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僕が教えてあげる
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どうしよう、思わず飛び出してきてしまった……などと自分の今の状況に後悔の色が浮かび始めたのは海の家を走り去って随分経ってからだった。いや、実際はそこまで経っていないのかもしれない。時間の感覚が分からなくなるほど今の自分は混乱しているという事を自覚する。
一旦落ち着こうと身の置き場を探して歩みを進めるが、どうにも落ち着かなくてふらふらと賑やかな海沿いを歩く。思い思いに楽しんでいる人たちの喧騒に気が紛れて丁度良かった。
「あれ? おにぃ?」
ボーッとしながら歩いていると背後から声をかけられた。振り向くと香奈が浮き輪を抱えながら走り寄って来た。香奈の背後には友人と思われる女の子数人が喋りながらこちらを見ている。香奈の友達にしてはみんな大人っぽいなぁなどと今の状況にそぐわない感想を抱く。
「おにぃ1人? アキくんは?」
「あー……別行動」
「別行動? なんで?」
そんなのこっちが聞きたい。
別行動を提案したのは自分なのに、何故か苛立ちやさぐれた気分になる。
「あー、えーっと……お、おにぃも一緒に遊ぶ……?」
「は?」
「いや、なんか、急におにぃが可哀想な生き物に見えてきて」
「可哀想な生き物って」
普段空気を読まない香奈が空気を読んでこんな提案をしてくるなんて、俺の顔はよほど可哀想な事になっていたんだろう。
「大丈夫だから。時間まで目一杯遊んでこい」
「うーん……分かったぁ」
俺は香奈の頭をぐしゃぐしゃと撫でると、思いっきり腕を跳ね除けられた。
「もう! それやめてってば!」
「悪い悪い」
「悪いと思ってないからいつもやるんでしょ!」
「思ってるって」
香奈と軽口を叩きながら先程のアキの髪を撫でた感触を思い出す。あの時まではいつも通りだったのに。
「じゃあもう行くねー! また後で!」
「おー」
香奈は来た時と同様に友達の元へ小走りで近付いて行き、談笑しながら海の方へ向かって行った。
行く宛も無い俺は、とりあえず日差しから逃れようと砂浜から離れる事にした。もし、アキとあの女の子が遊んでいるところを見てしまったら更に香奈に空気を読ませることになりかねない。
ふと、サンダルと足の間に入り込んだ砂が妙に気になり始めた。ザラザラと不快な感触は手で払っても中々消えない。もう砂浜に足を踏み入れないなら洗ってしまってもいいかもしれない。洗ってしまえば、アキを探しに行こうなどと思う気が起きなくなるかもしれない、そんな事を期待して俺は海水浴場に併設されたシャワールームを探し始めた。
初めて来た海水浴場だったが、各施設の場所は大体どこも同じような場所にあることはなんとなく分かる。シャワールームといったら砂浜から上がった駐車場の近くだろうか。
来た時に通った階段を上がり、周囲を見回すと大きな駐車場があった。その横に思った通り、新しい作りのシャワールームがあった。最近建てられたのか、はたまた改修したのか、俺が想像していた仮設トイレを並べたような作りでは無く、綺麗な建物で中は個室になっているようだった。
と、言っても俺は海には入っていないし、足を洗いたいだけなので、外に併設されている蛇口で済まそうと近づいて行った。
まだ時間が早いせいか、シャワールームに人の姿は無く、遠くの駐車場から今来たと思われる家族連れの楽しそうな声がするだけだった。
俺は力無く蛇口を捻ると生暖かい水が足にかかった。徐々に冷たさを帯びてきて心地良くなってくる。水に洗い流されていく砂を目で追い、全てが流れ切る頃には少しだけ頭がすっきりとしてきた。足の不快感も無くなり、気にしていたことが一つずつ解けていくような感覚になる。
アキのこともきっと色々と過剰になり過ぎてたのだと思う。恋人だとか俺のことが好きだとか、すんなりと受け入れ難い事実のオンパレードでアキに対してどう接して良いのか自分でも分からなくなっていた。俺が本当に恋人であるなら、声をかけてきた女の子に嫉妬して、まんざらでも無さそうなアキを怒らないといけない。
でもどこかでそれで合っているのかと自問している自分もいる。
「もうどうしたらいいか分かんねぇ……」
自然と口から漏れた呟きに後悔の色が滲む。曖昧な関係のまま、なんとなく感じる心地良さに甘えてしまった結果なんだろう。
「じゃあ僕が教えてあげる」
突然の声に振り向けば、何故か眉間に皺を寄せて、こちはを睨んでいるアキの姿があった。
アキは何故か俺が前髪を結んだ時のままでいた為、いつも前髪に隠れている目と真っ直ぐに目があった。その瞳の奥が激しく揺れている。
「アキ!? なんでここに!?」
「リュージが勝手にいなくなっちゃうから探した」
「え、……ごめん」
反射的に謝ってから、疑問が浮かんでくる。
「あの女の子は?」
「はぁ?」
出会ってから初めてアキが声を荒げた姿を見て言葉を失う。そんなに怒らせるようなことを言ってしまったんだろうか。
俺が目を泳がせながら悩んでいると、アキはため息をついて前髪をかき上げた。結んでいた髪ゴムが取れて落ちた。それを拾い上げながら近づいて来た。
一旦落ち着こうと身の置き場を探して歩みを進めるが、どうにも落ち着かなくてふらふらと賑やかな海沿いを歩く。思い思いに楽しんでいる人たちの喧騒に気が紛れて丁度良かった。
「あれ? おにぃ?」
ボーッとしながら歩いていると背後から声をかけられた。振り向くと香奈が浮き輪を抱えながら走り寄って来た。香奈の背後には友人と思われる女の子数人が喋りながらこちらを見ている。香奈の友達にしてはみんな大人っぽいなぁなどと今の状況にそぐわない感想を抱く。
「おにぃ1人? アキくんは?」
「あー……別行動」
「別行動? なんで?」
そんなのこっちが聞きたい。
別行動を提案したのは自分なのに、何故か苛立ちやさぐれた気分になる。
「あー、えーっと……お、おにぃも一緒に遊ぶ……?」
「は?」
「いや、なんか、急におにぃが可哀想な生き物に見えてきて」
「可哀想な生き物って」
普段空気を読まない香奈が空気を読んでこんな提案をしてくるなんて、俺の顔はよほど可哀想な事になっていたんだろう。
「大丈夫だから。時間まで目一杯遊んでこい」
「うーん……分かったぁ」
俺は香奈の頭をぐしゃぐしゃと撫でると、思いっきり腕を跳ね除けられた。
「もう! それやめてってば!」
「悪い悪い」
「悪いと思ってないからいつもやるんでしょ!」
「思ってるって」
香奈と軽口を叩きながら先程のアキの髪を撫でた感触を思い出す。あの時まではいつも通りだったのに。
「じゃあもう行くねー! また後で!」
「おー」
香奈は来た時と同様に友達の元へ小走りで近付いて行き、談笑しながら海の方へ向かって行った。
行く宛も無い俺は、とりあえず日差しから逃れようと砂浜から離れる事にした。もし、アキとあの女の子が遊んでいるところを見てしまったら更に香奈に空気を読ませることになりかねない。
ふと、サンダルと足の間に入り込んだ砂が妙に気になり始めた。ザラザラと不快な感触は手で払っても中々消えない。もう砂浜に足を踏み入れないなら洗ってしまってもいいかもしれない。洗ってしまえば、アキを探しに行こうなどと思う気が起きなくなるかもしれない、そんな事を期待して俺は海水浴場に併設されたシャワールームを探し始めた。
初めて来た海水浴場だったが、各施設の場所は大体どこも同じような場所にあることはなんとなく分かる。シャワールームといったら砂浜から上がった駐車場の近くだろうか。
来た時に通った階段を上がり、周囲を見回すと大きな駐車場があった。その横に思った通り、新しい作りのシャワールームがあった。最近建てられたのか、はたまた改修したのか、俺が想像していた仮設トイレを並べたような作りでは無く、綺麗な建物で中は個室になっているようだった。
と、言っても俺は海には入っていないし、足を洗いたいだけなので、外に併設されている蛇口で済まそうと近づいて行った。
まだ時間が早いせいか、シャワールームに人の姿は無く、遠くの駐車場から今来たと思われる家族連れの楽しそうな声がするだけだった。
俺は力無く蛇口を捻ると生暖かい水が足にかかった。徐々に冷たさを帯びてきて心地良くなってくる。水に洗い流されていく砂を目で追い、全てが流れ切る頃には少しだけ頭がすっきりとしてきた。足の不快感も無くなり、気にしていたことが一つずつ解けていくような感覚になる。
アキのこともきっと色々と過剰になり過ぎてたのだと思う。恋人だとか俺のことが好きだとか、すんなりと受け入れ難い事実のオンパレードでアキに対してどう接して良いのか自分でも分からなくなっていた。俺が本当に恋人であるなら、声をかけてきた女の子に嫉妬して、まんざらでも無さそうなアキを怒らないといけない。
でもどこかでそれで合っているのかと自問している自分もいる。
「もうどうしたらいいか分かんねぇ……」
自然と口から漏れた呟きに後悔の色が滲む。曖昧な関係のまま、なんとなく感じる心地良さに甘えてしまった結果なんだろう。
「じゃあ僕が教えてあげる」
突然の声に振り向けば、何故か眉間に皺を寄せて、こちはを睨んでいるアキの姿があった。
アキは何故か俺が前髪を結んだ時のままでいた為、いつも前髪に隠れている目と真っ直ぐに目があった。その瞳の奥が激しく揺れている。
「アキ!? なんでここに!?」
「リュージが勝手にいなくなっちゃうから探した」
「え、……ごめん」
反射的に謝ってから、疑問が浮かんでくる。
「あの女の子は?」
「はぁ?」
出会ってから初めてアキが声を荒げた姿を見て言葉を失う。そんなに怒らせるようなことを言ってしまったんだろうか。
俺が目を泳がせながら悩んでいると、アキはため息をついて前髪をかき上げた。結んでいた髪ゴムが取れて落ちた。それを拾い上げながら近づいて来た。
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