山猫に首輪は付けられない

空色蜻蛉

文字の大きさ
126 / 266
*一年前* 研究課題

113 新しい関係のかたち(※)

しおりを挟む
 マスター二人掛かりで押さえ込まれ、ひっくり返されて、すっかりまな板の鯉だ。背中にごつごつとした岩があるが、興奮でその凹凸は感じられなくなっている。
 両手はまとめて頭の上でカノンに抑えられた。
 仰向けでノクトを受け入れる。
 男性のサーヴァントは体内に魔力を溜める器官があるので、慣れてくると女性のような分泌液がにじむようになる。体質が中性よりになるのだ。
 発情しているせいで体が熱い。
 既に後ろは受け入れる準備が出来ていた。
 貫かれる感触に、体が勝手に快感を拾う。じわじわと幸福感で満たされ、リュンクスは徐々に正気を失っていく。
 しかし、いつもと違い、ノクトはこちらが感じるポイントを微妙に外しながら穿ってくる。
 
「あっ、ん! あぁっ……なんでっ」
 
 喘ぎながら問いかけると、ノクトは目を細める。
 
「次があるのに、今達するときついだろう、リュンクス」
「?!」
 
 男根の元部分を封じられて、精がせき止められた。
 サーヴァントはマスターの魔力で達するとは言え、生理現象も開放されないときつい。
 ノクトは、リュンクスが絶頂しないように浅いところで抜き差しを繰り返す。
 もどかしくて、リュンクスは腰をねじった。
 
「こらこら、自分で動かない」
「だって……っ」
 
 快感は高まる一方なのに、今ひとつ足りない。
 
「……っ」
 
 そうこうしている内に、ノクトが達した。
 リュンクスの腹に、ノクトの額から零れた汗がしたたる。
 体内に浅く広がるノクトの魔力と精液。
 リュンクスはサーヴァントの本能で、マスターの魔力を得た充実感と、性欲処理のため体を使われた被虐的な悦楽を感じる。
 自分がノクトの役に立っている。
 絶頂できないようにされていても、不思議な満足感があった。
 自分とは違うマスターを受け入れ、喘いでいるリュンクスを、カノンは興味深そうに見ている。嫉妬以上に、好きな相手の色んな表情を見たいという好奇心が勝っていた。
 そんなカノンの視線に、絶頂したリュンクスは気付いていない。
 暮れなずむ空を見上げて呼吸を整えている。
 リュンクスがとろけた表情になっているのを確かめ、名残り惜しそうにしながら、ノクトは体を離した。
 
「あ……」 
 
 体内からずるりと彼が抜ける感触に、リュンクスは唐突な寂しさを感じた。
 寝覚めの子供のようにノクトを見上げる。
 
「せんぱい?」
「後はカノンに任せるよ」
 
 ノクトは振り切るように立ち上がると、脱ぎ捨てたローブを拾って身支度を始めた。
 
「そうだ、リュンクス。君の研究室を少し貸してくれるかい? 仮眠を取ってから帝国に帰るよ」
「あ、うん」
 
 視線が勝手にノクトの背中を追い掛ける。
 遮るようにカノンが動いた。
 
「リュンクス。今はこっちに集中しろ」
 
 早めに終わらせるから、と耳元でカノンがささやく。
 すぐに空白を埋めるようカノンが入ってきた。
 先程と違い、的確に良いところを突上げられ、リュンクスは何も考えられなくなる。
 途中まで練り上げられ、せき止められていた快感が、一気に頂点まで駆け上がった。
 ノクトの魔力を上書きするように、カノンの熱い魔力が注がれる。
 
「……はぁ」
 
 カノンがリュンクスを抱きしめながら、溜め息をついた。
 
「悔しいな。リュンクスは、先輩がいないと困るんだろう」
 
 リュンクスは応えるように、カノンの背中に腕を回して抱きしめ返す。
 
「カノンがいなくても困るよ……」
 
 きっとノクトの隣にいれば、カノンが気になるのだろうと思う。今はカノンの方が身近だから、ノクトが気になるのだけど。
 
「イーブンか。それならまだ、許せるな」
「先輩を見送りに行っていいか?」
 
 穏やかな表情のカノンに、今なら大丈夫と判断して聞く。
 
「ああ」
 
 しっかり頷き返すカノンに「ありがとう」と礼を言い、リュンクスはゆっくりと起き上がった。




(※カノン視点)
 
 パタパタと身軽に、塔に向かって駆けて行くリュンクスを見送った。終わりかけの夕暮れに照らされて、塔の壁面は薄い紫色に染まっている。
 
「意外と腹が立たないものだな」
 
 ノクトと恋人を共有するなんて、とんでもないと考えていた。
 リュンクスの落ち込み具合を見て先輩に連絡を取った時も、三人でセックスすることまでは、想定していなかった。
 
『試してみるかい? リュンクスが、私達の両方を前にして、私と君、どちらを選ぶか』
 
 先輩のその言葉がきっかけだった。
 それならこの機会に試してやろう、と思ったのだ。
 短気なカノンは、答えを先延ばしするのは我慢ならなかった。
 研究室では、結局、どちらの側にも付かない席を選んだリュンクスに落胆したが。
 
「先輩とリュンクスが、あんな風に会話しているとは知らなかった」
 
 先輩と後輩というより、まるで仲の良い兄弟のようだ。
 見たことがないリュンクスの表情を、もっと見ていたいと思った。
 それに……先輩と会話したり、セックスしたりする間も、リュンクスは常にカノンを気にしていた。
 
「先輩に会いに行くのに、俺の許可をねだる、か」
 
 その態度に、カノンは密かに満足していた。
 慕っている先輩の前でも、リュンクスは常にカノンを立てていた。自分の主人はカノンだと、無意識に知っているように。
 だからノクトを追い掛けるリュンクスに寛容になれた。
 
「本当に、三人でやっていけるのだろうか」
 
 リュンクスはそれを望んでいるようだが、問題は山積みだ。アウレルムに来る件について、ノクトは実際どう考えているか。二人の時にさりげなくカノンからも確認したが、ノクトは明言を避けた。
 未来は誰にも分からない。
 だが今日、リュンクスの研究室で顔を合わせた三人の会話は、妙にバランスが取れていて。
 不本意ながら、居心地が良かった。
 
「……」
 
 塔を見上げるカノンの黄金の髪を、ざあっと風が巻き上げる。
 夜を迎えた冷たい風だ。
 冷え込んで風邪を引く前に、リュンクスが先輩と別れて帰ってくることを、カノンは疑っていなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

届かない「ただいま」

AzureHaru
BL
いつも通りの変わらない日常のはずだった。 「行ってきます。」と言って出て行った貴方。1日が終わる頃に「ただいま。」と「おかえり。」を笑顔で交わすはずだった。でも、その言葉はもう貴方には届かない。 これは「優しさが奪った日常」の物語。

流れる星は海に還る

藤間留彦
BL
若頭兄×現組長の実子の弟の血の繋がらない兄弟BL。 組長の命で弟・流星をカタギとして育てた兄・一海。組長が倒れ、跡目争いが勃発。実子の存在が知れ、流星がその渦中に巻き込まれることになり──。 <登場人物> 辻倉一海(つじくらかずみ) 37歳。身長188cm。 若い頃は垂れ目で優しい印象を持たれがちだったため、長年サングラスを掛けている。 組内では硬派で厳しいが、弟の流星には甘々のブラコン。 中村流星(なかむらりゅうせい) 23歳。身長177cm。 ストリートロックファッション、両耳ピアス。育ててくれた兄には甘えん坊だが、兄以外の前では──。 表紙イラストは座頭狂様に描いて頂きました✨ ありがとうございます☺️

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました

美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!

世界が平和になり、子育て最強チートを手に入れた俺はモフモフっ子らにタジタジしている魔王と一緒に子育てします。

立坂雪花
BL
世界最強だった魔王リュオンは 戦に負けた後、モフモフな子達を育てることになった。 子育て最強チートを手に入れた 勇者ラレスと共に。 愛を知らなかったふたりは子育てを通じて 愛を知ってゆく。 一緒に子育てしながら 色々みつけるほのぼのモフモフ物語です。 お読みくださりありがとうございます。 書く励みとなっております。 本当にその争いは必要だったのか そして、さまざまな形がある家族愛 およみくださり ありがとうございます✨ ✩.*˚ 表紙はイラストACさま

【完結】お義父さんが、だいすきです

  *  ゆるゆ
BL
闇の髪に闇の瞳で、悪魔の子と生まれてすぐ捨てられた僕を拾ってくれたのは、月の精霊でした。 種族が違っても、僕は、おとうさんが、だいすきです。 ぜったいハッピーエンド保証な本編、おまけのお話、完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください! トェルとリィフェルの動画つくりました!  インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 プロフのWebサイトから、どちらにも飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

処理中です...