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(※リュンクス視点に戻る)
尻に異物が入っている感触がある。
また夜の間に、カノンが勝手にしたのだろうと、リュンクスは熱い息をこぼした。寝起きの頭は今ひとつ働かない。
「あふぅ……カノン、いい加減抜いてぇ」
「駄目だ」
朝にきざしている息子を、リュンクスに処理させるという、まさに暴君の所業をしながら、カノンは満足げに黄金の瞳を細めた。
振り回されているリュンクスは、腹が立たない事もないのだが「いいぞ、リュンクス」と喉元を撫でられれば、可愛がられている猫のように横暴を許してしまう。
いつも節度を守って他人と接しているカノンが、我がままな態度を取るのは、リュンクスを初めとする一部の身内だけだ。
「ふぁ!」
「っ……」
身のうちに叩きつけられた熱い魔力に、リュンクスはのけぞる。
衝撃で軽くいってしまった。
すっきりした顔で立ち上がるカノンの背中を、リュンクスはぼんやりベッドから見上げた。着替えている最中の裸体を凝視する。
カノンは肌の色が濃く、筋肉が付いた背中は滑らかで、腰までのラインが艶《なま》めかしい。
「役得と思っているでしょう?」
「のわっ!」
胸中を指摘されて、リュンクスは飛び上がって驚いた。
窓がいつの間にか開いている。
紅い髪の吸血鬼の女性が、窓際に腰掛けてニコニコしていた。
「ガーネットさん!」
「ふふふ、隙あり、なのよ」
花の都アウストラリスの領主、ガーネットだった。
「何の用だ」
動揺と羞恥であたふたしているリュンクスと対照的に、カノンは全く動じていない。大貴族の生まれ育ちで、他人の目に慣れている。
「わざわざ、この私が伝令に来てあげたのに、何ですか、その上から目線は」
「伝令の仕事を果たしてくれるなら、礼を言う」
言外に、さっさと言えと圧力を掛けるカノン。
ガーネットは「仕方ないわね」と眉を上げた。
「天空城に、見知らぬ魔獣が近付いているわ。竜に似ているけど、何かしら。魔術師が上に乗っているわ。心当たりは無い?」
リュンクスは、カノンと顔を見合わせた。
首都を奪還し、ノクトと別れてから数日が経過している。
ついに、リュンクス達以外の魔術師が様子を見に来たのだ。
カノンは吸血鬼の領主達と協力し、天空城を取り巻く雲の壁に魔術を仕掛けていた。雲に入ったものに鎌鼬でダメージを与え、強風で真っ直ぐ進めなくする魔術だ。
並の魔術師では、この守りを突破できない。
雲の壁を通り抜けるには、長時間、結界を張り続ける必要があるからだ。また、グリフィンなどの騎獣も簡単に吹き飛ばされてしまう。
竜のように頑丈な魔獣に乗り、強度の高い結界を長時間張り続ける事ができる魔術師でなければ、天空城に辿り付けないだろう。
乗り越えて来る魔術師は、相当レベルの高い魔術師に違いなかった。
リュンクスとカノンは、外に出て、それぞれ蒼竜とべフレートの竜を呼び寄せる。
「あれ?」
「どうした」
テラスで竜を待っている間、リュンクスは翼の生えた使用人が庭を歩いていることに気付いた。
「翼人だ」
この天空城サジタリウスは、獣人と吸血鬼が主な住民だと思っていたが。
「彼らは先住民だからな。一部の翼人は、このサジタリウスに住み続けているそうだ。先の戦いで投降した者もいる」
カノンは、居心地悪そうに地上を歩く翼人を見ながら答える。
「それよりも……リュンクスは、テンペストに乗るのか?」
心配そうに聞いてくる。
「離れると何かあっても分からないだろう」
「その件なんだけど、連絡が取りやすいように魔道具を作ってみた」
リュンクスは懐から金の腕輪を取り出し、カノンに渡した。
「三人で双方向に会話できるよう、三つ作ったよ。魔術が封じられていても、会話できる。肌から魔力を吸い取って、自動で魔術を発動するんだぜ」
「いつの間に……」
腕輪を受け取って、カノンは感嘆する。
いつか作るだろうと思っていたが、ここ数日で仕上げてくるとは予想外だった。
「へへっ、城の宝物庫から、金品をちょろまかしたんだ。ちょうど魔術が馴染みやすい素材があってさ」
無断で頂いたと告白するリュンクスに、カノンは嘆息する。
「普段なら説教するところだが、今は非常事態だ。持ち主を探し出して許可を取っている暇はない」
カノンは自分に言い聞かせるように呟く。
真面目だなあとリュンクスは思った。
「これで離れた竜の背中にいても、会話できるだろ」
「俺がいないからといって、羽目を外すな」
「はーい」
リュンクスは顔をしかめるカノンに手を振り、通信用の腕輪を身に付けて、蒼竜によじ登る。
カノンは諦めたようで、自分もべフレートの竜に乗った。
二頭の竜は離陸を開始した。
尻に異物が入っている感触がある。
また夜の間に、カノンが勝手にしたのだろうと、リュンクスは熱い息をこぼした。寝起きの頭は今ひとつ働かない。
「あふぅ……カノン、いい加減抜いてぇ」
「駄目だ」
朝にきざしている息子を、リュンクスに処理させるという、まさに暴君の所業をしながら、カノンは満足げに黄金の瞳を細めた。
振り回されているリュンクスは、腹が立たない事もないのだが「いいぞ、リュンクス」と喉元を撫でられれば、可愛がられている猫のように横暴を許してしまう。
いつも節度を守って他人と接しているカノンが、我がままな態度を取るのは、リュンクスを初めとする一部の身内だけだ。
「ふぁ!」
「っ……」
身のうちに叩きつけられた熱い魔力に、リュンクスはのけぞる。
衝撃で軽くいってしまった。
すっきりした顔で立ち上がるカノンの背中を、リュンクスはぼんやりベッドから見上げた。着替えている最中の裸体を凝視する。
カノンは肌の色が濃く、筋肉が付いた背中は滑らかで、腰までのラインが艶《なま》めかしい。
「役得と思っているでしょう?」
「のわっ!」
胸中を指摘されて、リュンクスは飛び上がって驚いた。
窓がいつの間にか開いている。
紅い髪の吸血鬼の女性が、窓際に腰掛けてニコニコしていた。
「ガーネットさん!」
「ふふふ、隙あり、なのよ」
花の都アウストラリスの領主、ガーネットだった。
「何の用だ」
動揺と羞恥であたふたしているリュンクスと対照的に、カノンは全く動じていない。大貴族の生まれ育ちで、他人の目に慣れている。
「わざわざ、この私が伝令に来てあげたのに、何ですか、その上から目線は」
「伝令の仕事を果たしてくれるなら、礼を言う」
言外に、さっさと言えと圧力を掛けるカノン。
ガーネットは「仕方ないわね」と眉を上げた。
「天空城に、見知らぬ魔獣が近付いているわ。竜に似ているけど、何かしら。魔術師が上に乗っているわ。心当たりは無い?」
リュンクスは、カノンと顔を見合わせた。
首都を奪還し、ノクトと別れてから数日が経過している。
ついに、リュンクス達以外の魔術師が様子を見に来たのだ。
カノンは吸血鬼の領主達と協力し、天空城を取り巻く雲の壁に魔術を仕掛けていた。雲に入ったものに鎌鼬でダメージを与え、強風で真っ直ぐ進めなくする魔術だ。
並の魔術師では、この守りを突破できない。
雲の壁を通り抜けるには、長時間、結界を張り続ける必要があるからだ。また、グリフィンなどの騎獣も簡単に吹き飛ばされてしまう。
竜のように頑丈な魔獣に乗り、強度の高い結界を長時間張り続ける事ができる魔術師でなければ、天空城に辿り付けないだろう。
乗り越えて来る魔術師は、相当レベルの高い魔術師に違いなかった。
リュンクスとカノンは、外に出て、それぞれ蒼竜とべフレートの竜を呼び寄せる。
「あれ?」
「どうした」
テラスで竜を待っている間、リュンクスは翼の生えた使用人が庭を歩いていることに気付いた。
「翼人だ」
この天空城サジタリウスは、獣人と吸血鬼が主な住民だと思っていたが。
「彼らは先住民だからな。一部の翼人は、このサジタリウスに住み続けているそうだ。先の戦いで投降した者もいる」
カノンは、居心地悪そうに地上を歩く翼人を見ながら答える。
「それよりも……リュンクスは、テンペストに乗るのか?」
心配そうに聞いてくる。
「離れると何かあっても分からないだろう」
「その件なんだけど、連絡が取りやすいように魔道具を作ってみた」
リュンクスは懐から金の腕輪を取り出し、カノンに渡した。
「三人で双方向に会話できるよう、三つ作ったよ。魔術が封じられていても、会話できる。肌から魔力を吸い取って、自動で魔術を発動するんだぜ」
「いつの間に……」
腕輪を受け取って、カノンは感嘆する。
いつか作るだろうと思っていたが、ここ数日で仕上げてくるとは予想外だった。
「へへっ、城の宝物庫から、金品をちょろまかしたんだ。ちょうど魔術が馴染みやすい素材があってさ」
無断で頂いたと告白するリュンクスに、カノンは嘆息する。
「普段なら説教するところだが、今は非常事態だ。持ち主を探し出して許可を取っている暇はない」
カノンは自分に言い聞かせるように呟く。
真面目だなあとリュンクスは思った。
「これで離れた竜の背中にいても、会話できるだろ」
「俺がいないからといって、羽目を外すな」
「はーい」
リュンクスは顔をしかめるカノンに手を振り、通信用の腕輪を身に付けて、蒼竜によじ登る。
カノンは諦めたようで、自分もべフレートの竜に乗った。
二頭の竜は離陸を開始した。
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