19 / 44
第17話 side アーネスト
しおりを挟む
ついに我が家に養子を迎えた。
結婚前から、親戚の幼い子ども達の中から何人かに目星をつけていた。
結婚してからは何度もその子ども達のもとへ足を運んだり、家庭教師達からの報告を受けたりと人選には時間をかけた。
そして、学力・魔力・体力・性格と全てにおいて合格点のネイサン・サルベールを養子に選んだ。
実は性格面を除けば、最も優秀な子は他にいた。
しかし、義母となるエレンとの相性を考慮すると性格面を除くことはできなかった。
両親が領地へ引っ越し、私は多忙なため必然的にエレンと養子がともに過ごす時間が長くなる。
あの穏やかで優しいエレンが辛い思いをしないようにと、エレンとの相性を考慮した。
しかし、ネイサンとの初対面のあとエレンに言われた言葉に驚いた。
『アリスのことを説明していないのか』
『エレンを義母だと思っていたら、後々ネイサンが戸惑う』
もちろん、アリスは最愛の人で忘れたことなどない。
しかしネイサンの義母はエレンだと思っていて、アリスが義母だとは思いつかなかった。
いつの間にか私は、私の妻でありネイサンの義母であるのはエレンだと、そう思っていたのだ。
たしかに以前までは、エレンは他人だと思っていたのに。
気がつけばエレンは私の妻という認識に変わっていた。
そして一番驚いたことは。
エレンが当然のように、自分は義母でも妻でもないと思っているだろうという事実に気が付いてショックを受けた事だ。
これはきっと愛ではない。情なのかもしれない。
でもその境界線は非常に曖昧だ。
この気持ちを捨てるべきなのか。
いや、捨てられるのか。
決めきれないままに私とエレンとネイサンの3人で共有する時間が増えていく。
○○○
結局、ネイサンにアリスとの事やエレンとの契約のことを話すことが出来ないままに過ごしている。
ネイサンの情緒を育てるためだと言い訳をして、朝食と夕食は3人で一緒にとるようになった。
3人で家族として過ごす時間は心安まる時間だ。
「ネイサン、今日はどうやって一日過ごした?」
「今日は、午前中は家庭教師の先生と勉強して、午後は魔法の練習と乗馬の練習をしました。あ、あと休憩時間はエレン様と温室でお話しました。」
夕食の時間にはこうやってネイサンに、その日の出来事を聞いている。
ほぼ毎日エレンと温室へ行っているらしい。
「そうか。」
「はい。」
「随分、エレンの温室が気に入っているようだな。」
「はい。温室に行くとなんだか元気になります。エレン様も優しくて、とても居心地がいいです。」
・・・たしかにあの温室は素晴らしい。私も久しぶりに行きたい。
「私もネイサンと温室でゆっくりお話をするのが毎日楽しみです。ネイサンは本当に勉強も訓練も頑張っていますね。偉いですね。」
「えへへ。」
エレンが優しいまなざしでネイサンを見ながら褒める。
二人の仲は非常に良好なようだ。
・・・うらやましい。
「近々、久しぶりに私も温室に行こう。たまには3人でお茶をするのもいい。」
エレンが驚いている。
「え、えぇ、そうですね。」
「わぁ!楽しみですね!」
○○○
3人でお茶会をする予定のため温室へ向かおうとしたところで、急ぎの報せが届く。
『アリスの容態が悪い』
私はお茶会を中止して、急いでグレイバック公爵家のアリスの元へ向かう。
「アリス!どうして急に!こんな事今まで無かったのに!」
公爵様にも医師にも原因が分からないらしい。
それから私はひたすらアリスの傍にいた。
そうして3日目にようやくアリスの容態が落ち着いた。
「アーネスト、ずっと付き添ってもらってすまなかったね。実は、以前から少しづつ容態が悪化してきていたのだよ・・・。でも君には言えなかったんだ。ついにその時が来てしまったのかと思って君に連絡したんだが・・・。やはりアリスはアーネストを愛しているのだろうね。」
「・・・以前から?・・・気づきませんでした・・・」
エレンとネイサンと家族として時間を共にするようになってから、自然とアリスの元へ来る時間が減っていた。
もしかしたら、アリスは私の気持ちがアリスから離れてしまったと感じ取ったのかもしれない。
アリスが眠りについてから17年以上も経つが、こんな事は今まで一度もなかった。
そして私は改めて感じた。
アリスを失うなんて耐えられない。
「アリス、やっぱり私が愛しているのはアリスだよ。」
結婚前から、親戚の幼い子ども達の中から何人かに目星をつけていた。
結婚してからは何度もその子ども達のもとへ足を運んだり、家庭教師達からの報告を受けたりと人選には時間をかけた。
そして、学力・魔力・体力・性格と全てにおいて合格点のネイサン・サルベールを養子に選んだ。
実は性格面を除けば、最も優秀な子は他にいた。
しかし、義母となるエレンとの相性を考慮すると性格面を除くことはできなかった。
両親が領地へ引っ越し、私は多忙なため必然的にエレンと養子がともに過ごす時間が長くなる。
あの穏やかで優しいエレンが辛い思いをしないようにと、エレンとの相性を考慮した。
しかし、ネイサンとの初対面のあとエレンに言われた言葉に驚いた。
『アリスのことを説明していないのか』
『エレンを義母だと思っていたら、後々ネイサンが戸惑う』
もちろん、アリスは最愛の人で忘れたことなどない。
しかしネイサンの義母はエレンだと思っていて、アリスが義母だとは思いつかなかった。
いつの間にか私は、私の妻でありネイサンの義母であるのはエレンだと、そう思っていたのだ。
たしかに以前までは、エレンは他人だと思っていたのに。
気がつけばエレンは私の妻という認識に変わっていた。
そして一番驚いたことは。
エレンが当然のように、自分は義母でも妻でもないと思っているだろうという事実に気が付いてショックを受けた事だ。
これはきっと愛ではない。情なのかもしれない。
でもその境界線は非常に曖昧だ。
この気持ちを捨てるべきなのか。
いや、捨てられるのか。
決めきれないままに私とエレンとネイサンの3人で共有する時間が増えていく。
○○○
結局、ネイサンにアリスとの事やエレンとの契約のことを話すことが出来ないままに過ごしている。
ネイサンの情緒を育てるためだと言い訳をして、朝食と夕食は3人で一緒にとるようになった。
3人で家族として過ごす時間は心安まる時間だ。
「ネイサン、今日はどうやって一日過ごした?」
「今日は、午前中は家庭教師の先生と勉強して、午後は魔法の練習と乗馬の練習をしました。あ、あと休憩時間はエレン様と温室でお話しました。」
夕食の時間にはこうやってネイサンに、その日の出来事を聞いている。
ほぼ毎日エレンと温室へ行っているらしい。
「そうか。」
「はい。」
「随分、エレンの温室が気に入っているようだな。」
「はい。温室に行くとなんだか元気になります。エレン様も優しくて、とても居心地がいいです。」
・・・たしかにあの温室は素晴らしい。私も久しぶりに行きたい。
「私もネイサンと温室でゆっくりお話をするのが毎日楽しみです。ネイサンは本当に勉強も訓練も頑張っていますね。偉いですね。」
「えへへ。」
エレンが優しいまなざしでネイサンを見ながら褒める。
二人の仲は非常に良好なようだ。
・・・うらやましい。
「近々、久しぶりに私も温室に行こう。たまには3人でお茶をするのもいい。」
エレンが驚いている。
「え、えぇ、そうですね。」
「わぁ!楽しみですね!」
○○○
3人でお茶会をする予定のため温室へ向かおうとしたところで、急ぎの報せが届く。
『アリスの容態が悪い』
私はお茶会を中止して、急いでグレイバック公爵家のアリスの元へ向かう。
「アリス!どうして急に!こんな事今まで無かったのに!」
公爵様にも医師にも原因が分からないらしい。
それから私はひたすらアリスの傍にいた。
そうして3日目にようやくアリスの容態が落ち着いた。
「アーネスト、ずっと付き添ってもらってすまなかったね。実は、以前から少しづつ容態が悪化してきていたのだよ・・・。でも君には言えなかったんだ。ついにその時が来てしまったのかと思って君に連絡したんだが・・・。やはりアリスはアーネストを愛しているのだろうね。」
「・・・以前から?・・・気づきませんでした・・・」
エレンとネイサンと家族として時間を共にするようになってから、自然とアリスの元へ来る時間が減っていた。
もしかしたら、アリスは私の気持ちがアリスから離れてしまったと感じ取ったのかもしれない。
アリスが眠りについてから17年以上も経つが、こんな事は今まで一度もなかった。
そして私は改めて感じた。
アリスを失うなんて耐えられない。
「アリス、やっぱり私が愛しているのはアリスだよ。」
35
あなたにおすすめの小説
寡黙な貴方は今も彼女を想う
MOMO-tank
恋愛
婚約者以外の女性に夢中になり、婚約者を蔑ろにしたうえ婚約破棄した。
ーーそんな過去を持つ私の旦那様は、今もなお後悔し続け、元婚約者を想っている。
シドニーは王宮で側妃付きの侍女として働く18歳の子爵令嬢。見た目が色っぽいシドニーは文官にしつこくされているところを眼光鋭い年上の騎士に助けられる。その男性とは辺境で騎士として12年、数々の武勲をあげ一代限りの男爵位を授かったクライブ・ノックスだった。二人はこの時を境に会えば挨拶を交わすようになり、いつしか婚約話が持ち上がり結婚する。
言葉少ないながらも彼の優しさに幸せを感じていたある日、クライブの元婚約者で現在は未亡人となった美しく儚げなステラ・コンウォール前伯爵夫人と夜会で再会する。
※設定はゆるいです。
※溺愛タグ追加しました。
【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜
高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。
婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。
それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。
何故、そんな事に。
優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。
婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。
リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。
悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。
【完結】愛したあなたは本当に愛する人と幸せになって下さい
高瀬船
恋愛
伯爵家のティアーリア・クランディアは公爵家嫡男、クライヴ・ディー・アウサンドラと婚約秒読みの段階であった。
だが、ティアーリアはある日クライヴと彼の従者二人が話している所に出くわし、聞いてしまう。
クライヴが本当に婚約したかったのはティアーリアの妹のラティリナであったと。
ショックを受けるティアーリアだったが、愛する彼の為自分は身を引く事を決意した。
【誤字脱字のご報告ありがとうございます!小っ恥ずかしい誤字のご報告ありがとうございます!個別にご返信出来ておらず申し訳ございません( •́ •̀ )】
女性治療師と距離が近いのは気のせいなんかじゃない
MOMO-tank
恋愛
薬師の腕を上げるために1年間留学していたアリソンは帰国後、次期辺境伯の婚約者ルークの元を訪ねた。
「アリソン!会いたかった!」
強く抱きしめ、とびっきりの笑顔で再会を喜ぶルーク。
でも、彼の側にはひとりの女性、治療師であるマリアが居た。
「毒矢でやられたのをマリアに救われたんだ」
回復魔法を受けると気分が悪くなるルークだが、マリアの魔法は平気だったらしい。
それに、普段は決して自分以外の女性と距離が近いことも笑いかけることも無かったのに、今の彼はどこかが違った。
気のせい?
じゃないみたい。
※設定はゆるいです。
【完結】好きでもない私とは婚約解消してください
里音
恋愛
騎士団にいる彼はとても一途で誠実な人物だ。初恋で恋人だった幼なじみが家のために他家へ嫁いで行ってもまだ彼女を思い新たな恋人を作ることをしないと有名だ。私も憧れていた1人だった。
そんな彼との婚約が成立した。それは彼の行動で私が傷を負ったからだ。傷は残らないのに責任感からの婚約ではあるが、彼はプロポーズをしてくれた。その瞬間憧れが好きになっていた。
婚約して6ヶ月、接点のほとんどない2人だが少しずつ距離も縮まり幸せな日々を送っていた。と思っていたのに、彼の元恋人が離婚をして帰ってくる話を聞いて彼が私との婚約を「最悪だ」と後悔しているのを聞いてしまった。
行き場を失った恋の終わらせ方
当麻月菜
恋愛
「君との婚約を白紙に戻してほしい」
自分の全てだったアイザックから別れを切り出されたエステルは、どうしてもこの恋を終わらすことができなかった。
避け続ける彼を求めて、復縁を願って、あの日聞けなかった答えを得るために、エステルは王城の夜会に出席する。
しかしやっと再会できた、そこには見たくない現実が待っていて……
恋の終わりを見届ける貴族青年と、行き場を失った恋の中をさ迷う令嬢の終わりと始まりの物語。
※他のサイトにも重複投稿しています。
平民の方が好きと言われた私は、あなたを愛することをやめました
天宮有
恋愛
公爵令嬢の私ルーナは、婚約者ラドン王子に「お前より平民の方が好きだ」と言われてしまう。
平民を新しい婚約者にするため、ラドン王子は私から婚約破棄を言い渡して欲しいようだ。
家族もラドン王子の酷さから納得して、言うとおり私の方から婚約を破棄した。
愛することをやめた結果、ラドン王子は後悔することとなる。
そんなにその方が気になるなら、どうぞずっと一緒にいて下さい。私は二度とあなたとは関わりませんので……。
しげむろ ゆうき
恋愛
男爵令嬢と仲良くする婚約者に、何度注意しても聞いてくれない
そして、ある日、婚約者のある言葉を聞き、私はつい言ってしまうのだった
全五話
※ホラー無し
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる