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ざまぁまだか。若王子の苦闘。
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「アドレアス・トール・クレシアル!お前との婚約は破棄する!」
王国フレグランスでは今年も花ばなが咲き乱れている。王宮では剣呑としたムードが荒波を立てているとも知らずに。
隣国の皇太子が使者と共にやってきた。
フィリップ・ノーラン王子。
自称、博愛主義者らしい肥満体。弁護の法には明るいと自ら吹聴しているが、実はアルファベットの綴りもよく間違う。
一方的にノーランから告げられた若王子、アドレアスはぽかんとした。
政略結婚でしかなかったのでノーランに何の思い入れも浮かばない。
「おまえはみすぼらしい瓶底眼鏡だ」
太いノーランの側にいる使者達が一斉に嘲笑する。
「結婚前に一度お試し同衾をした夜…………。吐き気がした。肋の浮いた骨に発情期の猿のように迫られて、臭い大尻が顔に押し付けられてくる。アドレアスには失望した。せっかくオメガだから迎え入れようとしたのに」
男同士だがアドレアスはオメガだった。
子を成せる。
オメガは第三の性別。男、女、オメガ。三種類の性がこの世界を成り立たせている。
ベータは遺伝子的に平凡である。
王国フレグランスとは
華やぎ豊かな、諸国の中でも美しさが際立った王国。
「ふーん……これが『フレグランス』かぁ」
「ああ。そういやお前は初めてだっけな」
「うん。でも凄く綺麗じゃない? こんなに真っ暗なのにちゃんと街灯もあるし」
「そりゃあここが『貿易隆盛国』だからだよ。この辺りの空には月がないから、夜になると光る魔石で道を照らすんだ」
「へぇ……なんかロマンチックじゃん」
「まあな。」
フレグランスに立ち寄る旅人の声。
昨晩の話。肥満体皇太子ノーランの側を、侍従がそっと近づいていった。
「殿下は、あのオメガにだまされているのです」
と、彼は言った。「あの魔女のような男は、殿下の心を盗んでしまったのですわ!」
「おやめなさい! 不敬ですよ」もう一人の侍従がたしなめる声をあげた。
「しかし……しかしですわね、ノーランさま!」
と、侍従は言いつのった。「殿方というものは、あんなふうに簡単にオメガを信用していいものでしょうか? わたくしには信じられませんでござる!」「はあ、そういうこともあるだろうよ」
侍従はそう言ってから、苦笑を浮かべて、肩越しに後ろを見やった。
「おまえも気をつけろよ。殿下のお相手はたいへんだぞ」
「わたくしは大丈夫です!絶対にそんなことはありませんもの!」
侍従は不機嫌そうな声で答えたが、苦笑いする彼は取り合わなかった。彼は再び歩きはじめながら、「それにしても、殿下はずいぶん変わったオメガを連れまわしているものだな」と言った。「いったいどこで見つけてきたんだろう?」
翌日、高等法印からの教皇令によって、アドレアス・トール・クレシアルとフィリップ・ノーランの婚約解消令が発令された。
アンドレアスはお漏らしして悔しがった。
称号まで剥奪され、王子の座からも追われたアドレアス。
悲劇はそれだけに済まなかった。
王国フレグランスでは今年も花ばなが咲き乱れている。王宮では剣呑としたムードが荒波を立てているとも知らずに。
隣国の皇太子が使者と共にやってきた。
フィリップ・ノーラン王子。
自称、博愛主義者らしい肥満体。弁護の法には明るいと自ら吹聴しているが、実はアルファベットの綴りもよく間違う。
一方的にノーランから告げられた若王子、アドレアスはぽかんとした。
政略結婚でしかなかったのでノーランに何の思い入れも浮かばない。
「おまえはみすぼらしい瓶底眼鏡だ」
太いノーランの側にいる使者達が一斉に嘲笑する。
「結婚前に一度お試し同衾をした夜…………。吐き気がした。肋の浮いた骨に発情期の猿のように迫られて、臭い大尻が顔に押し付けられてくる。アドレアスには失望した。せっかくオメガだから迎え入れようとしたのに」
男同士だがアドレアスはオメガだった。
子を成せる。
オメガは第三の性別。男、女、オメガ。三種類の性がこの世界を成り立たせている。
ベータは遺伝子的に平凡である。
王国フレグランスとは
華やぎ豊かな、諸国の中でも美しさが際立った王国。
「ふーん……これが『フレグランス』かぁ」
「ああ。そういやお前は初めてだっけな」
「うん。でも凄く綺麗じゃない? こんなに真っ暗なのにちゃんと街灯もあるし」
「そりゃあここが『貿易隆盛国』だからだよ。この辺りの空には月がないから、夜になると光る魔石で道を照らすんだ」
「へぇ……なんかロマンチックじゃん」
「まあな。」
フレグランスに立ち寄る旅人の声。
昨晩の話。肥満体皇太子ノーランの側を、侍従がそっと近づいていった。
「殿下は、あのオメガにだまされているのです」
と、彼は言った。「あの魔女のような男は、殿下の心を盗んでしまったのですわ!」
「おやめなさい! 不敬ですよ」もう一人の侍従がたしなめる声をあげた。
「しかし……しかしですわね、ノーランさま!」
と、侍従は言いつのった。「殿方というものは、あんなふうに簡単にオメガを信用していいものでしょうか? わたくしには信じられませんでござる!」「はあ、そういうこともあるだろうよ」
侍従はそう言ってから、苦笑を浮かべて、肩越しに後ろを見やった。
「おまえも気をつけろよ。殿下のお相手はたいへんだぞ」
「わたくしは大丈夫です!絶対にそんなことはありませんもの!」
侍従は不機嫌そうな声で答えたが、苦笑いする彼は取り合わなかった。彼は再び歩きはじめながら、「それにしても、殿下はずいぶん変わったオメガを連れまわしているものだな」と言った。「いったいどこで見つけてきたんだろう?」
翌日、高等法印からの教皇令によって、アドレアス・トール・クレシアルとフィリップ・ノーランの婚約解消令が発令された。
アンドレアスはお漏らしして悔しがった。
称号まで剥奪され、王子の座からも追われたアドレアス。
悲劇はそれだけに済まなかった。
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