契約結婚~彼には愛する人がいる~

よしたけ たけこ

文字の大きさ
25 / 44

第23話 side サミュエル

しおりを挟む
エレンのために、エレンの契約夫の想い人であるアリスとやらの様子を見に来た。
アリスとやらの部屋に入り、観察する。

ふむふむ。
これは、やっかいな魔物に遭遇したものだな。
しかもこの呪いを放った魔物は、もう死んでいるのか。

しかし、よくこんなにも長い間生きているな。
普通であれば、もっと早くに死んでいただろう。
それだけ想いが強いということか。
魔物も、まさかこうなるとは思わなかっただろうな。

この呪いは厄介ではあるが、私であれば呪いを解いて目覚めさせる事は簡単だ。
あとはエレンにこれを伝えて、どうしたいか確認しないと。

そう思っていると、人が入ってきた。
私の事は見えていないから、そのまま様子をみる。

「アリス、今日も変わりなかったかい?」

アリスとやらの傍の椅子に座って手を握って話しかけている。
ふむ。この者がアリスとやらが愛している者だな。
ということは、これが契約夫か。

なるほど。だいたい把握できたな。
エレンのところに戻って報告することとしよう。

○○○

『戻ったぞ』

「え!?もう戻ってこられたのですか!?」

ふふ、驚いているエレンも可愛いな。

『私にとってはこの程度、造作もない事だ。それで、アリスとやらのことだが。魔物から攻撃ではなく、呪いを受けていた。』

「呪いですか!?」

『そうだ。どうやら番を失った魔物が復讐しようとしたようだな。おそらく相手を死なせるほどの力がなく、勝ち目がないと悟ったのだろう。そしてしかたがなく呪いをかけたようだ。』

「それは、いったいどのような呪いなのですか?」

『愛する者からの愛を失うと死ぬ呪いだ。普通は、人間がこんなに長く眠ったままの者を愛し続けることは難しい。だからすぐに死ぬと思ったのだろうな、その魔物は。まぁ、その魔物が生きていれば、呪いに気付き呪いを解く事が出来ただろうが。死んでしまったせいで呪いを解く事ができなかったようだな。』

「そんな・・・。呪いを解いて、アリス様を目覚めさせる事はできないのですか!?」

どうしてエレンが悲しそうにするのか。
アリスとやらが目覚めなければ、エレンがここに残る事が出来るだろうに。
それに、どうせこのままにしておけば・・・。

『あの者が目覚めなければ、エレンはずっとここにいられるのではないか?それにもしかしたら、契約夫がエレンを心から愛するかもしれない。』

「!!!」

エレンが息をのむ。

「ですが・・・それではアリス様が・・・。」

『エレンは、もっと自分を大事にしたほうがいい。自分の気持ちを優先していいんだ。』

「・・・。私は・・・。」

『・・・エレン、君が望むのなら、呪いを解いてアリスとやらを目覚めさせてやることもできる。どうする?』

何ていう顔をしている・・・。悲しくて寂しくて辛くて、でも嬉しくて。
複雑な感情が見て取れる。そんなエレンが愛おしい。

「・・・お願いします。アリス様を。アリス様をお救いください。」

そうだな。エレンならば、自分の事を犠牲にしても、そう望むのは分かっていた。
そんなエレンだから、私は力になりたい。

『わかった。』

・・・だが、私はわざとエレンに話していない事がある。
しかしこれを話したとて、優しい彼女はきっと同じ結論を導くだろう。
それならば、わざわざ余計に苦しめる必要は無い。

「あの、サミュエル様。一日だけ時間をいただけますか?呪いを解くのは、明日にして頂きたいのです。」

『私は構わない。では、明日のこの時間に呪いを解いてくる事にしよう。呪いを解いたら、エレンの元へ報告に来る。』

「分かりました。よろしくお願いいたします。」

心を決めたエレンの頭を撫でてから、私は精霊界へ戻った。


~~~~~

ちょっと中途半端なので、今日はもう一話更新します。
よろしくお願いします(*^_^*)

あと、呪いだとか出してきてすみません(^_^;)
ご都合主義を発揮しました。
呪いうんぬん、魔物うんぬんは最終話辺りでもう少しだけ出てきます。
m(_ _)m
しおりを挟む
感想 331

あなたにおすすめの小説

寡黙な貴方は今も彼女を想う

MOMO-tank
恋愛
婚約者以外の女性に夢中になり、婚約者を蔑ろにしたうえ婚約破棄した。 ーーそんな過去を持つ私の旦那様は、今もなお後悔し続け、元婚約者を想っている。 シドニーは王宮で側妃付きの侍女として働く18歳の子爵令嬢。見た目が色っぽいシドニーは文官にしつこくされているところを眼光鋭い年上の騎士に助けられる。その男性とは辺境で騎士として12年、数々の武勲をあげ一代限りの男爵位を授かったクライブ・ノックスだった。二人はこの時を境に会えば挨拶を交わすようになり、いつしか婚約話が持ち上がり結婚する。 言葉少ないながらも彼の優しさに幸せを感じていたある日、クライブの元婚約者で現在は未亡人となった美しく儚げなステラ・コンウォール前伯爵夫人と夜会で再会する。 ※設定はゆるいです。 ※溺愛タグ追加しました。

【完結】愛したあなたは本当に愛する人と幸せになって下さい

高瀬船
恋愛
伯爵家のティアーリア・クランディアは公爵家嫡男、クライヴ・ディー・アウサンドラと婚約秒読みの段階であった。 だが、ティアーリアはある日クライヴと彼の従者二人が話している所に出くわし、聞いてしまう。 クライヴが本当に婚約したかったのはティアーリアの妹のラティリナであったと。 ショックを受けるティアーリアだったが、愛する彼の為自分は身を引く事を決意した。 【誤字脱字のご報告ありがとうございます!小っ恥ずかしい誤字のご報告ありがとうございます!個別にご返信出来ておらず申し訳ございません( •́ •̀ )】

【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜

高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。 婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。 それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。 何故、そんな事に。 優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。 婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。 リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。 悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。

【完結】好きでもない私とは婚約解消してください

里音
恋愛
騎士団にいる彼はとても一途で誠実な人物だ。初恋で恋人だった幼なじみが家のために他家へ嫁いで行ってもまだ彼女を思い新たな恋人を作ることをしないと有名だ。私も憧れていた1人だった。 そんな彼との婚約が成立した。それは彼の行動で私が傷を負ったからだ。傷は残らないのに責任感からの婚約ではあるが、彼はプロポーズをしてくれた。その瞬間憧れが好きになっていた。 婚約して6ヶ月、接点のほとんどない2人だが少しずつ距離も縮まり幸せな日々を送っていた。と思っていたのに、彼の元恋人が離婚をして帰ってくる話を聞いて彼が私との婚約を「最悪だ」と後悔しているのを聞いてしまった。

女性治療師と距離が近いのは気のせいなんかじゃない

MOMO-tank
恋愛
薬師の腕を上げるために1年間留学していたアリソンは帰国後、次期辺境伯の婚約者ルークの元を訪ねた。 「アリソン!会いたかった!」 強く抱きしめ、とびっきりの笑顔で再会を喜ぶルーク。 でも、彼の側にはひとりの女性、治療師であるマリアが居た。  「毒矢でやられたのをマリアに救われたんだ」 回復魔法を受けると気分が悪くなるルークだが、マリアの魔法は平気だったらしい。 それに、普段は決して自分以外の女性と距離が近いことも笑いかけることも無かったのに、今の彼はどこかが違った。 気のせい? じゃないみたい。 ※設定はゆるいです。

行き場を失った恋の終わらせ方

当麻月菜
恋愛
「君との婚約を白紙に戻してほしい」  自分の全てだったアイザックから別れを切り出されたエステルは、どうしてもこの恋を終わらすことができなかった。  避け続ける彼を求めて、復縁を願って、あの日聞けなかった答えを得るために、エステルは王城の夜会に出席する。    しかしやっと再会できた、そこには見たくない現実が待っていて……  恋の終わりを見届ける貴族青年と、行き場を失った恋の中をさ迷う令嬢の終わりと始まりの物語。 ※他のサイトにも重複投稿しています。

悪役令嬢の涙

拓海のり
恋愛
公爵令嬢グレイスは婚約者である王太子エドマンドに卒業パーティで婚約破棄される。王子の側には、癒しの魔法を使え聖女ではないかと噂される子爵家に引き取られたメアリ―がいた。13000字の短編です。他サイトにも投稿します。

平民の方が好きと言われた私は、あなたを愛することをやめました

天宮有
恋愛
公爵令嬢の私ルーナは、婚約者ラドン王子に「お前より平民の方が好きだ」と言われてしまう。 平民を新しい婚約者にするため、ラドン王子は私から婚約破棄を言い渡して欲しいようだ。 家族もラドン王子の酷さから納得して、言うとおり私の方から婚約を破棄した。 愛することをやめた結果、ラドン王子は後悔することとなる。

処理中です...