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もう別れよう
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急にこれまでに感じていたアキとのズレがどんどん思い返され気分が悪くなっていく。考えてみれば最初からおかしかった。病室にアキが来た時からひどく一方的だった。それでも段々とアキの隣が心地良いと感じて、その違和感は感じなくなってた。しかし、感じなくなっていただけだったのだ。常に違和感は隣にあって、俺がそれに蓋をした。
溢れた違和感はもう止められない。
「…………もういい」
「え」
「もう、別れよ」
その言葉を聞いた瞬間、アキの瞳に暗い影が落ちた。それでも構わず俺は続ける。
「浮気するほど俺のことどうでも良かったみたいだし」
「違う。浮気なんてしてない」
「訂正おせーよ」
今更だ。別に這いつくばって許しをこうアキが見たかったわけじゃない。ただすぐに否定して欲しかった。乃亜とは何の関係もないと、一言言ってくれるだけで良かった。
それだけで、俺は、アキの事を信じられたのに。
「そういうわけだから、今後は友達として……」
「いや、だ」
「せっかく仲良くなれたんだから友達になれたらって思ったけど、やっぱ嫌だよな」
こんな状況になってもアキと離れるのが惜しいと感じてしまい、中途半端な提案で濁そうとしたが、アキにすぐ却下されてしまう。よくよく考えれば虫のいい話で嫌がられるのも当然だ。そもそもアキは俺に興味が無くなって浮気をしたのに。
「ごめん、もう会わないから」
俺はそれだけ言うと、テーブルの上に広げっぱなしだった課題を片付け始めた。すぐでもここから逃げ出したい一心で乱暴にカバンに詰め込む。途中、学校に提出するプリントが破れた音がしたが構わず続けた。
「いやだ」
ぼそりとアキが呟く。俺に向けて言ったと言うよりは誰もいない空間に向かって溢す。
「嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ……」
段々とアキの激情は膨れ上がって、その分声も大きくなる。こんなに大きな声を出すアキを初めて目の当たりにし、思わず片付ける手が止まる。
「嫌だ、絶対に別れない」
アキは急に俺の手首を掴むと痛いぐらい締め上げた。
「アキ! 痛い!」
「絶対、離さない」
体格は俺の方が良いはずなのに、アキの気迫に押されてか、身体に力が入らず振り解けない。
「アキ! 離せって!」
「嫌だ!」
アキは俺の手首を引っ張り、乱暴にベッドへと押し倒した。パイプで組み立てられた簡素なベッドは男2人分の重みで軋み、鈍い音を立てて揺れた。
背中に衝撃を感じ、痛みに顔を歪ませているといつの間にか俺の両手はアキに片手でまとめ上げられていた。下半身はアキの脚で固定されていて微動だにしない。いくら俺の方が体格が良いとは言え、上背のあるアキにのし掛かられてしまえばもう身動きは取れない。
俺はせめてもの抵抗でアキを睨んだ。
「離せ」
「嫌だ」
嫌だ、としか言わないアキは困ったような苦しそうな顔をしている。
グッと両手に力を入れて手を振り解こうとするが、案の定びくともしない。
「アキ」
「嫌だ」
話し合いすら出来ない空気の中、アキは息を吐いた。どこか自暴自棄な空気を孕みながら呼吸を繰り返す。
「リュージは僕のことが好きだって言ったのに、なんで別れようなんて言うの……」
驚き過ぎて思わず気が抜けた。自分がした事を全部棚に上げて、まるでこの状況を全部俺が引き起こしたかのように言う。
「そんなの、アキが浮気したからだろ!」
あまりにも頭にき過ぎて声を荒げてしまった。
「だからしてない!!!!」
俺以上に荒げた声でアキが叫んだ。
これ以上話してもイタチごっこだと思った。浮気云々よりも、アキを怖いと思ってしまったことの方が堪えた。
アキは興奮しているのか目が血走り、いつもの落ち着きは影も形もない。折角のかっこいい顔も歪んでいて見るに堪えない。
「ッ……」
アキは一瞬、一層顔を歪めると、俺の目を見た。そして、乱暴に俺のシャツの襟ぐりを引っ張った。留めていたボタンが数個飛び散って音を立てて転がっていった。
「は? アキ? 何して──」
確認する間も無く、アキは俺の首に噛み付いてきた。突然の鈍い痛みに身体が強張る。続けざまに噛み付いた箇所を舌でなぞられ、違った感覚が押し寄せる。
「やめ──」
拒否の言葉を発しようとすると、今度は口を塞がれた。口内に侵入してくる違和感に目尻に涙が浮かぶ。
アキは性急に空いている方の手を俺のベルトまで伸ばしてきた。
俺は必死に抑えていた涙が頬を伝うのを感じながら、カチャカチャとベルトが解かれていく音を聞いた。
アキは一旦唇を離すと俺の顔を見た。
不意に、アキの力が弱まるのを感じた。
その一瞬の隙に俺は出来る限りの力でアキの手を振り払い、拘束から逃れると、アキの上半身を思い切り突き飛ばし立ち上がった。無我夢中で自分の荷物を拾い集め、突き飛ばされてから微動だにしないアキを視界に入れないように部屋から飛び出した。
溢れた違和感はもう止められない。
「…………もういい」
「え」
「もう、別れよ」
その言葉を聞いた瞬間、アキの瞳に暗い影が落ちた。それでも構わず俺は続ける。
「浮気するほど俺のことどうでも良かったみたいだし」
「違う。浮気なんてしてない」
「訂正おせーよ」
今更だ。別に這いつくばって許しをこうアキが見たかったわけじゃない。ただすぐに否定して欲しかった。乃亜とは何の関係もないと、一言言ってくれるだけで良かった。
それだけで、俺は、アキの事を信じられたのに。
「そういうわけだから、今後は友達として……」
「いや、だ」
「せっかく仲良くなれたんだから友達になれたらって思ったけど、やっぱ嫌だよな」
こんな状況になってもアキと離れるのが惜しいと感じてしまい、中途半端な提案で濁そうとしたが、アキにすぐ却下されてしまう。よくよく考えれば虫のいい話で嫌がられるのも当然だ。そもそもアキは俺に興味が無くなって浮気をしたのに。
「ごめん、もう会わないから」
俺はそれだけ言うと、テーブルの上に広げっぱなしだった課題を片付け始めた。すぐでもここから逃げ出したい一心で乱暴にカバンに詰め込む。途中、学校に提出するプリントが破れた音がしたが構わず続けた。
「いやだ」
ぼそりとアキが呟く。俺に向けて言ったと言うよりは誰もいない空間に向かって溢す。
「嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ……」
段々とアキの激情は膨れ上がって、その分声も大きくなる。こんなに大きな声を出すアキを初めて目の当たりにし、思わず片付ける手が止まる。
「嫌だ、絶対に別れない」
アキは急に俺の手首を掴むと痛いぐらい締め上げた。
「アキ! 痛い!」
「絶対、離さない」
体格は俺の方が良いはずなのに、アキの気迫に押されてか、身体に力が入らず振り解けない。
「アキ! 離せって!」
「嫌だ!」
アキは俺の手首を引っ張り、乱暴にベッドへと押し倒した。パイプで組み立てられた簡素なベッドは男2人分の重みで軋み、鈍い音を立てて揺れた。
背中に衝撃を感じ、痛みに顔を歪ませているといつの間にか俺の両手はアキに片手でまとめ上げられていた。下半身はアキの脚で固定されていて微動だにしない。いくら俺の方が体格が良いとは言え、上背のあるアキにのし掛かられてしまえばもう身動きは取れない。
俺はせめてもの抵抗でアキを睨んだ。
「離せ」
「嫌だ」
嫌だ、としか言わないアキは困ったような苦しそうな顔をしている。
グッと両手に力を入れて手を振り解こうとするが、案の定びくともしない。
「アキ」
「嫌だ」
話し合いすら出来ない空気の中、アキは息を吐いた。どこか自暴自棄な空気を孕みながら呼吸を繰り返す。
「リュージは僕のことが好きだって言ったのに、なんで別れようなんて言うの……」
驚き過ぎて思わず気が抜けた。自分がした事を全部棚に上げて、まるでこの状況を全部俺が引き起こしたかのように言う。
「そんなの、アキが浮気したからだろ!」
あまりにも頭にき過ぎて声を荒げてしまった。
「だからしてない!!!!」
俺以上に荒げた声でアキが叫んだ。
これ以上話してもイタチごっこだと思った。浮気云々よりも、アキを怖いと思ってしまったことの方が堪えた。
アキは興奮しているのか目が血走り、いつもの落ち着きは影も形もない。折角のかっこいい顔も歪んでいて見るに堪えない。
「ッ……」
アキは一瞬、一層顔を歪めると、俺の目を見た。そして、乱暴に俺のシャツの襟ぐりを引っ張った。留めていたボタンが数個飛び散って音を立てて転がっていった。
「は? アキ? 何して──」
確認する間も無く、アキは俺の首に噛み付いてきた。突然の鈍い痛みに身体が強張る。続けざまに噛み付いた箇所を舌でなぞられ、違った感覚が押し寄せる。
「やめ──」
拒否の言葉を発しようとすると、今度は口を塞がれた。口内に侵入してくる違和感に目尻に涙が浮かぶ。
アキは性急に空いている方の手を俺のベルトまで伸ばしてきた。
俺は必死に抑えていた涙が頬を伝うのを感じながら、カチャカチャとベルトが解かれていく音を聞いた。
アキは一旦唇を離すと俺の顔を見た。
不意に、アキの力が弱まるのを感じた。
その一瞬の隙に俺は出来る限りの力でアキの手を振り払い、拘束から逃れると、アキの上半身を思い切り突き飛ばし立ち上がった。無我夢中で自分の荷物を拾い集め、突き飛ばされてから微動だにしないアキを視界に入れないように部屋から飛び出した。
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