12 / 266
*四年前* 入学
11 先輩の誘い
しおりを挟む
友達がいると学校生活は楽しくなる。二人の友人を得たリュンクスは、塔で過ごすことに慣れつつあった。
オナーは庶民派で、リュンクスと価値観や感覚が合っている。彼は情報収集が趣味らしく、幅広い人脈を持っていた。食堂でアルバイトを募集していることを教えてくれたのもオナーだ。授業に慣れてきたら、稼ぎに行こうとリュンクスは考えていた。
カノンは貴族らしく、礼儀にうるさく上等なものにこだわる。しかし、身分は気にしない主義らしく、リュンクス達とも対等に接してくれた。彼は実家でさまざまな魔術を既に習得しているらしく、リュンクスに魔術の基礎を教えてくれる。
その日は薬草学の授業があった。
学生は各テーブルに分かれ、それぞれ薬を煎じている。
父親が薬草を売る仕事をしていたため、薬草学はリュンクスにとって楽勝の授業である。誰よりも先に課題を終わらせて暇を持て余していた。
「そういえばカノンと一緒じゃないな。あいつはどこに行ったんだ?」
ぼんやりしているリュンクスに気付いて、同じテーブルの同級生が話しかけてくる。
「親戚が用事で塔にきているから、今日は一日それに付き合うんだとさ」
リュンクスに「寄り道はしないで寮に戻れ」と念押しして、カノンは出掛けていった。
だから今日はリュンクスは一人だ。
「じゃあ今日は俺と寝てみるか? カノンばかりと一緒にいないで、たまには俺達と遊ぼうぜ」
性的な誘いを堂々と掛けてくる同級生に、リュンクスは呆れた。
しかし、ほんの数日で、この塔ではこういったオープンな会話が当たり前なのだと、慣れてきた。
それにしても、誰が誰と交わったか、魔術師は見れば分かるというのだから、驚きだ。
なんでも、マスター属性の魔術師は「魔眼」というものを有しており、魔力の流れを見ることで、事後かどうかも分かるらしい。
「余計なお世話だ。枕でも抱いてろ」
冗談半分で誘いを掛けてくる同級生に、リュンクスはそっけなく応じる。
ただ内心では少し苛立ちを感じていた。
カノンと寝たのは、片手の指に満たない程度だ。彼はリュンクスの体を配慮し、紳士的な態度を崩さない。もっと乱暴に扱ってくれても良いのに、と思う。
リュンクスはサーヴァントとしての性質で、主に従属したい気持ちが芽生え始めていた。しかし、自分の欲求の正体を、まだ正確に把握していない。
不明瞭な気持ちのまま、薬草学の時間は終わった。
「リュンクス、ご飯食べに行こうよ!」
「ああ」
オナーが昼食に誘ってくれる。
二人で歩き始めたが、食堂に入る手前で、上級生が声を掛けてきた。
「やあ、リュンクス」
リュンクスは足を止めた。止めざるをえなかった。
「……ノクト先輩」
ついに来た、と身構える。
陽光の下で対面したノクトは、あの夜と同じく綺麗な銀髪と涼やかな容姿をしていた。道行く学生が、ちらちらとノクトを見ている。オナーの情報どおり、彼は有名人らしい。
「久しぶりだね。昼御飯はまだだろう。私と一緒においで」
魔力を乗せた声ではないが、穏やかな口調は有無を言わせない強さを滲ませている。リュンクスの緊張した様子に、オナーが「大丈夫?」と聞いてきた。
いつか、こういう日が来ると思っていた。
リュンクスは覚悟を決めると、笑みを浮かべた。
「オナー、先輩と食べてくるよ。先に行ってて」
「う、うん。また後でね、リュンクス!」
オナーは手を振って去って行く。
手招きするノクトの後を追って、リュンクスは食堂を歩き始めた。
このことを知らせたらカノンはどういう反応をするだろうか、と考えながら。
オナーは庶民派で、リュンクスと価値観や感覚が合っている。彼は情報収集が趣味らしく、幅広い人脈を持っていた。食堂でアルバイトを募集していることを教えてくれたのもオナーだ。授業に慣れてきたら、稼ぎに行こうとリュンクスは考えていた。
カノンは貴族らしく、礼儀にうるさく上等なものにこだわる。しかし、身分は気にしない主義らしく、リュンクス達とも対等に接してくれた。彼は実家でさまざまな魔術を既に習得しているらしく、リュンクスに魔術の基礎を教えてくれる。
その日は薬草学の授業があった。
学生は各テーブルに分かれ、それぞれ薬を煎じている。
父親が薬草を売る仕事をしていたため、薬草学はリュンクスにとって楽勝の授業である。誰よりも先に課題を終わらせて暇を持て余していた。
「そういえばカノンと一緒じゃないな。あいつはどこに行ったんだ?」
ぼんやりしているリュンクスに気付いて、同じテーブルの同級生が話しかけてくる。
「親戚が用事で塔にきているから、今日は一日それに付き合うんだとさ」
リュンクスに「寄り道はしないで寮に戻れ」と念押しして、カノンは出掛けていった。
だから今日はリュンクスは一人だ。
「じゃあ今日は俺と寝てみるか? カノンばかりと一緒にいないで、たまには俺達と遊ぼうぜ」
性的な誘いを堂々と掛けてくる同級生に、リュンクスは呆れた。
しかし、ほんの数日で、この塔ではこういったオープンな会話が当たり前なのだと、慣れてきた。
それにしても、誰が誰と交わったか、魔術師は見れば分かるというのだから、驚きだ。
なんでも、マスター属性の魔術師は「魔眼」というものを有しており、魔力の流れを見ることで、事後かどうかも分かるらしい。
「余計なお世話だ。枕でも抱いてろ」
冗談半分で誘いを掛けてくる同級生に、リュンクスはそっけなく応じる。
ただ内心では少し苛立ちを感じていた。
カノンと寝たのは、片手の指に満たない程度だ。彼はリュンクスの体を配慮し、紳士的な態度を崩さない。もっと乱暴に扱ってくれても良いのに、と思う。
リュンクスはサーヴァントとしての性質で、主に従属したい気持ちが芽生え始めていた。しかし、自分の欲求の正体を、まだ正確に把握していない。
不明瞭な気持ちのまま、薬草学の時間は終わった。
「リュンクス、ご飯食べに行こうよ!」
「ああ」
オナーが昼食に誘ってくれる。
二人で歩き始めたが、食堂に入る手前で、上級生が声を掛けてきた。
「やあ、リュンクス」
リュンクスは足を止めた。止めざるをえなかった。
「……ノクト先輩」
ついに来た、と身構える。
陽光の下で対面したノクトは、あの夜と同じく綺麗な銀髪と涼やかな容姿をしていた。道行く学生が、ちらちらとノクトを見ている。オナーの情報どおり、彼は有名人らしい。
「久しぶりだね。昼御飯はまだだろう。私と一緒においで」
魔力を乗せた声ではないが、穏やかな口調は有無を言わせない強さを滲ませている。リュンクスの緊張した様子に、オナーが「大丈夫?」と聞いてきた。
いつか、こういう日が来ると思っていた。
リュンクスは覚悟を決めると、笑みを浮かべた。
「オナー、先輩と食べてくるよ。先に行ってて」
「う、うん。また後でね、リュンクス!」
オナーは手を振って去って行く。
手招きするノクトの後を追って、リュンクスは食堂を歩き始めた。
このことを知らせたらカノンはどういう反応をするだろうか、と考えながら。
39
あなたにおすすめの小説
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
【bl】砕かれた誇り
perari
BL
アルファの幼馴染と淫らに絡んだあと、彼は医者を呼んで、私の印を消させた。
「来月結婚するんだ。君に誤解はさせたくない。」
「あいつは嫉妬深い。泣かせるわけにはいかない。」
「君ももう年頃の残り物のオメガだろ? 俺の印をつけたまま、他のアルファとお見合いするなんてありえない。」
彼は冷たく、けれどどこか薄情な笑みを浮かべながら、一枚の小切手を私に投げ渡す。
「長い間、俺に従ってきたんだから、君を傷つけたりはしない。」
「結婚の日には招待状を送る。必ず来て、席につけよ。」
---
いくつかのコメントを拝見し、大変申し訳なく思っております。
私は現在日本語を勉強しており、この文章はAI作品ではありませんが、
一部に翻訳ソフトを使用しています。
もし読んでくださる中で日本語のおかしな点をご指摘いただけましたら、
本当にありがたく思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる