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5.ナディア監禁・決心
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朦朧とする意識のまま、親衛隊員に運ばれ王城のどこか一室に監禁された。
奥隅に使い古されたシングルベッドと、三本足のテーブルしかない殺風景な部屋。吊り下げ型の燭台。太いけど一本のロウソクの灯りだけでは薄暗く怖い。
何もできず私はヘナヘナと床に座り込んだ。
胸に手をあてて聖句を念じるが──
(⋯⋯聖なる力を⋯⋯感じない⋯⋯)
いつしか普通になっていた女神を近くに感じない。
女神の愛が私の心に注がれてこない。
絶好調の時は欠伸まで聞こえていたのに──
(不調⋯⋯違う⋯⋯愛の欲求不足、違う⋯⋯嫉妬、違う⋯⋯罪や罰、違う)
危うい所をマイハの乱入によって免れたけれど、また恐怖がぶり返す。
止めどなく涙が溢れ、周りが滲んで見える。
(婚約⋯⋯破棄⋯⋯掃き⋯⋯掃除)
少しショックが収まるまで、ぼう然と何時間経ったのか、いつしか冷静に掃除のことを考えだしていた。
いっそ天井や壁の蜘蛛の巣を取り、床は拭き掃除をすればすぐ綺麗になりそう。あと絵画や調度品を置けば普通に使えそうだった。
私は牢屋に連行されると思ったけれど──
静かな部屋に縄を解かれ、私は重い足枷だけをされ放置され、ひとりポツン。
(⋯⋯今、何時ごろだろう?)
もう正確な時間なんか分からない。
ふいに、いつの間に着替えさせられた粗末な貫頭衣を手で触った。ブラもショーツも着用していて安心したのと、誰が着せたのか不思議と思い出せなかった。
(あれ⋯⋯ん? 何? かさ張るわ⋯⋯)
左胸の違和感に気付き、微妙にサイズのあってないブラを外す。
すると小さな布切れが胸に隠すように忍ばせてあった。四つ折りを開けると──
【ベッド、右脚、三回】と暗号じみた文字が記してある。
全く意味がわからない。
(いったい、誰が⋯⋯)
ハッと後ろを振り返る。
誰もいない。
ドアの外には見張りがいると思うけど、部屋には私しかいない。
深呼吸して、音を立てないようしゃがんだ。
一応シングルベッドの右脚を見てみる。
丸脚。木製。
取れない。
(あれ!? 頭側? それとも⋯⋯足側?)
考えてても仕方がないので、床を見るため頭側をずらし足側もずらした。木板の床には円形の跡があり埃が溜まってない。長い間、動かしてないようだった。その円形の場所を人差し指で三回トントントンと押した。
──けれど何も起こらない。
ぺたんと床に座ると深い溜息が出た。
騙された脱力感、急激に睡魔が混ざりはじめ張っていた気が緩んできていた。
うとうと居眠り、自然と目が閉じ頭が前後に揺れる。
コ、コッ、コッ⋯⋯。
近くで何かが当たる音がして、肩がビクッと上下した。
「ひ⋯⋯ぃっつ!」
慌てて私は口に手をあてる。
誰もいないはずの部屋で音がした。
冷たい汗が背筋をつーと流れ、腰あたりで吸収されるまでのゾワゾワ感に耐えた。
「⋯⋯あぁ、女神さま⋯⋯」
悪霊退散を祈るまま、恐る恐る音がした方を見る。
もちろん誰もいない。ただ足枷の鉄鎖が壁側に伸びていた。
(よよよかった。ここの床に傾斜があるのかな?)
鉄球が転がるのを止め、私は納得する。
眠気のかくかくに鉄鎖が呼応するたび、鉄球が壁にぶつかった音だとわかった。
「えっ!?」
さらに鉄球が当たった場所で発見する。
壁の下部分、床と壁が接地する所の巾木に隙間ができていた。隠し戸を指爪で浮かし取り外す。
空洞の中には木箱があった。開けてみると中には小瓶ポーションが三本と羊皮紙が一巻き。私はスルスル紐解く。
【三日間耐えてください
必ず助け出します】
おそらくは女性の筆跡。
ほんの二行、しかも短く要件だけしかない。差出人の名前も、救出方法すらも書いてない文章だった。
だけどだけどだけど、胸が熱くなった。涙が溢れた、聖女の力を失った私でも救いの神様はいた。たとえ三日後に何もなくても、私は三日間、生きる勇気はもらえた。
絶対に生きる。
もうどんなに祈りを捧げても、奇蹟は起こらない。
恋は一瞬で終わり、裏切られた愛は憎悪に変わる。
そう古から云われているように、自分がそんな風になるなんて思いもよらなかった。
でも、結局は恋人の行動や態度への不信感、小さな疑いや不満の蓄積でも愛は憎しみに変わるという。
婚約者に利用され、初恋を踏みにじられ──あんな酷い仕打ちをされた。
さらに、これからも何をされるか怖いし分からない。
(もう⋯⋯想いは⋯⋯断ち切るわ⋯⋯)
ガタンッ!!
決心したと同時に床から物音がした。
ほんの直近まで気づかなかった不思議な音。
大きいはずの音、けれど、至近距離なのに小さな音。
どこか音の響きにも違和感があった。
奥隅に使い古されたシングルベッドと、三本足のテーブルしかない殺風景な部屋。吊り下げ型の燭台。太いけど一本のロウソクの灯りだけでは薄暗く怖い。
何もできず私はヘナヘナと床に座り込んだ。
胸に手をあてて聖句を念じるが──
(⋯⋯聖なる力を⋯⋯感じない⋯⋯)
いつしか普通になっていた女神を近くに感じない。
女神の愛が私の心に注がれてこない。
絶好調の時は欠伸まで聞こえていたのに──
(不調⋯⋯違う⋯⋯愛の欲求不足、違う⋯⋯嫉妬、違う⋯⋯罪や罰、違う)
危うい所をマイハの乱入によって免れたけれど、また恐怖がぶり返す。
止めどなく涙が溢れ、周りが滲んで見える。
(婚約⋯⋯破棄⋯⋯掃き⋯⋯掃除)
少しショックが収まるまで、ぼう然と何時間経ったのか、いつしか冷静に掃除のことを考えだしていた。
いっそ天井や壁の蜘蛛の巣を取り、床は拭き掃除をすればすぐ綺麗になりそう。あと絵画や調度品を置けば普通に使えそうだった。
私は牢屋に連行されると思ったけれど──
静かな部屋に縄を解かれ、私は重い足枷だけをされ放置され、ひとりポツン。
(⋯⋯今、何時ごろだろう?)
もう正確な時間なんか分からない。
ふいに、いつの間に着替えさせられた粗末な貫頭衣を手で触った。ブラもショーツも着用していて安心したのと、誰が着せたのか不思議と思い出せなかった。
(あれ⋯⋯ん? 何? かさ張るわ⋯⋯)
左胸の違和感に気付き、微妙にサイズのあってないブラを外す。
すると小さな布切れが胸に隠すように忍ばせてあった。四つ折りを開けると──
【ベッド、右脚、三回】と暗号じみた文字が記してある。
全く意味がわからない。
(いったい、誰が⋯⋯)
ハッと後ろを振り返る。
誰もいない。
ドアの外には見張りがいると思うけど、部屋には私しかいない。
深呼吸して、音を立てないようしゃがんだ。
一応シングルベッドの右脚を見てみる。
丸脚。木製。
取れない。
(あれ!? 頭側? それとも⋯⋯足側?)
考えてても仕方がないので、床を見るため頭側をずらし足側もずらした。木板の床には円形の跡があり埃が溜まってない。長い間、動かしてないようだった。その円形の場所を人差し指で三回トントントンと押した。
──けれど何も起こらない。
ぺたんと床に座ると深い溜息が出た。
騙された脱力感、急激に睡魔が混ざりはじめ張っていた気が緩んできていた。
うとうと居眠り、自然と目が閉じ頭が前後に揺れる。
コ、コッ、コッ⋯⋯。
近くで何かが当たる音がして、肩がビクッと上下した。
「ひ⋯⋯ぃっつ!」
慌てて私は口に手をあてる。
誰もいないはずの部屋で音がした。
冷たい汗が背筋をつーと流れ、腰あたりで吸収されるまでのゾワゾワ感に耐えた。
「⋯⋯あぁ、女神さま⋯⋯」
悪霊退散を祈るまま、恐る恐る音がした方を見る。
もちろん誰もいない。ただ足枷の鉄鎖が壁側に伸びていた。
(よよよかった。ここの床に傾斜があるのかな?)
鉄球が転がるのを止め、私は納得する。
眠気のかくかくに鉄鎖が呼応するたび、鉄球が壁にぶつかった音だとわかった。
「えっ!?」
さらに鉄球が当たった場所で発見する。
壁の下部分、床と壁が接地する所の巾木に隙間ができていた。隠し戸を指爪で浮かし取り外す。
空洞の中には木箱があった。開けてみると中には小瓶ポーションが三本と羊皮紙が一巻き。私はスルスル紐解く。
【三日間耐えてください
必ず助け出します】
おそらくは女性の筆跡。
ほんの二行、しかも短く要件だけしかない。差出人の名前も、救出方法すらも書いてない文章だった。
だけどだけどだけど、胸が熱くなった。涙が溢れた、聖女の力を失った私でも救いの神様はいた。たとえ三日後に何もなくても、私は三日間、生きる勇気はもらえた。
絶対に生きる。
もうどんなに祈りを捧げても、奇蹟は起こらない。
恋は一瞬で終わり、裏切られた愛は憎悪に変わる。
そう古から云われているように、自分がそんな風になるなんて思いもよらなかった。
でも、結局は恋人の行動や態度への不信感、小さな疑いや不満の蓄積でも愛は憎しみに変わるという。
婚約者に利用され、初恋を踏みにじられ──あんな酷い仕打ちをされた。
さらに、これからも何をされるか怖いし分からない。
(もう⋯⋯想いは⋯⋯断ち切るわ⋯⋯)
ガタンッ!!
決心したと同時に床から物音がした。
ほんの直近まで気づかなかった不思議な音。
大きいはずの音、けれど、至近距離なのに小さな音。
どこか音の響きにも違和感があった。
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