山猫に首輪は付けられない

空色蜻蛉

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*四年前* 入学

08 カノンの提案

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「リュンクス、君の事を利用してやろうとか、そういうつもりはないんだ。逆に守れたら良いと思う。初めて会った時から、何となく好ましく感じていた。もっと君と親しい仲になりたいだけだ」
 
 カノンの言葉に嘘は無いと感じる。
 乗るべきか、そるべきか。自分が重要な決断を迫られていると、リュンクスは感じた。
 うまくいけば、貴重な友人と魔術の師匠、両方が手に入る。
 
「俺達は友達になれるかな……?」
 
 マスターだとかサーヴァントだとか、難しい事は分からない。
 ただ、リュンクスは同じ魔術師の友達が欲しかった。
 
「君が望むならば。そして、俺もそれを望んでいる」
 
 カノンはきっぱりと答えた。
 これって友達のやり取りだっけ、とリュンクスは笑いが込み上げる。塔に来るまでに想像していたのは、もっと普通の「友達になろうよ」「うん、よろしく」という会話だった。
 こんな仰々しい、まるで王様と騎士のような格式ばった言葉を交わすなんて。

「分かった。お前と契約するよ」
 
 リュンクスの答えに、カノンは僅かに安堵した様子を見せた。
 もしかして、緊張していたのだろうか。
 カノンは手を伸ばして、リュンクスの頬に触れる寸前で止めた。
 
「キスをしてもいいか?」
「!」 

 リュンクスは驚いたが、先輩とはもっと凄いことをやったのに、今更だと思う。

「大丈夫」
 
 乾いた感触が、ふわっと唇を覆って、すぐに離れた。
 間近で見るとカノンの睫毛は長い。しかも睫毛まで金色だ。

「嫌悪感は、なかったか」
 
 注意深くリュンクスの様子を観察するカノン。

「マスターとサーヴァントの契約は、二つの条件を満たすと成立する。一つは、口に出して契約に同意すること。先程のリュンクスの意思表示で、一つ目の条件は満たされた。もう一つの条件は……セックスすることだ」
「せ……」

 リュンクスは、思わず吹き出しそうになった。
 
「どちらが欠けても、正式契約にはならない。契約をしたサーヴァントは、マスターの命令に逆らえなくなる」
「命令に逆らえなくなる?! どうしてマスターばっかり有利なんだよ」
 
 憤慨しながら、リュンクスはその答えを悟っていた。
 この世界は弱肉強食なのだ。
 今のリュンクスは弱者で、カノンに守ってもらわざるをえない。
 
「どうする? 逃げるなら今の内だぞ」
 
 カノンは脅かすように言ったが、その口調にも瞳にも、からかうような雰囲気はまったく無かった。
 慎重に、誠実にリュンクスの意思を確認しようとしているのだ。
 
「もし、君に受け入れる覚悟があるのなら、次の休みに俺の部屋に来てくれ」

 あくまでも穏やかな口調で、カノンは続ける。
 
「次は、君を俺のものにする」
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