6 / 44
第6話
しおりを挟む
「おはようございます、エレン様」
「おはよう、アン。」
公爵家に嫁いでから1ヶ月が経った。あれから私は、お義母さまに侯爵夫人としての仕事を教わりながら過ごしている。
アーネスト様とはお会いしてない。
結婚してから知ったのだが、アーネスト様は忙しい仕事の合間に時間を見つけては、グレイバック公爵家へ赴きアリス様の側に寄り添われている。
そのため邸にはほとんど寝に帰ってきているだけという状態だ。
「アーネスト様は今日ももう出発されたのかしら?」
「はい。」
朝早くから仕事というわけではない。
アリス様の元へ行かれて、しばらく側で過ごされてから仕事へ向かわれるのだ。
「私の今日の予定は?」
「本日は、朝食の後は大奥様より家計についての講義を受けて頂きます。午後は大奥様がお茶会へお出かけになりますので、エレン様は自由にお過ごし頂いて良いそうです。」
「そう。それならば午後は何をしようかしらね・・・」
結婚する前は、少しでも何かを身につけたくてずっと勉強していた。
けれど、嫁いでからは何だか気が抜けてしまって。自由にして良いと言われると、どうしたらいいのか分からなくなる。
「エレン様はお花がお好きなようですので、温室の方へ行かれてみてはいかがですか?」
「そういえば、大きな温室があると伺ったわね。私が勝手に行ってもいいのかしら?」
「もちろんです。エレン様の邸でもあるのですから。」
一時的にではあるけれどね。まあ温室くらいなら咎められないわよね?
「それなら、午後は温室へ行ってみるわ。」
「かしこまりました。」
○○○
本当に大きな温室だわ。こんなに立派な温室をお持ちだなんて。さすが侯爵家ね。
だけど・・・あまり植物は育っていないわね。皆様はあまり興味がないのかしら?
なんだかしおれてしまっている植物が多くて悲しい。
あまり手入れが行き届いていない温室に寂しい気持ちになってしまって、つい魔法を使った。
「!!!エレン様!?これはいったい・・・」
同行していたアンが驚いている。
「私、緑魔法を使えるのよ。植物の成長を促進するしか使い道は無いのだけどね。」
「緑魔法ですか、なるほど。しかし、これほどまでに一瞬にして多くの植物が元気になるなんて・・・」
私は植物が大好きなのもあって、緑魔法をこどもの頃からよく使っていた。
学園でもこっそり学園中の植物に使って元気にさせていた。
そんなことをしていたら、無駄に魔力が強まってしまったようなのだ。
大した使い道も無いのに。
「これからは、この温室を私の自由にさせてもらえないか、お義母さまに聞いてみようかしら。」
「そうしましょう!なんだか・・・ここに居ると私も元気になるような気がします。」
「ふふふ。アンて可愛い人ね。私の魔法に喜んでくれる人なんて初めてだわ。アンのおかげで私も元気が出たわ。ありがとう。」
そう言うと、アンは真っ赤になって俯いてしまった。
その日のうちにお義母さまの了承を頂いて、温室は私の所有となった。
「おはよう、アン。」
公爵家に嫁いでから1ヶ月が経った。あれから私は、お義母さまに侯爵夫人としての仕事を教わりながら過ごしている。
アーネスト様とはお会いしてない。
結婚してから知ったのだが、アーネスト様は忙しい仕事の合間に時間を見つけては、グレイバック公爵家へ赴きアリス様の側に寄り添われている。
そのため邸にはほとんど寝に帰ってきているだけという状態だ。
「アーネスト様は今日ももう出発されたのかしら?」
「はい。」
朝早くから仕事というわけではない。
アリス様の元へ行かれて、しばらく側で過ごされてから仕事へ向かわれるのだ。
「私の今日の予定は?」
「本日は、朝食の後は大奥様より家計についての講義を受けて頂きます。午後は大奥様がお茶会へお出かけになりますので、エレン様は自由にお過ごし頂いて良いそうです。」
「そう。それならば午後は何をしようかしらね・・・」
結婚する前は、少しでも何かを身につけたくてずっと勉強していた。
けれど、嫁いでからは何だか気が抜けてしまって。自由にして良いと言われると、どうしたらいいのか分からなくなる。
「エレン様はお花がお好きなようですので、温室の方へ行かれてみてはいかがですか?」
「そういえば、大きな温室があると伺ったわね。私が勝手に行ってもいいのかしら?」
「もちろんです。エレン様の邸でもあるのですから。」
一時的にではあるけれどね。まあ温室くらいなら咎められないわよね?
「それなら、午後は温室へ行ってみるわ。」
「かしこまりました。」
○○○
本当に大きな温室だわ。こんなに立派な温室をお持ちだなんて。さすが侯爵家ね。
だけど・・・あまり植物は育っていないわね。皆様はあまり興味がないのかしら?
なんだかしおれてしまっている植物が多くて悲しい。
あまり手入れが行き届いていない温室に寂しい気持ちになってしまって、つい魔法を使った。
「!!!エレン様!?これはいったい・・・」
同行していたアンが驚いている。
「私、緑魔法を使えるのよ。植物の成長を促進するしか使い道は無いのだけどね。」
「緑魔法ですか、なるほど。しかし、これほどまでに一瞬にして多くの植物が元気になるなんて・・・」
私は植物が大好きなのもあって、緑魔法をこどもの頃からよく使っていた。
学園でもこっそり学園中の植物に使って元気にさせていた。
そんなことをしていたら、無駄に魔力が強まってしまったようなのだ。
大した使い道も無いのに。
「これからは、この温室を私の自由にさせてもらえないか、お義母さまに聞いてみようかしら。」
「そうしましょう!なんだか・・・ここに居ると私も元気になるような気がします。」
「ふふふ。アンて可愛い人ね。私の魔法に喜んでくれる人なんて初めてだわ。アンのおかげで私も元気が出たわ。ありがとう。」
そう言うと、アンは真っ赤になって俯いてしまった。
その日のうちにお義母さまの了承を頂いて、温室は私の所有となった。
44
あなたにおすすめの小説
寡黙な貴方は今も彼女を想う
MOMO-tank
恋愛
婚約者以外の女性に夢中になり、婚約者を蔑ろにしたうえ婚約破棄した。
ーーそんな過去を持つ私の旦那様は、今もなお後悔し続け、元婚約者を想っている。
シドニーは王宮で側妃付きの侍女として働く18歳の子爵令嬢。見た目が色っぽいシドニーは文官にしつこくされているところを眼光鋭い年上の騎士に助けられる。その男性とは辺境で騎士として12年、数々の武勲をあげ一代限りの男爵位を授かったクライブ・ノックスだった。二人はこの時を境に会えば挨拶を交わすようになり、いつしか婚約話が持ち上がり結婚する。
言葉少ないながらも彼の優しさに幸せを感じていたある日、クライブの元婚約者で現在は未亡人となった美しく儚げなステラ・コンウォール前伯爵夫人と夜会で再会する。
※設定はゆるいです。
※溺愛タグ追加しました。
【完結】好きでもない私とは婚約解消してください
里音
恋愛
騎士団にいる彼はとても一途で誠実な人物だ。初恋で恋人だった幼なじみが家のために他家へ嫁いで行ってもまだ彼女を思い新たな恋人を作ることをしないと有名だ。私も憧れていた1人だった。
そんな彼との婚約が成立した。それは彼の行動で私が傷を負ったからだ。傷は残らないのに責任感からの婚約ではあるが、彼はプロポーズをしてくれた。その瞬間憧れが好きになっていた。
婚約して6ヶ月、接点のほとんどない2人だが少しずつ距離も縮まり幸せな日々を送っていた。と思っていたのに、彼の元恋人が離婚をして帰ってくる話を聞いて彼が私との婚約を「最悪だ」と後悔しているのを聞いてしまった。
【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜
高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。
婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。
それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。
何故、そんな事に。
優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。
婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。
リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。
悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。
女性治療師と距離が近いのは気のせいなんかじゃない
MOMO-tank
恋愛
薬師の腕を上げるために1年間留学していたアリソンは帰国後、次期辺境伯の婚約者ルークの元を訪ねた。
「アリソン!会いたかった!」
強く抱きしめ、とびっきりの笑顔で再会を喜ぶルーク。
でも、彼の側にはひとりの女性、治療師であるマリアが居た。
「毒矢でやられたのをマリアに救われたんだ」
回復魔法を受けると気分が悪くなるルークだが、マリアの魔法は平気だったらしい。
それに、普段は決して自分以外の女性と距離が近いことも笑いかけることも無かったのに、今の彼はどこかが違った。
気のせい?
じゃないみたい。
※設定はゆるいです。
【完結】愛したあなたは本当に愛する人と幸せになって下さい
高瀬船
恋愛
伯爵家のティアーリア・クランディアは公爵家嫡男、クライヴ・ディー・アウサンドラと婚約秒読みの段階であった。
だが、ティアーリアはある日クライヴと彼の従者二人が話している所に出くわし、聞いてしまう。
クライヴが本当に婚約したかったのはティアーリアの妹のラティリナであったと。
ショックを受けるティアーリアだったが、愛する彼の為自分は身を引く事を決意した。
【誤字脱字のご報告ありがとうございます!小っ恥ずかしい誤字のご報告ありがとうございます!個別にご返信出来ておらず申し訳ございません( •́ •̀ )】
行き場を失った恋の終わらせ方
当麻月菜
恋愛
「君との婚約を白紙に戻してほしい」
自分の全てだったアイザックから別れを切り出されたエステルは、どうしてもこの恋を終わらすことができなかった。
避け続ける彼を求めて、復縁を願って、あの日聞けなかった答えを得るために、エステルは王城の夜会に出席する。
しかしやっと再会できた、そこには見たくない現実が待っていて……
恋の終わりを見届ける貴族青年と、行き場を失った恋の中をさ迷う令嬢の終わりと始まりの物語。
※他のサイトにも重複投稿しています。
悪役令嬢の涙
拓海のり
恋愛
公爵令嬢グレイスは婚約者である王太子エドマンドに卒業パーティで婚約破棄される。王子の側には、癒しの魔法を使え聖女ではないかと噂される子爵家に引き取られたメアリ―がいた。13000字の短編です。他サイトにも投稿します。
【完結】薔薇の花をあなたに贈ります
彩華(あやはな)
恋愛
レティシアは階段から落ちた。
目を覚ますと、何かがおかしかった。それは婚約者である殿下を覚えていなかったのだ。
ロベルトは、レティシアとの婚約解消になり、聖女ミランダとの婚約することになる。
たが、それに違和感を抱くようになる。
ロベルト殿下視点がおもになります。
前作を多少引きずってはいますが、今回は暗くはないです!!
11話完結です。
この度改編した(ストーリーは変わらず)をなろうさんに投稿しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる