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おかえりなさい
第72話 お祝いしなければいけませんね
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荷物が軽いと思ったら、雄鶏のモップを生命樹に置き忘れてきてしまった。
我ながら薄情だが、翌朝出発する際に荷物を整理して、ネーヴェはそのことに気付いた。
「ううっ、とても立派でもふもふのニワトリでしたのに!」
鳥好きのフルヴィアは残念そうだ。
「そうね。とても食べ応えがありそうだったわ」
ネーヴェは真顔で同意する。
「でも今度は、雌鳥が良いわ。卵が欲しいもの。ああ、もう一度ウズラが飼いたいわね⋯⋯」
女王になる前に住んでいた家が気になる。
次にやることを決めるまで、あそこに住んでも良いかもしれない。
雄鶏のモップのことは、そこまで心配していなかった。モップのことを慕うブリストルと一緒であるし、二羽で仲良くやっていくだろうと思う。
「⋯⋯」
シエロが何か考えているように、こちらを見つめている。
その視線をネーヴェは無視した。
旅に出る時は、素直に彼の腕の中に飛び込もうと思い詰めていたのだが、再会して落ち着くと恥ずかしくてとても出来ない。
「あ、実家が見えてきました。風車城です!」
フルヴィアが指差す先には、葡萄畑に囲まれ、巨大な風車をいくつも載せた城が佇んでいる。
あれがフォート伯爵の本拠地、風車城らしい。
「ご存知かもしれませんが、当家はもっとも粒が大きい葡萄の品種を作り出して、王家に献上した歴史があります。ここはフォレスタでも有数の葡萄の産地です」
葡萄畑に入っていくと、風車城の周囲に人が集まっているのが見えた。
その中で一際立派な服を身に付けた壮年の男性が、フルヴィアを見て驚きの声を上げる。
「フルヴィア!」
「お父様!」
駆け寄ったフルヴィアと、フォート伯爵は再会の抱擁を交わした。
「どこへ行っていたのだ? 王城に何度も手紙を出したのだが、届いていなかったか」
「ごめんなさい。忙しくて」
「まあ良い。ちょうど良いところに帰ってきた。本日は佳き日、お前の姉オリヴィアの結婚式だ!」
「ええっ、お姉様の結婚式?!」
水車城の前には、チューリップのように膨らんだ白いドレスを着た新婦と、新婦に合わせ白いコートを着込んだ男性が緊張した面持ちで立っている。
その周りには、参列者と思われる家族連れが並んでいた。
「まぁ⋯⋯」
ちょうど良いタイミングだっただろうか。
今は礼服の持ち合わせが無いのだが。旅の途中で狩人のような格好をしているネーヴェは、参列することになったらどうしようかと思う。
そこで、フルヴィアの父親、フォート伯爵と目が合った。
「陛っ」
フォート伯爵は目を丸くして、慌てて口をつぐむ。
娘の勤め先を知っているなら、こちらの正体はお察しだ。
「お忍びですかな」
「ええ⋯⋯」
小声で呼びかけられ、苦笑しながら頷き返す。
フォート伯爵は執事を呼び付け「尊い方なので丁重におもてなしするように」と言った。
「本来なら当主の私が接待すべきところですが、これから式があります。ご挨拶が遅れること、どうかご容赦下さい。まずは離れの客室にて、旅の疲れを癒して頂ければと存じます」
「ええ。押しかけてきたのは、こちらですから。娘の晴れ舞台ともなれば、何をおいても優先したいのが親心でしょう」
「寛大なお心遣いに感謝します。夜会もございますので、どうかそちらはご参加頂ければ。ドレスはこちらで用意いたします」
ネーヴェは、伯爵のもてなしを受けようと考える。無下にすれば、逆に伯爵の顔に泥を塗ることになるだろう。
ふと振り返ってシエロを見ると、結婚式のために来た正装の司祭に捕まっていた。
「シエロ様! どうか門出に立つ彼らを祝福してやってください」
「そうだな。これも何かの縁だ」
伯爵の娘の結婚式ともなれば、高位司祭が呼ばれる訳で、高位司祭ならシエロの正体を知っているのだろう。
こちらの視線に気付いたシエロと目線が合う。お仕事頑張って下さいという意図を込めて微笑むと、シエロは深海色の瞳を細めて僅かに苦笑した。
我ながら薄情だが、翌朝出発する際に荷物を整理して、ネーヴェはそのことに気付いた。
「ううっ、とても立派でもふもふのニワトリでしたのに!」
鳥好きのフルヴィアは残念そうだ。
「そうね。とても食べ応えがありそうだったわ」
ネーヴェは真顔で同意する。
「でも今度は、雌鳥が良いわ。卵が欲しいもの。ああ、もう一度ウズラが飼いたいわね⋯⋯」
女王になる前に住んでいた家が気になる。
次にやることを決めるまで、あそこに住んでも良いかもしれない。
雄鶏のモップのことは、そこまで心配していなかった。モップのことを慕うブリストルと一緒であるし、二羽で仲良くやっていくだろうと思う。
「⋯⋯」
シエロが何か考えているように、こちらを見つめている。
その視線をネーヴェは無視した。
旅に出る時は、素直に彼の腕の中に飛び込もうと思い詰めていたのだが、再会して落ち着くと恥ずかしくてとても出来ない。
「あ、実家が見えてきました。風車城です!」
フルヴィアが指差す先には、葡萄畑に囲まれ、巨大な風車をいくつも載せた城が佇んでいる。
あれがフォート伯爵の本拠地、風車城らしい。
「ご存知かもしれませんが、当家はもっとも粒が大きい葡萄の品種を作り出して、王家に献上した歴史があります。ここはフォレスタでも有数の葡萄の産地です」
葡萄畑に入っていくと、風車城の周囲に人が集まっているのが見えた。
その中で一際立派な服を身に付けた壮年の男性が、フルヴィアを見て驚きの声を上げる。
「フルヴィア!」
「お父様!」
駆け寄ったフルヴィアと、フォート伯爵は再会の抱擁を交わした。
「どこへ行っていたのだ? 王城に何度も手紙を出したのだが、届いていなかったか」
「ごめんなさい。忙しくて」
「まあ良い。ちょうど良いところに帰ってきた。本日は佳き日、お前の姉オリヴィアの結婚式だ!」
「ええっ、お姉様の結婚式?!」
水車城の前には、チューリップのように膨らんだ白いドレスを着た新婦と、新婦に合わせ白いコートを着込んだ男性が緊張した面持ちで立っている。
その周りには、参列者と思われる家族連れが並んでいた。
「まぁ⋯⋯」
ちょうど良いタイミングだっただろうか。
今は礼服の持ち合わせが無いのだが。旅の途中で狩人のような格好をしているネーヴェは、参列することになったらどうしようかと思う。
そこで、フルヴィアの父親、フォート伯爵と目が合った。
「陛っ」
フォート伯爵は目を丸くして、慌てて口をつぐむ。
娘の勤め先を知っているなら、こちらの正体はお察しだ。
「お忍びですかな」
「ええ⋯⋯」
小声で呼びかけられ、苦笑しながら頷き返す。
フォート伯爵は執事を呼び付け「尊い方なので丁重におもてなしするように」と言った。
「本来なら当主の私が接待すべきところですが、これから式があります。ご挨拶が遅れること、どうかご容赦下さい。まずは離れの客室にて、旅の疲れを癒して頂ければと存じます」
「ええ。押しかけてきたのは、こちらですから。娘の晴れ舞台ともなれば、何をおいても優先したいのが親心でしょう」
「寛大なお心遣いに感謝します。夜会もございますので、どうかそちらはご参加頂ければ。ドレスはこちらで用意いたします」
ネーヴェは、伯爵のもてなしを受けようと考える。無下にすれば、逆に伯爵の顔に泥を塗ることになるだろう。
ふと振り返ってシエロを見ると、結婚式のために来た正装の司祭に捕まっていた。
「シエロ様! どうか門出に立つ彼らを祝福してやってください」
「そうだな。これも何かの縁だ」
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こちらの視線に気付いたシエロと目線が合う。お仕事頑張って下さいという意図を込めて微笑むと、シエロは深海色の瞳を細めて僅かに苦笑した。
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