実は家事万能な伯爵令嬢、婚約破棄されても全く問題ありません ~追放された先で洗濯した男は、伝説の天使様でした~

空色蜻蛉

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空へ続く道

第53話 ケーキを食べませんか?

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 ネーヴェは緊急の会議を開き、国境付近の守備を見直すよう、各地の領主に伝達させた。理由は邪竜だといえないので、帝国を侵略した東の蛮族の残党がうろついているせいにした。
 高官たちは、あまり危機感のない様子で、ネーヴェの要請を了承した。彼らの目下の関心事は、秋の収穫祭だ。
 このところ、フォレスタは平和だった。
 数年前、ネーヴェが戴冠することになった、魔物の虫による農業被害が収まり、各地の畑も元通りになっていた。植物の回復が異様に早いのは、天使様の恩恵らしい。
 今年の秋は、災害の前と同程度の収穫を見込んでいる。
 喉元過ぎればなんとやらで、民たちは安寧にまどろみ、帝国の蛮族襲来は遠い物語の出来事に等しい。

「そういえば、エミリオ元王子がご帰参されましたな」
「帝国の戦争で、功績を上げられたとか」

 会議の終わり、高官たちは世間話のように、その話題を口にした。

「陛下、フォレスタ公家を中央に呼び戻してもよろしいのでは」

 誰かがそう言い、ネーヴェを伺う。
 女王の戴冠時、政治の邪魔をする元王族派の官僚は異動させたり、権力を取り上げたりした。当時は災害への対処が優先ということで、ネーヴェの行った粛清はおおむね歓迎された。
 しかし、平和になった今、元王族派が権力を取り戻そうと画策し始めている。

「それは今日の議題なのですか?」

 ネーヴェは冷ややかな威圧で、相手を黙らせた。
 女王でいる内は、舐められては仕事にならないと、氷の美貌を活かすことにしている。

「いえ、単なる雑談ですよ、陛下」

 高官たちは、苦笑いで自分の言葉をひっこめた。
 王位に執着がないのは本当だけど、地位や権力がないとできないことがあるのは確かだ。女人禁止の聖堂に出入りできるのは、ネーヴェが女王だからこそ、である。シエロがいない今、彼を取り返すためにも、権力を失う訳にはいかない。匙加減が難しいところだ。

「モップ、モップ! どこにいるのですか? 出てこないと焼き鳥にしますよ!」
 
 自室に帰って一息つくと、いなくなった雄鶏の行方が気になった。
 ストレス発散がてら、探すことにする。

『出て行った方が焼き鳥になりそうで、こええよ!』

 雄鶏は宝箱の中に隠れていた。
 ネーヴェが蓋をぱかっと開くと、驚いて飛び上がる。

「見つけましたよ……あら?」
 
 雄鶏だけかと思ったら、隣に真っ白な鳩が入っていた。

「モップ、あなたもしかして浮気を」
『その前に、あの真っ赤な嬢ちゃんとは、付き合ってもいねえよ!』

 ネーヴェは雄鶏の移り気を心配したが、関係なかったようだ。
 白い鳩が『違います』と綺麗な女性の声で弁解する。

『ネーヴェ様、私はエイルです。勝手に忍んできてごめんなさい。あなたと二人きりで、話したくて』
「まあ、エイル様?!」

 鳩は、エイルが変身した姿だという。
 ネーヴェは仰天した。しかし、好都合だと手を打ち鳴らして歓迎する。

「私、ちょうどナッツたっぷりのズコットを作ったところでしたの。女子同士、気兼ねなくティータイムと参りましょうか。あ、でも鳥の姿ではケーキは食べられませんか?」
『……人間の姿に戻ります。申し訳ありませんが、服をお貸しいただけないでしょうか』

 ネーヴェの申し出に、白い鳩は『ケーキ食べたいです』ともじもじしながら答える。
 女性の近衛騎士フルヴィアも呼んで、皆でティーパーティーしようという話になった。
 
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