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恋心の自覚
Side: ラニエリ
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父親の陰謀を知ってから、ラニエリは考えに考え、ある結論に至った。
「どう考えても父上の野望が成就するとは思えない。ここは父上の罪を告発し、自分の身の安全を確保した方が良い場面ですね」
しかし、下手に自首すると、一家ともども連帯責任で冗談ではなく物理的に首が飛んでしまう。生き延びるには、この情報をどこに持っていくかが重要だが、本来ラニエリを守ってくれるはずの王子エミリオは失脚してしまった。他ならぬラニエリが見放したのが原因で。
まさに自業自得だった。
詰みだ。こうなったら、父親の野望に便乗して自分が王になった方が生き延びられるか。いや、王になったところで長生きできるとは到底思えない。
悪あがきをすればするほど、行き詰まる未来ばかりが思い浮かぶ。
逃げの一手を模索するうちに、ふと天使の言葉を思い出した。
もし、これが最後の機会なら……エミリオに会いに行こう。
山積みの書類から顔を上げ、思い詰めた表情で、ふらふらと執務室を抜け出す宰相に、怖くて誰も声を掛けられなかった。
「……エミリオ殿下!」
謹慎中のエミリオがいる離宮に乗り込む。
エミリオは、燃え尽きた灰のようになっていたが、鬼気迫るラニエリを見てさすがに仰天した。
「ど、どうしたんだラニエリ」
「全てを話します。あなたには、聞く義務がある……!」
ラニエリは話した。マントヴァ公ロタールに言われて、年下のエミリオに天使の悪口を吹き込み、天使から遠ざけて次期王位継承者から外れるよう仕向けていたこと。父親の真の狙いと、魔術師の悪行について。
それは一種の懺悔《ざんげ》だった。悪かったと微塵も思っていない。ラニエリ自身も知らなかった話だ。だが、自分は悪くないと思うためにも、エミリオに心の内をぶちまけたかった。
「……お前の言っている事が本当なら、私たちは父上たちの下らない権力争いに巻き込まれ、踊らされていたのだな」
さすがにエミリオも、ことの真相に驚いている。額に手をあて、考えを整理しようと必死なようだ。
しかし、エミリオが答えを出すのを待つほど、ラニエリは暇ではない。自白してすっきりしたので、立ち上がって執務室に戻ろうとした。
「待て、ラニエリ。どこに行く気だ?」
「仕事に戻ります。どうせ破滅するなら、書類を全部片付けてからにしたいので」
「お前の仕事への忠誠心は目に余る…いや、そんなことはどうでもいい。私に馬と剣を用意してくれ」
エミリオに取りすがられ、ラニエリは足を止める。
いったい、この王子は何を言っているのだろう。
「馬と剣? いったい何のために?」
「私を騙した魔術師を討つ!」
ラニエリは呆気に取られた。
しかし、エミリオは燃えるような瞳で言い募る。
「このままでは、私は本当に愚かな道化だ! この離宮の片隅で人々に嘲笑され、虚しく老いていけというのか?! そんなことは耐えられない! せめて私を陥れた魔術師に一矢報いて死んでくれよう!」
馬鹿馬鹿しい。だが、とても真っ当な結論だと、ラニエリは認めざるをえなかった。騙されたのは愚かゆえだが、騙された事を怒るのは当然の権利だ。でなければ世の弱者は皆ものを言えなくなってしまう。
それにしても、エミリオの剣の腕は達者ととても言えない。愚直に魔術師の元へ突撃したところで、なんになるだろう。しかし、重要なのは、そこではない。今まで他人に任せきりで、自分で何も選んでこなかった幼馴染みが、自ら剣を取って戦うことを選んだのだ。
「……分かりました」
謹慎を命じられている王子を、逃がしてやる算段をしながら、ラニエリは決意していた。愚かな王子さえ選択できたのだから、自分も腹をくくるべきだ。
「どう考えても父上の野望が成就するとは思えない。ここは父上の罪を告発し、自分の身の安全を確保した方が良い場面ですね」
しかし、下手に自首すると、一家ともども連帯責任で冗談ではなく物理的に首が飛んでしまう。生き延びるには、この情報をどこに持っていくかが重要だが、本来ラニエリを守ってくれるはずの王子エミリオは失脚してしまった。他ならぬラニエリが見放したのが原因で。
まさに自業自得だった。
詰みだ。こうなったら、父親の野望に便乗して自分が王になった方が生き延びられるか。いや、王になったところで長生きできるとは到底思えない。
悪あがきをすればするほど、行き詰まる未来ばかりが思い浮かぶ。
逃げの一手を模索するうちに、ふと天使の言葉を思い出した。
もし、これが最後の機会なら……エミリオに会いに行こう。
山積みの書類から顔を上げ、思い詰めた表情で、ふらふらと執務室を抜け出す宰相に、怖くて誰も声を掛けられなかった。
「……エミリオ殿下!」
謹慎中のエミリオがいる離宮に乗り込む。
エミリオは、燃え尽きた灰のようになっていたが、鬼気迫るラニエリを見てさすがに仰天した。
「ど、どうしたんだラニエリ」
「全てを話します。あなたには、聞く義務がある……!」
ラニエリは話した。マントヴァ公ロタールに言われて、年下のエミリオに天使の悪口を吹き込み、天使から遠ざけて次期王位継承者から外れるよう仕向けていたこと。父親の真の狙いと、魔術師の悪行について。
それは一種の懺悔《ざんげ》だった。悪かったと微塵も思っていない。ラニエリ自身も知らなかった話だ。だが、自分は悪くないと思うためにも、エミリオに心の内をぶちまけたかった。
「……お前の言っている事が本当なら、私たちは父上たちの下らない権力争いに巻き込まれ、踊らされていたのだな」
さすがにエミリオも、ことの真相に驚いている。額に手をあて、考えを整理しようと必死なようだ。
しかし、エミリオが答えを出すのを待つほど、ラニエリは暇ではない。自白してすっきりしたので、立ち上がって執務室に戻ろうとした。
「待て、ラニエリ。どこに行く気だ?」
「仕事に戻ります。どうせ破滅するなら、書類を全部片付けてからにしたいので」
「お前の仕事への忠誠心は目に余る…いや、そんなことはどうでもいい。私に馬と剣を用意してくれ」
エミリオに取りすがられ、ラニエリは足を止める。
いったい、この王子は何を言っているのだろう。
「馬と剣? いったい何のために?」
「私を騙した魔術師を討つ!」
ラニエリは呆気に取られた。
しかし、エミリオは燃えるような瞳で言い募る。
「このままでは、私は本当に愚かな道化だ! この離宮の片隅で人々に嘲笑され、虚しく老いていけというのか?! そんなことは耐えられない! せめて私を陥れた魔術師に一矢報いて死んでくれよう!」
馬鹿馬鹿しい。だが、とても真っ当な結論だと、ラニエリは認めざるをえなかった。騙されたのは愚かゆえだが、騙された事を怒るのは当然の権利だ。でなければ世の弱者は皆ものを言えなくなってしまう。
それにしても、エミリオの剣の腕は達者ととても言えない。愚直に魔術師の元へ突撃したところで、なんになるだろう。しかし、重要なのは、そこではない。今まで他人に任せきりで、自分で何も選んでこなかった幼馴染みが、自ら剣を取って戦うことを選んだのだ。
「……分かりました」
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