「リドゥウウウウおらああああああ!!」

 最早言い訳はしない。メーネを押し倒して今にも口付けでもしそうな程に顔を近付けている。
 俺だってそんな光景を見たらキレる。それが可愛い妹なら尚更だ。
 ただ、ガードだけはさせてほしい。ので、その為の練術だ。
 一旦好きなようにさせて、言い訳は後でしよう。

「アタシの可愛い妹に何してんだあああああああ!!」

 ソリスの怒りのキックが俺の脇腹に突き刺さる。病人だろうとお構いなしな辺り、彼女らしいなと俺は微笑んだ。
 そしてそのまま蹴り上げられると、激痛と共に浮遊感が俺を襲う。直後に背中と後頭部に衝撃。体調が悪いこともあり、吐き気が押し寄せるので口を押さえた。
 重力のままに地面に叩きつけられると、ソリスによる罵詈雑言の嵐が降ってきた。
 俺は痛みに悶えつつ、罵倒も重力に従って下に向かって落ちるんだなあとか馬鹿なことを考えていた。罵倒と言えど、その言葉の一つ一つにメーネへの愛情を感じる。
 ソリスらしい、実にソリスらしい制裁だ。

 だけど、少しは俺がそんなことをしないと信頼しておいてほしかったと、一言文句は言いたい気分だった。
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