愛しい人よ

璃々

文字の大きさ
上 下
14 / 18

またいつか出会えるときまで

しおりを挟む
誰かの声がする。重い瞼をゆっくり開ける。
目の前に天使のような可愛らしい顔をしたお兄さんが僕の手を握っていた。よく見ると、目が真赤だった。僕はびっくりした。知らない景色に「ここはどこ?」と尋ねる。「け、建造?」
どうしてこのお兄さんが僕の名を呼ぶ。
「うん!建造だよ!お兄さんの名前はなんていうの?」と聞くとお兄さんはなんとも言えない顔をして僕のことをギュッと抱いてくれた。暖かいな~って目を閉じる。世界ってこんなに明るかったんだな~とゆっくりと眠りにつく。なにか大切なことがあった気がする。忘れてはいけないなにかが。ただ今は何も考えずに安心して眠る。













「亀井さんの記憶は過去に戻られています。」と医者が陸稲に伝える。陸稲は「いつ戻りますか?」と聞くと、「今はまだお答えできません。」と無慈悲な返事しか帰ってこなかった。それでも、建造が戻ってきてくれて安心した。たとえ、建造に俺のことが忘れられても今度は俺が待つ。建造がずっと待っていてくれたように俺も待つ。そして伝える。「愛している」と。ゆっくりでいい。そしてまたいつか二人で見上げた星を一緒に見たい。その日まで俺を愛してくれた建造に伝える。「また逢う日まで、
またね」
しおりを挟む

処理中です...