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*一年前* 冬至祭
160 三人の関係
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リュンクスの希望は『君が決めると面白くないから』という理由で却下された。いったい誰にとっての面白さだろうか。
カノンは真面目な顔で「マスターは他者の意見に揺れてはいけないのだ」と力説していたが、実際のところ、やっぱり自分の好きにしたいだけのように思う。
そして、マスターに振り回されると嬉しいサーヴァントの性質で、リュンクスは結局二人に逆らえないのだ。
「はぁー。先輩なにくれるんだろ……?」
「リュンクス、目がハートになってるよ」
研究室でセドリックと薬を調合しながら、リュンクスは夢心地でつぶやいた。
ノクトの台詞は本気とも冗談ともつかないものだったが、経験上ふざけながらも要点は押さえ、リュンクスの喜ぶ事をしてくれると分かっている。
巻貝と守護輪しか、まだもらったことがない。
冬至にいったい何をくれるのだろうと、あれこれ想像をする。
「楽しそうだね。その分だと、僕は本当に望み薄か」
「あ……ごめん、セドリック」
「いや、分かっていたことだよ。この部屋でずっと、君達を見てきたからね」
セドリックの告白を忘れた訳ではないが、ついノクトの事で頭がいっぱいになってしまっていた。
リュンクスは、セドリックの前で惚気けるべきではなかったと自省する。
一方のセドリックは、苦笑していたが、落ち込んでいる様子はない。最初から分かっていたと冷静だ。
「実際のところ、二人のどっちが好きなの?」
「両方」
リュンクスは即答した。
あまりに素早い解答にセドリックは困った顔になる。
「それじゃ答えにならないよ。どっちか一人しか選べないとしたら、どっちにするの。例えば、手を離したらどっちかが死ぬみたいな状況でさ」
ほら、崖っぷちで落ちるイメージだよ、とセドリックは手振り身振りで説明した。
リュンクスは唇に指をあてて考えた。
「……三人で一緒に落ちるか、または三人で一緒に助かる方法を探す気がする」
カノンは「俺だけ助かるのは公平じゃない」とか言い出しそうだし、先輩は「私は年寄りだから、若い方に譲るよ」と言って肝心なところで遠慮しそうだ。
「三人で仲良く? と普通なら思うけど、実際に君達の会話を聞いてると、あながち否定できないんだよね。君のマスター二人、意外に仲良くやってるよね」
セドリックは、この部屋で行われるやり取りを見聞きしている。
「うん。あいつらは仲良くないって言うんだけど、あれは普通に友達レベルだと思うな」
リュンクスのいないところで連絡を取り合ったり、魔術について議論を戦わせたりしているらしい。
気の合わない相手と、そんなことをするだろうか。
「冬至祭かぁ。昔、祭りの夜に二人で抜け出して、塔の十一階にこっそり登った事がある」
セドリックは、ふっと遠い目をした。
その二人の片方、セドリックを連れ出した相手は、マスターのカーマインなのだろう。
しかしセドリックは、彼の名前を口にしない。
「祭りの夜は、塔の中は立ち入り禁止になる。だけど彼は、行こうと僕の手を引いて」
リュンクスは、黙って話を聞く。
「十一階に着いた途端に、雪が降り出したんだ。塔の下には祭りの灯りが点々と付いていて、その上に銀白の雪が舞っていた。とても印象的だったよ」
聞いていて、リュンクスは切なくなった。
セドリックはもう二度と、愛するマスターと十一階から雪景色を見る事はできないのだ。
「気にしないで」
リュンクスが悲しそうにしている事に気付き、セドリックは淡く微笑んだ。
「生きている内に楽しまなきゃ。リュンクスは先輩とカノンと、十一階で雪景色を見ておいでよ。とっても綺麗なんだよ」
カノンは真面目な顔で「マスターは他者の意見に揺れてはいけないのだ」と力説していたが、実際のところ、やっぱり自分の好きにしたいだけのように思う。
そして、マスターに振り回されると嬉しいサーヴァントの性質で、リュンクスは結局二人に逆らえないのだ。
「はぁー。先輩なにくれるんだろ……?」
「リュンクス、目がハートになってるよ」
研究室でセドリックと薬を調合しながら、リュンクスは夢心地でつぶやいた。
ノクトの台詞は本気とも冗談ともつかないものだったが、経験上ふざけながらも要点は押さえ、リュンクスの喜ぶ事をしてくれると分かっている。
巻貝と守護輪しか、まだもらったことがない。
冬至にいったい何をくれるのだろうと、あれこれ想像をする。
「楽しそうだね。その分だと、僕は本当に望み薄か」
「あ……ごめん、セドリック」
「いや、分かっていたことだよ。この部屋でずっと、君達を見てきたからね」
セドリックの告白を忘れた訳ではないが、ついノクトの事で頭がいっぱいになってしまっていた。
リュンクスは、セドリックの前で惚気けるべきではなかったと自省する。
一方のセドリックは、苦笑していたが、落ち込んでいる様子はない。最初から分かっていたと冷静だ。
「実際のところ、二人のどっちが好きなの?」
「両方」
リュンクスは即答した。
あまりに素早い解答にセドリックは困った顔になる。
「それじゃ答えにならないよ。どっちか一人しか選べないとしたら、どっちにするの。例えば、手を離したらどっちかが死ぬみたいな状況でさ」
ほら、崖っぷちで落ちるイメージだよ、とセドリックは手振り身振りで説明した。
リュンクスは唇に指をあてて考えた。
「……三人で一緒に落ちるか、または三人で一緒に助かる方法を探す気がする」
カノンは「俺だけ助かるのは公平じゃない」とか言い出しそうだし、先輩は「私は年寄りだから、若い方に譲るよ」と言って肝心なところで遠慮しそうだ。
「三人で仲良く? と普通なら思うけど、実際に君達の会話を聞いてると、あながち否定できないんだよね。君のマスター二人、意外に仲良くやってるよね」
セドリックは、この部屋で行われるやり取りを見聞きしている。
「うん。あいつらは仲良くないって言うんだけど、あれは普通に友達レベルだと思うな」
リュンクスのいないところで連絡を取り合ったり、魔術について議論を戦わせたりしているらしい。
気の合わない相手と、そんなことをするだろうか。
「冬至祭かぁ。昔、祭りの夜に二人で抜け出して、塔の十一階にこっそり登った事がある」
セドリックは、ふっと遠い目をした。
その二人の片方、セドリックを連れ出した相手は、マスターのカーマインなのだろう。
しかしセドリックは、彼の名前を口にしない。
「祭りの夜は、塔の中は立ち入り禁止になる。だけど彼は、行こうと僕の手を引いて」
リュンクスは、黙って話を聞く。
「十一階に着いた途端に、雪が降り出したんだ。塔の下には祭りの灯りが点々と付いていて、その上に銀白の雪が舞っていた。とても印象的だったよ」
聞いていて、リュンクスは切なくなった。
セドリックはもう二度と、愛するマスターと十一階から雪景色を見る事はできないのだ。
「気にしないで」
リュンクスが悲しそうにしている事に気付き、セドリックは淡く微笑んだ。
「生きている内に楽しまなきゃ。リュンクスは先輩とカノンと、十一階で雪景色を見ておいでよ。とっても綺麗なんだよ」
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