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*一年前* 海神の子
147 幼い頃のノクト
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二人はそのまま海に沿って歩き、船着き場に踏み込んだ。
朝早くから漁に出る船は出港していたが、もう漁を終えて帰ってきた漁師も中にはいる。
漁師達は、ノクトとリュンクスを見て、怪訝な顔をした。
しかしノクトの銀髪に目をとめると「もしかして」と思い出すような表情になる。この辺りは青みがかった髪の住民も多いが、その中でもノクトの色彩の薄さは際立っていた。
「ヒドリウオは、そろそろ獲れ始めですか?」
ノクトは漁師に声を掛けた。
年配の漁師は、じろりとこちらを睨みあげて答える。
「ぼちぼちってところだ。お前、ノクトか」
「はい。お久しぶりです」
知人らしい。
リュンクスは、わくわくしながら会話を見守った。
「上等な身なりになりやがって。お貴族様にでも拾われたのか」
「ははは、まあ似たようなもんですね」
ノクトは陽気にからからと笑った。
「おじさん、先輩の昔のことを知ってるの?」
リュンクスは我慢できずに口を突っ込む。
好奇心に目を輝かせた黒髪の青年に、漁師は困惑した表情になった。しかしリュンクスは、ノクトと違い、一般人に近い風貌に人懐っこい雰囲気だ。漁師の警戒を煽らない。
「あ、ああ。こいつが小さい頃から知ってるが」
漁師は、いったい二人はどういう関係だろうと考えながら、どもり気味に答える。
「いつもこの辺をうろちょろしてて邪魔だったな。妙な風が吹いていたら、大概こいつの仕業だった」
「風?」
リュンクスは、潮風の中をすいすい飛ぶ風の精霊を見上げた。
「おーい!」
手を振ると、風の精霊達は喜んで踊るように旋回する。
ごうっと強い風が吹いた。
ノクトが眉をひそめる。
「リュンクス、人前で風を吹かせたら危ないよ」
「や、あの風の精霊も、先輩のちっちゃい頃を知ってるのかなと思ったら、つい気になって」
てへっ、とリュンクスは舌を出して反省する振りをした。
「こりゃあ、驚いた。お前、ノクトと同じ力を持ってるのか!」
漁師が目を丸くする。
リュンクスは、その言葉に我が意を得たりと笑う。
「先輩と同じってことは。先輩だって、この辺でピューピュー風を吹かせてたんじゃないか。俺には、人前で風を吹かせるなって言った癖に」
「その頃は私も子供だったんだよ。リュンクス、君ももう子供じゃないだろう。技をひけらかさないように注意しなさい」
「はーい」
リュンクスとノクトは軽快にぽんぽんと会話を交わす。
話についていけない漁師は所在なさげだ。
「そろそろ行っていいか……?」
「ああ、仕事の邪魔をしてすみません。最後にひとつ、聞きたいことが」
ノクトは、立ち去ろうとする漁師を引き止めた。
「この辺で、最近になって住むようになった人はいませんか? 余所者なのに、長期滞在しているような不審人物は?」
「そうだなあ」
漁師は、昔馴染みのノクトの質問なので、真面目に考えた。
「半年ほど前、浜に打ち上げられた女がいてな。そのままカイ爺さんの家に居座ってる。それ以外は、思い付かん」
ノクトは「ありがとうございます」と礼を言って歩き始めた。
リュンクスもぺこりと頭を下げて後を追う。
「その女の人が魔物を操ってる犯人?」
「可能性は高いかな。しかし我々の接近に気付いて、もう逃げているかもしれない」
リュンクスはこっそり横目で、鋭い瞳をしている先輩を見上げた。
戦いに赴く前の、凛とした佇まいの先輩は格好いい。
朝早くから漁に出る船は出港していたが、もう漁を終えて帰ってきた漁師も中にはいる。
漁師達は、ノクトとリュンクスを見て、怪訝な顔をした。
しかしノクトの銀髪に目をとめると「もしかして」と思い出すような表情になる。この辺りは青みがかった髪の住民も多いが、その中でもノクトの色彩の薄さは際立っていた。
「ヒドリウオは、そろそろ獲れ始めですか?」
ノクトは漁師に声を掛けた。
年配の漁師は、じろりとこちらを睨みあげて答える。
「ぼちぼちってところだ。お前、ノクトか」
「はい。お久しぶりです」
知人らしい。
リュンクスは、わくわくしながら会話を見守った。
「上等な身なりになりやがって。お貴族様にでも拾われたのか」
「ははは、まあ似たようなもんですね」
ノクトは陽気にからからと笑った。
「おじさん、先輩の昔のことを知ってるの?」
リュンクスは我慢できずに口を突っ込む。
好奇心に目を輝かせた黒髪の青年に、漁師は困惑した表情になった。しかしリュンクスは、ノクトと違い、一般人に近い風貌に人懐っこい雰囲気だ。漁師の警戒を煽らない。
「あ、ああ。こいつが小さい頃から知ってるが」
漁師は、いったい二人はどういう関係だろうと考えながら、どもり気味に答える。
「いつもこの辺をうろちょろしてて邪魔だったな。妙な風が吹いていたら、大概こいつの仕業だった」
「風?」
リュンクスは、潮風の中をすいすい飛ぶ風の精霊を見上げた。
「おーい!」
手を振ると、風の精霊達は喜んで踊るように旋回する。
ごうっと強い風が吹いた。
ノクトが眉をひそめる。
「リュンクス、人前で風を吹かせたら危ないよ」
「や、あの風の精霊も、先輩のちっちゃい頃を知ってるのかなと思ったら、つい気になって」
てへっ、とリュンクスは舌を出して反省する振りをした。
「こりゃあ、驚いた。お前、ノクトと同じ力を持ってるのか!」
漁師が目を丸くする。
リュンクスは、その言葉に我が意を得たりと笑う。
「先輩と同じってことは。先輩だって、この辺でピューピュー風を吹かせてたんじゃないか。俺には、人前で風を吹かせるなって言った癖に」
「その頃は私も子供だったんだよ。リュンクス、君ももう子供じゃないだろう。技をひけらかさないように注意しなさい」
「はーい」
リュンクスとノクトは軽快にぽんぽんと会話を交わす。
話についていけない漁師は所在なさげだ。
「そろそろ行っていいか……?」
「ああ、仕事の邪魔をしてすみません。最後にひとつ、聞きたいことが」
ノクトは、立ち去ろうとする漁師を引き止めた。
「この辺で、最近になって住むようになった人はいませんか? 余所者なのに、長期滞在しているような不審人物は?」
「そうだなあ」
漁師は、昔馴染みのノクトの質問なので、真面目に考えた。
「半年ほど前、浜に打ち上げられた女がいてな。そのままカイ爺さんの家に居座ってる。それ以外は、思い付かん」
ノクトは「ありがとうございます」と礼を言って歩き始めた。
リュンクスもぺこりと頭を下げて後を追う。
「その女の人が魔物を操ってる犯人?」
「可能性は高いかな。しかし我々の接近に気付いて、もう逃げているかもしれない」
リュンクスはこっそり横目で、鋭い瞳をしている先輩を見上げた。
戦いに赴く前の、凛とした佇まいの先輩は格好いい。
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