93 / 266
*二年前* 選択
80 カノンの過去
しおりを挟む
(※カノン視点)
親同士が仲が良い関係で、カノンは幼い頃に、リーアン王子と引き合わされた。
リーアン王子は、カノンより一つ年上だが、目線の高さは同じくらいだった。王族の血を引くものに偶《たま》に現れる綺麗な金の瞳。きりりと整った容姿で、憎々しげに睨みつけてきた彼の表情を、カノンは今も忘れられない。
「あなたが、例の魔術が使えない王子か」
「カノン!」
会って早々に失礼な事を言ったカノンに、父親は焦って叱責した。
カノンはまだ子供だったので、周囲の大人たちが噂している事を、考えなしに口に出してしまったのだ。
「上等だ」
リーアンは、薄っすらと笑みを浮かべた。
「表に出ろ」
実は、この王子様は大変短気だった。
二人の父親が額に手をあてて溜め息を吐いているのを尻目に、リーアンは中庭にカノンを引っ張り出し、練習用の木剣で文字通り無礼者を叩きのめしたのだ。
カノンも剣術の手ほどきを受けていたが、リーアンには全く敵わなかった。
こうしてカノンの失言は、子供同士の喧嘩ということで水に流された。
普通なら「なんて凶暴な王子だ」と恐れて、それ以降、リーアンに近寄らない。
だがカノンは、超が付く負けず嫌いだったので、剣術とはいえリーアンに負けたのが気に入らなかった。
家で修行して、たびたびリーアンに喧嘩を売りに行ったのだ。
「お前は、面白い奴だな」
リーアンはリーアンで、食らい付いてくるカノンを大層気に入った。
いつの間にか二人は、互いを名前で呼び合う無二の親友となっていた。
「リーアン、魔術にこだわらなくていい。それは俺の分野だ。俺がカバーする」
ある日カノンは、こっそり魔術の練習をするリーアンを見つけてしまった。
リーアンは、怒って剣を投げた。
「誰がお前にそんな事を頼んだ! 俺に指図するな!」
剣が横の壁に突き刺さったので、カノンは内心冷や冷やした。
「……リーアン。俺が趣味や酔狂で、魔術の修行を積んでいるとでも? お前が剣術を努力しているように、俺だって色々なものを犠牲にして魔術に打ち込んでいる。だから俺に任せて欲しい」
「魔術王国アウレルムで、魔術の使えない俺が王位に付けるとでも?」
「前例が無ければ作ればいい。だいたい、アウレルム以外の国の王は、魔術を使えない者が大半だ」
王に必要なのは、魔術ではない。
そう説くと、リーアンは複雑な表情で「一理ある」と呟いた。
カノンという心を許せる友を得た事で、リーアンは落ち着き、思慮深い一面を見せるようになった。
謙虚で凛々しく賢い王子は、魔術の使えない一般市民から絶大な支持を得るようになった。
親同士が仲が良い関係で、カノンは幼い頃に、リーアン王子と引き合わされた。
リーアン王子は、カノンより一つ年上だが、目線の高さは同じくらいだった。王族の血を引くものに偶《たま》に現れる綺麗な金の瞳。きりりと整った容姿で、憎々しげに睨みつけてきた彼の表情を、カノンは今も忘れられない。
「あなたが、例の魔術が使えない王子か」
「カノン!」
会って早々に失礼な事を言ったカノンに、父親は焦って叱責した。
カノンはまだ子供だったので、周囲の大人たちが噂している事を、考えなしに口に出してしまったのだ。
「上等だ」
リーアンは、薄っすらと笑みを浮かべた。
「表に出ろ」
実は、この王子様は大変短気だった。
二人の父親が額に手をあてて溜め息を吐いているのを尻目に、リーアンは中庭にカノンを引っ張り出し、練習用の木剣で文字通り無礼者を叩きのめしたのだ。
カノンも剣術の手ほどきを受けていたが、リーアンには全く敵わなかった。
こうしてカノンの失言は、子供同士の喧嘩ということで水に流された。
普通なら「なんて凶暴な王子だ」と恐れて、それ以降、リーアンに近寄らない。
だがカノンは、超が付く負けず嫌いだったので、剣術とはいえリーアンに負けたのが気に入らなかった。
家で修行して、たびたびリーアンに喧嘩を売りに行ったのだ。
「お前は、面白い奴だな」
リーアンはリーアンで、食らい付いてくるカノンを大層気に入った。
いつの間にか二人は、互いを名前で呼び合う無二の親友となっていた。
「リーアン、魔術にこだわらなくていい。それは俺の分野だ。俺がカバーする」
ある日カノンは、こっそり魔術の練習をするリーアンを見つけてしまった。
リーアンは、怒って剣を投げた。
「誰がお前にそんな事を頼んだ! 俺に指図するな!」
剣が横の壁に突き刺さったので、カノンは内心冷や冷やした。
「……リーアン。俺が趣味や酔狂で、魔術の修行を積んでいるとでも? お前が剣術を努力しているように、俺だって色々なものを犠牲にして魔術に打ち込んでいる。だから俺に任せて欲しい」
「魔術王国アウレルムで、魔術の使えない俺が王位に付けるとでも?」
「前例が無ければ作ればいい。だいたい、アウレルム以外の国の王は、魔術を使えない者が大半だ」
王に必要なのは、魔術ではない。
そう説くと、リーアンは複雑な表情で「一理ある」と呟いた。
カノンという心を許せる友を得た事で、リーアンは落ち着き、思慮深い一面を見せるようになった。
謙虚で凛々しく賢い王子は、魔術の使えない一般市民から絶大な支持を得るようになった。
31
あなたにおすすめの小説
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
【bl】砕かれた誇り
perari
BL
アルファの幼馴染と淫らに絡んだあと、彼は医者を呼んで、私の印を消させた。
「来月結婚するんだ。君に誤解はさせたくない。」
「あいつは嫉妬深い。泣かせるわけにはいかない。」
「君ももう年頃の残り物のオメガだろ? 俺の印をつけたまま、他のアルファとお見合いするなんてありえない。」
彼は冷たく、けれどどこか薄情な笑みを浮かべながら、一枚の小切手を私に投げ渡す。
「長い間、俺に従ってきたんだから、君を傷つけたりはしない。」
「結婚の日には招待状を送る。必ず来て、席につけよ。」
---
いくつかのコメントを拝見し、大変申し訳なく思っております。
私は現在日本語を勉強しており、この文章はAI作品ではありませんが、
一部に翻訳ソフトを使用しています。
もし読んでくださる中で日本語のおかしな点をご指摘いただけましたら、
本当にありがたく思います。
【16話完結】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている
キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。
今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。
魔法と剣が支配するリオセルト大陸。
平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。
過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。
すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。
――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。
切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。
お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /チャッピー
AI比較企画作品
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。
美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
完結【強引な略奪婚】冷徹な次期帝は、婚姻間近の姫を夜ごと甘く溶かす
小木楓
恋愛
完結しました✨
タグ&あらすじ変更しました。
略奪された大納言家の香子を待っていたのは、冷徹な次期帝による「狂愛」という名の支配でした。
「泣け、香子。お前をこれほど乱せるのは、世界で私だけだ」
「お前はまだ誰のものでもないな? ならば、私のものだ」
大納言家の姫・香子には、心通わせる穏やかな婚約者がいた。
しかし、そのささやかな幸福は、冷徹と噂される次期帝・彰仁(あきひと)に見初められたことで一変する。
強引な勅命により略奪され、後宮という名の檻に閉じ込められた香子。
夜ごとの契りで身体を繋がれ、元婚約者への想いすら「不義」として塗り潰されていく。
恐怖に震える香子だったが、閉ざされた寝所で待っていたのは、想像を絶するほど重く、激しい寵愛で……?
「痛くはしない。……お前が私のことしか考えられなくなるまで、何度でも教え込もう」
逃げ場のない愛に心が絡め取られていく中、彰仁は香子を守るため、「ある残酷な嘘」を用いて彼女を試す。
それは、愛するがゆえに彼女を嫉妬と絶望で壊し、「帝なしでは息もできない」状態へ作り変えるための、狂気じみた遊戯だった。
「一生、私の腕の中で溺れていろ」
守るために壊し、愛するために縛る。
冷酷な仮面の下に隠された、
一途で異常な執着を知った時、香子の心もまた甘い猛毒に溶かされていく――。
★最後は極上のハッピーエンドです。
※AI画像を使用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる