泣き虫な俺と泣かせたいお前

ことわ子

文字の大きさ
19 / 19

泣かせたい俺と泣き虫な君~二人の続き~【下】

しおりを挟む
「無理、降参、直生の勝ち」
「何それどういう──」

 言い終わらない内に噛み付くように言葉を飲み込む。無理矢理口をこじ開けて、逃げる舌を追いかける。舌先で歯列をなぞると、また直生がのけぞった。
離して欲しそうに両腕で突っぱねられたが、構わず続けた。
 空気を求めて大きく開けた口をすかさず塞ぎ、掻き回す。
 夢中になって直生を感じていると、直生の力が抜けるのを感じた。

 あ、やば。

 いくらなんでもがっつき過ぎたかもと、腕の中の直生を見ると、涙目になりながら俺のことを見上げていた。目が若干怒っている。
 だけどその怒って潤んだ瞳すら今の俺には燃料にしかならない。再び首元に顔を埋めると、拒否される前に強く吸い付いた。

「い、」

 鈍い痛みに直生が顔を顰める。今自分が何をされているかは分かっていないようで、嫌がりはしなかった。

 もしかして、俺が何してるか分かってない……?

 チャンスだと思った。周りにアピールできるくらい沢山痕を残そうと、直生の襟元に手を掛け胸元を広げようとする。が、流石に叩かれてしまった。

「何しようとしたんだよ!」
「別に……」
「俺はキスしたいって言ったのに、なんか違うことしようとしただろ!」
「するだろ普通!」

 またこのパターンだ。
 一々手を止められていては、次に進むまでに何年かかるか分からない。
 俺はこの先続く苦行を想像して、深くため息をついた。

「じゃあもう本当に今日は止めにするから、とりあえず撫でさせて」
「なんで……?」
「泣いてるから」

 ハッとした後にバツが悪そうな顔で若干俺の方に頭を傾けてくる。
 俺はいつものようにゆっくりと直生の頭を撫でた。直生は目を瞑って完全に身を任せている。信用されていると言えば聞こえはいいが、単に意識されていないともとれる。
 自分の中にどんどん溜まり続ける熱を、気付かないフリしてやり過ごそうとする。

「…………そう言えば、凛乃介、前に俺がいなくてももう大丈夫みたいなこと言ってたけどさ」
「あー、うん……」
「そんな訳ないだろ……」

 直生はそう言うが、決定的な現場を目撃してしまったのだ。ヤケになってそういう気持ちになってもおかしくないだろと内心毒付く。

「そもそも、俺じゃなきゃ駄目なんて決まってないだろ?」

 俺はそうだと長年思い込んできたけど。

「は? 凛乃介以外の前で泣いたことなんてねーし、凛乃介以外のやつに泣き止まされたくないし……」
「お前、凛の手握って泣き止んでたじゃん」
「……は?」

 自分の方が正しいことを言っているはずなのに、何言ってるんだこいつは、とでも言うような顔で見られてしまった。

「凛? なんの話?」

 ここまできてとぼける気とはいい度胸だなと思う。こっちは現行犯で目撃しているのだから、言い逃れはさせないと詰め寄る。

「だから! 直生が学校で倒れた時! お前医務室で泣いてただろ? その時、凛の手握って……」

 言ってて段々辛くなってきた。恋人にはなれたものの、直生にとって俺は誰でもいい人間のままだ。

「医務室? …………あ、」
「なんだよ?」
「何でもない……」
「何でもなくないだろ絶対」
「何でもないって!」

 絶対に何かを隠している顔の直生を抱きしめて拘束する。白状するまでは離してやらないつもりだ。

「言うまで離さないからな」

 脅しながらまた首に噛み付く。

「ん、や、っだ、止めろって!」
「いやだ」

 歯を立てながら徐々に力を入れていく。早く降参しないと噛み跡が残ってしまうだろう。

「り、んの、すけだって、」
「?」
「だから、凛乃介だって思ったんだよ!」

 俺の耳元で鼓膜が破れそうな大音量で直生が叫ぶ。

「凛じゃなくて、凛乃介が手を握ってくれたと思って泣き止んだんだよ! これで満足か!?」

 直生の必死のシャウトに耳の奥がぼーっとする。俺の力が緩んだのを見計らって、直生が俺の腕から逃げ出した。

「恥ずかしいこと言わせんな馬鹿!」

 俺の勘違いだったと分かり、嬉しさのあまりまた抱き着こうとする。しかし、直生は警戒したように距離をとった。

「直生?」
「今日はもう充分触れ合ったからいいだろ」

 触れ合ったって……動物園か何かか?

 それに直生的にはもう充分かもしれないが、俺的には全然足りない。いきなりヤりたいとは言わないが、もう少し深めのキスくらいはしたい。
 今までの俺の素行からするとかなり譲歩してるのだが、直生には丸で通じない。

「じゃあ、もうちょっとキスしよ。直生も気持ち良いって言ってたし!」

 俺の提案に直生は渋々俺の方に向き直った。

「………………舌、入れないなら」
「え?」
「舌、入れないならいい……」
「…………なんで?」
「舌入れられるとなにも考えられなくなって怖い」
「あー!!!! もう!!!!」

 俺はとんでもない煽り文句を真正面から受け止め、折れそうになる心で直生に触れるだけのキスをした。

fin
しおりを挟む
感想 1

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(1件)

まぁさ
2024.03.07 まぁさ

最高ですたまらんです🫣🫣🫣🫶

2024.03.07 ことわ子

お読みいただきありがとうございます😭
気に入っていただけたようで嬉しいです……!

解除

あなたにおすすめの小説

【完結】もしかして俺の人生って詰んでるかもしれない

バナナ男さん
BL
唯一の仇名が《根暗の根本君》である地味男である<根本 源(ねもと げん)>には、まるで王子様の様なキラキラ幼馴染<空野 翔(そらの かける)>がいる。 ある日、そんな幼馴染と仲良くなりたいカースト上位女子に呼び出され、金魚のフンと言われてしまい、改めて自分の立ち位置というモノを冷静に考えたが……あれ?なんか俺達っておかしくない?? イケメンヤンデレ男子✕地味な平凡男子のちょっとした日常の一コマ話です。

諦めた初恋と新しい恋の辿り着く先~両片思いは交差する~【全年齢版】

カヅキハルカ
BL
片岡智明は高校生の頃、幼馴染みであり同性の町田和志を、好きになってしまった。 逃げるように地元を離れ、大学に進学して二年。 幼馴染みを忘れようと様々な出会いを求めた結果、ここ最近は女性からのストーカー行為に悩まされていた。 友人の話をきっかけに、智明はストーカー対策として「レンタル彼氏」に恋人役を依頼することにする。 まだ幼馴染みへの恋心を忘れられずにいる智明の前に、和志にそっくりな顔をしたシマと名乗る「レンタル彼氏」が現れた。 恋人役を依頼した智明にシマは快諾し、プロの彼氏として完璧に甘やかしてくれる。 ストーカーに見せつけるという名目の元で親密度が増し、戸惑いながらも次第にシマに惹かれていく智明。 だがシマとは契約で繋がっているだけであり、新たな恋に踏み出すことは出来ないと自身を律していた、ある日のこと。 煽られたストーカーが、とうとう動き出して――――。 レンタル彼氏×幼馴染を忘れられない大学生 両片思いBL 《pixiv開催》KADOKAWA×pixivノベル大賞2024【タテスクコミック賞】受賞作 ※商業化予定なし(出版権は作者に帰属) この作品は『KADOKAWA×pixiv ノベル大賞2024』の「BL部門」お題イラストから着想し、創作したものです。 https://www.pixiv.net/novel/contest/kadokawapixivnovel24

幼馴染み

BL
高校生の真琴は、隣に住む幼馴染の龍之介が好き。かっこよくて品行方正な人気者の龍之介が、かわいいと噂の井野さんから告白されたと聞いて……。 高校生同士の瑞々しくて甘酸っぱい恋模様。

笑って下さい、シンデレラ

椿
BL
付き合った人と決まって12日で別れるという噂がある高嶺の花系ツンデレ攻め×昔から攻めの事が大好きでやっと付き合えたものの、それ故に空回って攻めの地雷を踏みぬきまくり結果的にクズな行動をする受け。 面倒くさい攻めと面倒くさい受けが噛み合わずに面倒くさいことになってる話。 ツンデレは振り回されるべき。

自分勝手な恋

すずかけあおい
BL
高校の卒業式後に幼馴染の拓斗から告白された。 拓斗への感情が恋愛感情かどうか迷った俺は拓斗を振った。 時が過ぎ、気まぐれで会いに行くと、拓斗には恋人ができていた。 馬鹿な俺は今更自覚する。 拓斗が好きだ、と――。

負け犬の俺と、アンドロイドの紫ノくん【改稿】

鷹の森
BL
※こちらの作品は改稿したものです、以前掲載した作品があまりに齟齬だらけだったので再投稿します。完結しています※ 「日生くんでしょ、僕、染崎紫ノ」 「……えっ!? 紫ノくん!?」  幼い頃アンドロイドと揶揄われいじめられていた親友と再会した俺は、紫ノくんのあまりの容姿の変わりように、呆然とした。美青年、その言葉はまるで、紫ノくんのために作られたみたいだった。  恋に敗れ続ける俺と、小学生の頃から一途に俺を好きでいてくれた紫ノくん。  本当は同じ中学、同じ高校と一緒に通いたかったけど、俺の引っ越しをきっかけに、紫ノくんとは会えずじまいでいた。  電車を降りて、目の前の男がICカードを落とした人が居たから拾ったら、手首を掴まれて、強制連行……!? 「俺はずっと、日生くんが好きだよ。終わりまで、日生くんが好きだ」  紫ノくんの重い愛。でもそれは、俺にとっては居心地が良くて——? 美形攻め……染崎紫ノ(そめざきしの) 平凡受け……田手日生(たでひなせ)

バイト先に元カレがいるんだが、どうすりゃいい?

cheeery
BL
サークルに一人暮らしと、完璧なキャンパスライフが始まった俺……広瀬 陽(ひろせ あき) ひとつ問題があるとすれば金欠であるということだけ。 「そうだ、バイトをしよう!」 一人暮らしをしている近くのカフェでバイトをすることが決まり、初めてのバイトの日。 教育係として現れたのは……なんと高二の冬に俺を振った元カレ、三上 隼人(みかみ はやと)だった! なんで元カレがここにいるんだよ! 俺の気持ちを弄んでフッた最低な元カレだったのに……。 「あんまり隙見せない方がいいよ。遠慮なくつけこむから」 「ねぇ、今どっちにドキドキしてる?」 なんか、俺……ずっと心臓が落ち着かねぇ! もう一度期待したら、また傷つく? あの時、俺たちが別れた本当の理由は──? 「そろそろ我慢の限界かも」

【完結・BL】春樹の隣は、この先もずっと俺が良い【幼馴染】

彩華
BL
俺の名前は綾瀬葵。 高校デビューをすることもなく入学したと思えば、あっという間に高校最後の年になった。周囲にはカップル成立していく中、俺は変わらず彼女はいない。いわく、DTのまま。それにも理由がある。俺は、幼馴染の春樹が好きだから。だが同性相手に「好きだ」なんて言えるはずもなく、かといって気持ちを諦めることも出来ずにダラダラと片思いを続けること早数年なわけで……。 (これが最後のチャンスかもしれない) 流石に高校最後の年。進路によっては、もう春樹と一緒にいられる時間が少ないと思うと焦りが出る。だが、かといって長年幼馴染という一番近い距離でいた関係を壊したいかと問われれば、それは……と踏み込めない俺もいるわけで。 (できれば、春樹に彼女が出来ませんように) そんなことを、ずっと思ってしまう俺だが……────。 ********* 久しぶりに始めてみました お気軽にコメント頂けると嬉しいです ■表紙お借りしました

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。